こんにちは。弁護士の大西敦です。

 前回のコラムでは、眺望に関する問題について、ご説明いたしました。

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 今回は、眺望侵害について争われた裁判例、損害賠償請求が認められた判決、認められなかった判決をそれぞれ紹介します。
(損害賠償請求が認められた事例)
 大阪地方裁判所平成4年12月21日判決
 木曽駒高原の別荘地において別荘を所有する原告が、高層リゾートマンションを建築した被告に対し、別荘からの眺望が阻害されたとして、損害賠償を求めた事案です。
 判決は、「原告がそれまで享受していた眺望に対し配慮せず、容易に原告に対し事前の説明をすることができるのにこれをせず、従来、この地域にみられなかった高層の第二建物を建築し、その結果、第一建物からの眺望を著しく阻害したものであり、かつ、その程度は、右事情からすると、一般的に是認しうる程度を超えた不当なものというべきであるから、違法であり、これにつき少なくとも過失が存するから、被告の行為は不法行為を構成する。」として損害賠償請求を認めました。
 その上で、判決は、眺望、景観及び展望性という環境条件に基づく土地の減価を、一切の事情を総合考慮して25%とし、そのうちの20%は、土地所有者が容認すべき環境の変化によるものと認めるのが相当だとして、損害額を算定しました。
(損害賠償請求が認められなかった事例)
 大阪地方裁判所平成11年4月26日判決
 住宅地に土地建物を所有する原告らが、隣接する土地に3階建ての建物を建設した被告らに対し、3階建て建物の2階を超える部分の収去、予備的に損害賠償を求めた事案です。
 判決は、「原告らは、原告土地ないし原告建物からの眺望を二十数年にわたって享受しており、また、本件地域における前記のような事情に照らすと、眺望を享受することは、本件地域における土地及び住居の利用としてふさわしいものということもでき、原告土地ないし原告建物からの眺望の利益が法的保護に値するものであると認められる余地もないとはいえない。」としつつ、第一種中高層住居専用地域であり、マンション等の中高層建物の建築が許容されている地域であること、その地域に3階建て以上の建築物は存在していること、建築基準法等の関係法規に適合する建物であること、眺望はある程度は残されていること等を理由に、原告らの請求をいずれも退けました。
 損害賠償請求が認められたのは、別荘地における眺望侵害に対するものですが、もちろん別荘地の眺望だからといって、当然に損害賠償が認められるものではありませんし、住宅地においてはかなり厳しいのではないかと考えられます。
 眺望侵害における請求し得る損害額についてですが、眺望侵害によって当該不動産の価格が下落するような場合には、その下落分を請求していくことになります(ただし、前記大阪地裁平成4年12月21日判決では、一定割合を、所有者が容認すべき環境の変化によるものとして減額しています。)。
 また、ホテル等の場合には、営業利益の減額を請求していくことになりますが、その立証は困難ということができます。
 前回のコラムで少し触れましたが、最近よく問題になるのは、マンションを販売した業者が別の場所にマンションを建設し、その結果、眺望が侵害されたというものです。
 この点については、次回のコラムでご紹介したいと思います。
 
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