不動産業の新入社員がインプットすべき必要な知識、スキルとは?

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。今回は、業界の新入社員がインプットするべき知識や働く姿勢について紹介します。

画像=写真AC

この4月も、多くの新社外人が誕生する。当然のことながら、不動産業界にも多くの新社会人が飛び込んでくる。不動産業界と一言でいっても、大手の会社もあれば少人数で経営している会社もあるし、業種も大家業、管理業、仲介業など様々だ。大手には大手の流儀があるし、小規模の会社には小規模の会社の流儀がある。また業種によっても、組織文化が大きく異なってくる。当然、新人に対する育成体制も各社様々だ。

かくいう、私もこの時期は、新入社員様の研修会などを実施させていただいている。興味深いことに、複数の企業の新入社員のかたを見ていると、本当に企業ごとに特徴があるのが面白い。とある不動産会社では、毎年おとなしい印象の新卒社員を採用しているし、とある不動産会社では、毎年とにかく明るく活発な新卒社員を採用している。類は友を呼ぶ、といえば怒られるかもしれないが、毎年入る新卒のかたの共通点を見ると、とても会社の「色」が見える。

こうした新人さんの特徴を踏まえて、私の新人研修も不動産会社によって、少しアレンジなどをして提供するのだが、それでもやはり共通するテーマはある。不動産業全体の業界縮図や業務フローなどは共通するトピックスだろう。

ちなみにこうして新人研修をしても、そのかたが「最終的に成長するかしないか」は全くわからない。「素質があるかどうか」はわかるが、そのかたが華開いた、数年後に大きく成長したかといえばそういうわけではない。当たり前だが、「入社後、どれだけ成長できたか」が全てなのだ。期待されていた新入社員がパッとせず、転職を繰り返してしまい、厳しい状況になっているケースも数えきれない程見てきた。逆に、新入社員時に特段目立ってもいないメンバーが、とある時点から大きく成長し、大出世したケースも多く見てきた。いろいろとわからないものである。

とはいえ、新人時代に「必要最低限身につけないといけない」もしくは、「こうした知識は入れておいた方が良い」、という共通したものもある。それによって成長スピードも変わってくるし、キャリアの道も変わってきたりする。年寄り臭いかもしれないが、是非参考にしてほしい。

・宅建はやっぱり必要です

当たり前といえば当たり前かもしれないが、宅建はやはり必要だ。基本的に宅建の学習で、超基礎的な不動産取引のことも理解できるし、なにより資格を持つことで仕事の選択の幅が広がる。不動産業界で継続的に仕事をしていくにあたって、宅建が必要な場面がほぼ必ずやってくる。営業の仕事なら尚更だ。宅建を持っていない社長や部長も、本音では宅建が欲しいのではないかと、感じることがたくさんある。歳を取ってからのこうした資格勉強は、年々体力的にも厳しくなる。新人のうちにしっかり取っておくべきだ。

・営業ノウハウの学習

仮に事務職でも、新人のうちに営業の勉強はしておいたほうが良い。世の中は、社外の営業だけではなく、社内の営業も必要になったりする。相手の心理を考えてコミュニケーションすることは、社会人には必須のスキルである。この新人の時期に、多くの営業ノウハウ系の本や動画などに触れてみてほしい

・決算書を読めるようにする

BSやPLも早い段階から読めるようにしておいた方が良いだろう。いきなり業務に使うことは少ないかもしれないが、決算書関係は将来かなりの確率で読み込まなければならないタイミングがあるだろう。決算書の見方などは、あまり丁寧に教えてくれない。知らないままキャリアを積むと、どこかで大きな壁に当たってしまう。早い段階で決算書は、読めるようにしなければいけない。

・数字の歩留まりを理解する

たとえば10件の成約を取るために、「20件の商談が必要で、20件の商談のためには、50件の問い合わせが必要だ」などのいわゆる係数の感覚を身につけておかなければいけない。

また、今後は不動産業界でも、より一層ウェブマーケティングの知識が必要になってくる。そうした時に、この歩留まりの考え方はとても重要になる。データ分析や数字解析のみならず、営業戦略などでも重要な部分になるので、早い段階で身につけておいた方が良い。

以上のようなポイントをおさえている新人の方は、一歩抜きん出るだろう。これらは、多かれ少なかれほぼすべてのビジネスパーソンが対峙していかないといけない部分である。宅建に関しては、業界内の必須の資格だと考えても良いだろう。

是非、これを読まれている指導役のかたは、新人のかたに推奨してみてほしい。

ちなみに、繰り返すが、中長期的に見て、このような知識をつけても最終的にその新入社員さんのキャリアの華が開くかどうかは、正直誰もわからない。結局は、本人次第なのだ。
ただ、ひとつだけいえることは、キャリアの華が開く新人のかたは、共通して「素直」ということだ。

もしかしたら、これが一番必要な要素かもしれない。

 
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