毎週木曜日配信 さんきゅう倉田「そのニュースに課税します!」

不動産や住宅と深い関係がある税金。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属、元国税局職員のさんきゅう倉田さんが、税金に係わるニュースについて解説します。

今回は、ハリー・ポッターシリーズなどで人気のエマ・ワトソンにかけられた租税回避疑惑に関する解説です。(リビンマガジンBiz編集部)


エマ・ワトソン (画像=Photos For Class)

ハーマイオニーといえば、映画『ハリー・ポッター』シリーズでホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮に所属するハリー・ポッターの友人です。そのハーマイオニー役で知られるエマ・ワトソンに、タックス・ヘイブンを利用した租税回避の疑いが持たれていました。

報道によると、「国際調査報道ジャーナリスト連合が公開したリスト(通称パナマ文書)の中にエマの名前があり、エマの代理人がイギリス領ヴァージン諸島にオフショア会社を設立していることを認めた。エマの代理人は『エマがオフショア会社を設立した理由は、匿名性と安全を守るためです。イギリスの会社は株主を公表する義務があり、安全を守るのに必要な匿名性が与えられません。』と述べた」とのことです。租税回避の意図があったことは否定しています。

ここで言う、オフショア会社とは、自分の属する国以外に事業を移転する行為のことです。税や経済行為に対して税金の規制の緩い国や地域は数多あり、所得税率や法人税率が低いか、あるいはゼロである租税回避地として「ニワトコの杖(※物語中最強の武器)」のように重宝され、グローバルな活動をする法人や個人に人気となっています。

有名な租税回避地には、バハマやヴァージン諸島、ケイマン諸島があります。今回、タックス・ヘイブンで会社設立を助けるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料に、エマ・ワトソンの名前があり報道になりました。
エマ・ワトソンの租税回避方法は明らかにされていませんが、イギリス領のヴァージン諸島には、ほとんど課税がありません。税金がなくとも、社会が成り立つなんて、まるで魔法のようです。ヴァージン諸島にペーパーカンパニーを設立し、本来イギリスに納めるべき所得を、ヴァージン諸島の法人に移転すれば、課税を逃れることができるのです。
ヴァージン諸島での所得税の実効税率はゼロで、譲渡所得、贈与税、付加価値税、相続税もかかりません。ですから、租税回避としては十分な効果が得られます。
ちなみに、ヴァージン諸島の主な税金は、諸島内の従業員に課される「給与税」、土地の譲渡に課される「印紙税」、「税関輸入税」、「土地税」および「家屋税」で、ペーパーカンパニーであれば、ほとんど影響ないと言って良いでしょう。

タックス・ヘイブンとして有名になったヴァージン諸島では、ルールが改められ、諸島内の税に関する個人・法人の情報は行政の管理下に置かれ、タックス・ヘイブンとしては衰退することになりました。つまり規制が強化され、会社の設立も難しくなります。不当な租税回避行為を死の呪文のように取り締まる方針で、ヴァージン諸島を利用した租税回避はどんどん難しくなっています。今後もし、エマ・ワトソンが租税回避を行うには、魔法が必要かもしれません。エクスペクト・パトローナム!(※物語中で守護霊を降臨させる魔法)

 
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