賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。今回は、賃貸仲介業務の10年前と現在を比較します。

画像=PIXTA

ご支援をさせて頂いている仲介会社様でよく話題になることが、「SNSの使い方」や「現地待ち合わせでの対応方法」などである。自社の集客を強化したいので、「SNSを運用し集客を行いたい」「現地待ち合わせでの成約率を上げたい」といったご相談だ。よくよく考えると、10年ほど前には、こうした課題感はあまりなかったように感じる。10年前の課題と現在の課題は、本質は変わらないながらも、細かい業務的な課題は、それなりに変化をしているように感じる。

不動産業界は、「遅れている業界」だと言われて久しい。たしかに、未だにFAXを使っている不動産会社も多い。とはいえ、電子契約もここ最近ようやく浸透するようになってきた。実際には、少しずつ現場の業務は進んできているように感じる。そこで、今回は、10年前の仲介業務と現在の業務の変化を振り返ってみたいと思う。

まず集客方法だが、10年前はポータルサイトからの集客力が主流だった。またそれと同時に店舗からの来店(所謂飛び込み客)からの集客も多かった。ポータルサイトで反響を獲得すること、そしてより駅前の良い立地に出店することが、仲介店舗の集客の一番の近道だった。自社のホームページからの反響獲得もこの頃には少し浸透していたが、まだまだそれだけで反響数を確保できる仲介会社は、ほとんどいなかった。SNSなどは、さらにその後である。

さて、現在ではどうだろうか?今もポータルサイトからの集客が主流である。各ポータルサイトの勢力図に変化はあるものの、それでも大半の不動産会社はポータルサイトからの集客に頼っているのが実情だ。また、それと同時に10年前には、皆無だったSNSから反響を獲得している不動産会社も増加した。特にこの数年は、ショート動画閲覧の一般的な普及も業界内のSNS普及の理由のひとつだといえる。InstagramやTikTokで物件紹介のショート動画を公開して、反響を獲得する仲介会社が圧倒的に増加している印象だ。

ちなみに、現在、スタートアップの仲介会社で、駅前の一等地に出店する不動産会社は、かなり少ないだろう。そう考えると、これからの10年間の「店舗の在り方」は、また変化していくのではないかと感じる。

ユーザーとのやりとりも、この10年で変化をしてきた。10年前は、メールや電話がメインだった。ユーザー・不動産会社共に、かなり電話を使っていたように感じる。実際に約10年前の繁忙期は、店舗の電話回線が電話反響により、全て埋まってしまう店舗も多かった。もちろん、メールでユーザーとやり取りすることも多かったが、とにかく「メール云々よりも電話したほうが早い」という考えが一般的だったように感じる。

現在では、LINEなどでユーザーとやり取りをする機会が圧倒的に増えた。LINE以外では、SMS(ショートメール)などでもやり取りを行うケースが多い。ユーザーとの電話もなくなってはいないが、圧倒的に通話総量は減っているように感じる。ユーザーからすると、わからないことがあると、「まずLINE、もしくはチャットサービスを使って、メッセージをする」ということが基本になっている。今後も、この傾向は続くだろう。この先10年後も、電話でのユーザーとのやり取りが皆無になっているわけではないが、今よりも確実に減少していくだろう。

また仲介会社と管理会社とのコミュニケーションも変化してきている。10年前は、ほぼ電話とFAXを使って、管理会社とやり取りを行っていた。複数の管理会社の空室一覧をFAXで取り寄せるために管理会社に電話をする時間を設けていた仲介会社も多かっただろう。また、申し込みのやり取りもほぼ100%にFAXでのやり取りだった。土日は、FAX回線が詰まってしまい、ずっと管理会社から送られる申込書を待つために、プリンターに立ち尽くしている営業メンバーがいた。

今も、FAXでのやり取りを行うこともあるが、申し込みシステムなどが、普及してきて、かなり減ってきている印象がある。内見依頼や申込手続きなどをオンラインで実施することは、一般的になってきている。今後もこの流れは、加速していくと感じる。

また契約手続きは、10年前はひたすら「紙」でのやり取りだった。これは、2023年の現在でも、そこまで大きな変化はない。大手でも、まだ電子契約を取り入れていない管理会社が多い。ご存知のように不動産の契約手続きのための紙の量は、なかなかの量である。ただ署名するだけで、30分程度かかってしまう。

しかし、最近は電子契約が少しずつ認知されてきた。あくまで個人的な私見だが、10年後は、大半の賃貸借契約がオンラインになっているのではないだろうか。

このように10年前と比べると、意外にも仲介業務は変化をしているのである。この流れを鑑みると、これからの10年後の賃貸仲介業務は、どのようになっているのだろうか?もしかしたら、我々の想像以上に仲介業務は進化しているのかもしれない。

 
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