不動産売却では、耐震性能などを審査する住宅診断士や不動産鑑定士の存在が大きくなっていることはこのコラムでも指摘してきました。その裏打ちとなる情報として、2016年6月に成立した「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」によって、不動産取引の媒介契約締結時、重要事項説明時、売買契約時に、インスペクション(住宅診断)や建物のコンディションに関する説明が義務化されたことが影響していることがあります。

今までは売却時に行われるリフォームは、慎重にやらないと回収ができないことが考えられ、やらない方が得策という意見が大半でした。しかし、これからはメンテナンスや耐震強化などの建物の維持に役立つリフォームであれば、住宅の価値を上げる場合が出てきたのです。

耐震性能を高めるリフォームはやった方が良い

■ 宅地建物取引業法の改正がもたらしたもの


宅地建物取引業法の改正は、売却される建物の傷み具合を正しく判断し、買う側に正しく伝えることが目的に行われました。しかし、そのことは、今まで築年数が多くて(建物が古くて)価値としてはゼロだったものでも、場合によっては価値が出るようになったわけです。

木造の建物では、建物の寿命はおおよそ30年から40年とされてきました。しかし、最近の研究では、木造住宅でも64年の寿命があると評価したものもあります。(早稲田大学 小松教授ら「建物の平均寿命推計」(2011年))

また、核家族化の進展により30年から40年もすれば、子どもが独立して住まなくなる住宅も多くなってきました。空き家問題は地方だけでなく、都市部にまで社会問題化してきています。そうした空き家が正しく評価されることで、購入する人が出てくる可能性も考えられ、空き家対策に期待がもてる可能性があります。

■耐震強化ならリフォームした方が良い?


リフォームすれば価値が上がるとはいえ、当を得たリフォームでなければ、そのリスクは大きなものになります。実際に評価が上がる(評価を下げない)リフォームとはどのようなものでしょうか。

第一はやはり耐震性能です。具体的には、震度5程度の地震ではほとんど損傷がないこと、震度6以上の強い地震では倒壊しないことが目標になります。柱と梁に筋交いを設ける、壁を多くするなど様々な方法があります。

次に、雨漏りや水漏れ対策です。これは日頃から壁の塗り替えなどメンテナンスをきっちりやっておく必要がありますが、ひび割れ等があればリフォームしておくべきです。

最後には断熱性能を高め、省エネ住宅にすること。省エネ効果のある断熱材や窓の改装などを行うことが必要です。

家を所有したら、日頃のメンテナンスとして定期的に建物のゆがみや雨漏りを点検しておくと、価値を下げないで売却することにもつながります。リフォームとあわせて、日頃の点検も欠かせません。

 
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