石井くるみの民泊最前線

カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。


深刻化するシェアハウス問題を「民泊」で解決できるのかを5回にわたって解説します。第5回目は、簡易宿所よりも低コストでの民泊運営を可能とする「住宅宿泊事業法」(民泊新法)の活用について紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

第1回 シェアハウスで民泊は経営できるのか?

第2回 シェアハウス簡易宿所化の可否を分ける「用途地域」と「窓先空地」

第3回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト①…用途変更の建築確認申請

第4回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト②トイレ等の増設と消防用設備の設置

(画像=写真AC)

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」で知られるスマートデイズが、物件所有者への賃料の支払を突然停止したことで表面化したシェアハウス問題。連載第5回では、簡易宿所よりも低コストでの民泊運営を可能とする「住宅宿泊事業法」(民泊新法)の活用について解説します。

図表:シェアハウス簡易宿所化の判断フローチャート

連載第3~4回で解説したとおり、シェアハウスから簡易宿所へのコンバージョンには、建築確認申請、トイレや浴室等の増設、消防用設備の設置等、様々なコストが発生します。しかし、2018年6月15日から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく「住宅宿泊事業」を活用すると、年間180日の営業制限はかかるものの、簡易宿所よりもコストを抑えて民泊を営むことができます。

法規制とコスト項目

シェアハウス→簡易宿所

シェアハウス+住宅宿泊事業

建築基準法

用途変更の建築確認申請

対象面積100㎡超で必要

不要(用途は寄宿舎のまま)

旅館業法

トイレ等の増設

条例・規則に基づき必要

個数の定めがない場合は不要

消防法

消防用設備の設置

自動火災報知設備や誘導灯の設置が必要

(1)用途変更の建築確認申請手続…住宅宿泊事業なら用途の変更なし

シェアハウスで住宅宿泊事業の届出を行っても、その建築基準法上の用途は「寄宿舎」のままとなります。建築基準法の用途の変更がないため、簡易宿所化に比べて、建築確認申請の手間とコストが不要となる点は、住宅宿泊事業を選択する大きなメリットです。また、住居専用地域に所在するものや、必要な窓先空地を確保できないため簡易宿所営業を営めないシェアハウスでも、「寄宿舎」の用途が継続する住宅宿泊事業なら営むことができます。

(2)トイレ等の増設…自治体の条例・規則に定めがなければ不要

旅館業法に係る条例・規則が共用便所の便器個数や共用洗面所の給水栓数等を詳細に定めているのと対照的に、住宅宿泊事業法に係る条例・規則には当該共用設備の個数の定めがないのが一般的です。一般的に定員数に対して十分すぎる共用設備を設けることが必要となる簡易宿所営業に比べ、住宅宿泊事業では宿泊者の衛生の確保を図るために必要な数の共用設備が備わっていれば、トイレ等の増設をせずに民泊を営むことができます。

(3)消防用設備の設置は住宅宿泊事業でも必要

消防法令の取扱いは簡易宿所営業と住宅宿泊事業で共通であり、住宅宿泊事業を営む場合にも自動火災報知設備や誘導灯といった消防用設備の設置が必要となります。

>>続き:シェアハウスを住宅宿泊事業に活用する際の注意点とは?

 
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