隔週月曜配信「石井くるみの 民泊最前線」

カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。

深刻化するシェアハウス問題を「民泊」で解決できるのかを5回にわたって解説します。第2回目は、シェアハウスの簡易宿所の可否が決まる「用途地域」と「窓先空地」について紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

第1回 シェアハウスで民泊は経営できるのか?

第3回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト①…用途変更の建築確認申請

第4回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト②…トイレ等の増設と消防用設備の設置

第5回 シェアハウスにおける住宅宿泊事業(民泊新法)の活用

(画像=写真AC)
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」で知られるスマートデイズが、物件所有者への賃料支払を突然停止したことで表面化したシェアハウス問題。物件所有者は毎月のアパートローンの支払いに苦しんでいます。もともと入居率が半分以下だったという「かぼちゃの馬車」の収益改善を考え、シェアハウスから民泊(簡易宿所)に転用する道を探っています。
連載第2回では、物件から得られるキャッシュフロー改善のため、シェアハウスを民泊(簡易宿所)に転用するにあたりクリアしなければならない、主な法的・技術的なハードルを解説します。
連載第1回「シェアハウスで民泊経営はできる?」で解説したとおり、シェアハウスを民泊(簡易宿所)に転用するためには、旅館業法に加え、建築基準法、都市計画法、消防法といった各規制のハードルをクリアする必要があります。連載第2回ではオーナーの方々が、自ら所有するシェアハウスを民泊(簡易宿所)に用途変更できるか否かを判断するために特に重要となる、(1)都市計画法における用途規制、(2)建築基準法における窓先空地(物件が東京都に所在する場合)の2つを解説します。
図表:シェアハウス簡易宿所化の判断フローチャート
(1) 都市計画法…住居専用地域は、用途地域の制約から旅館業不可
シェアハウスの簡易宿所化にあたって、まず確認すべきは、物件所在地の用途地域です。物件が住居専任用地域(第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域のいずれか)又は工業地域に該当する場合には、都市計画法の用途規制の制約から、旅館業(簡易宿所営業を含む)の施設を建築することは禁止されるため、簡易宿所への用途変更は不可能です。シェアハウスの所在地が、住居専用地域又は工業地域に指定されていないものの、東京都に所在する場合には、次に東京都独自の建築ルールである「窓先空地」の確保が可能かどうかを検討します。
(2) 建築基準法…東京都の場合は窓先空地の確保が課題に
東京都に所在する物件には、都が独自に定める「東京都建築安全条例」の規制が適用されます。その中でも特にユニークな規制が、東京都建築安全条例19条1項2号・3号に定められる「窓先空地」。窓先空地とは、住宅が密集しがちな東京都において、居住環境の悪化を防ぎ、かつ、災害時の避難手段の確保を図るため、一定の特殊建築物(共同住宅、寄宿舎、簡易宿所等)の居室の窓先に、一定幅の空地の確保と、避難上有効なバルコニー又は器具の設置を要求するルールです。ここでのポイントは、シェアハウスの建築基準法上の用途である「寄宿舎」には、一定の基準を満たせば、窓先空地の幅を「50cm」としてもよいとする等の緩和規定があるのに対して、「簡易宿所」には当該緩和規定が適用されず、最低でも幅1.5~2.0mの空地を確保しなければなりません。東京都に所在するシェアハウスが、寄宿舎に適用される緩和規定を使って、窓先空地の幅を通常よりも狭くして建築されている場合は、簡易宿所として必要となる窓先空地の幅を確保できないため、簡易宿所への用途変更は不可能です。
用途地域と窓先空地、この2つをクリアしたシェアハウス物件は、技術上、民泊(簡易宿所)に転用できる可能性があります。しかし、実際に転用して収益をあげるには様々なコストが発生します。次回は、シェアハウスの民泊(簡易宿所)への転用におけるコストの観点から特に重要となる、用途変更の建築確認申請(建築基準法)について解説します。
 
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