2023年における仲介会社の存在意義とは?

画像=PIXTA

2023年になった。本年も宜しくお願い致します。

さて、年が明けるといっきに繁忙期の季節に突入する。特に年末年始の反響の対応をしながら、1月の3連休に突入するこの時期は、賃貸仲介会社にとって1年で忙しい時期のひとつである。以前も何度か述べたが、仲介業務というのは、労力が多い割にはなかなか売上の見立てが立ちにくい事業である。賃貸においては、問い合わせを獲得するために、コストをかけ、労力をかけ、広告掲載を行う。問い合わせがあっても、成約まで到達させることができるユーザーは、せいぜい15%程度だ。運用面で注意していかなければ、事業継続が難しい業態なのは間違いない。

また一方で、現在仲介手数料無料のサービスがどんどん生まれている。20年以上、この事業に関わっていて業界動向を見ていると、こうしたサービスは定期的に生み出されているようだ。手数料を無料にして、ユーザーの負担を減らすことは、特に問題はない。ただ、他社で内見した物件を、そのまま手数料無料という謡い文句で、ユーザーを横取りするのは、見ていて気持ちの良いものではない。上記に述べたように実際に広告掲載から内見まで紹介業務を行ったのにも関わらず、横取りされてしまうと、不動産会社としてはなかなかやりきれない。

手数料が必要かどうかは、別の議論になってしまうが、それでは「仲介会社の意義」とはなんだろうか。今回は、実際に現場で起こったことを紹介していきたいと思う。

・仲介会社はユーザーに最適なエリアや賃料を提案してくれる

リテラシーの高いユーザーは、周辺エリアや相場などを理解し、自分自身が住むための条件を理解している。こうしたユーザーには、たしかに仲介会社の提案は必要ないかもしれない。しかし、別エリアからの引っ越しや、はじめての引っ越しのユーザーは、自分自身にとって最適なエリアや賃料の価格帯などを理解しているケースは少ない。
実際に、こうしたユーザーの要望をしっかりヒアリングし、そして最適なエリアや賃料を提案することが仲介会社の重要な役割だろう。
実際、あまりエリアの知識がないまま、すぐに物件を申し込んだユーザーが、引っ越した後に大きく後悔し、すぐに引っ越すケースを何度も見てきた。
また賃料に関しても、収入に見合わない賃料への転居をし、生活が苦しくなってしまったケースもある。こうしたことを防ぐために最適な提案を行うことこそ、仲介会社の存在意義かもしれない。

・検討物件の注意点などをプロ目線で伝える

物件の内見時に、家具の置けるスペースやコンセントの位置など、仲介会社の経験から見ることのできるポイントがいくつかある。こうしたポイントをしっかりとユーザーに伝えることができるのも、仲介会社の強みかもしれない。

実際に、お洒落なデザイナーズ物件を、内見せず申込をしたが、家具が置けない、デッドスペースが多いという理由からすぐに引っ越しをしたユーザーがいた。事前に仲介会社と内見し、デメリットを検討できていれば結果は異なっていただろう。

・初期費用や契約手続きなどをしっかりナビゲートしてくれる

不動産会社が思っている以上に、物件を申し込んでから引き渡しまでの手続きは煩雑で面倒だ。しっかりとした仲介会社だと、ストレスなく鍵渡しまで進むことができる。一方でこのあたりを不動産会社がケアしていない場合、かなりユーザーは不安になるだろう。

また初期費用に関しても、ユーザーが想定している概算費用から大きく乖離することもあったりするので、このあたりの細かい説明も仲介会社の義務のひとつである。

このように「ユーザーの部屋探しから引き渡し」までをしっかりとナビゲートすることが、仲介会社の存在意義なのかもしれない。

以前から不動産業界は、「情報の非対称性」が問題視されてきた。不動産会社の持っている情報量とユーザーの情報量に格差があり、これを埋めるために仲介業務というのが成り立っている。
逆に言えば、情報の格差がなければ、本質的には仲介業務の仕事というものは必要ないかもしれない。

たとえば、上記に紹介したような情報を全てのユーザーが獲得できるようになった場合がそうだ。具体的にいえば全てのユーザー自身がネット情報から、最適なエリアや賃料を決めることができ、かつユーザーだけで内見に行っても物件の注意点を見抜くことができ、さらに契約手続きの流れもユーザーが理解できている状態がそうである。一見、難しいようだが、このあたりの情報提供と理解の浸透を深める活動をしっかり不動産業界全体(もしくは不動産メディア事業者などの第3者期間)で実施していけば、仲介会社の存在意義はかなり薄くなっていくだろう。

しかしながら、2023年にすべてのユーザーがこのような状態になる可能性は極めて低い。いまだに「情報の非対称性」は存在しているのが現状だ。「情報の非対称性」が存在している限り、仲介会社は存在し続けるだろう。そして、この非対称性が解消するのは、だいぶ先なのかもしれない。

 
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