気付かぬうちに顧客属性が変わってしまう仲介会社のあるある事情

 

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)

 

 

画像=写真AC

 

仲介会社を立ち上げたり、もともとある会社内に仲介部門を立ち上げたりする際、当然のことながら、事業のターゲット設定を行うはずだ。

たとえば、想定する顧客は、「年齢は20代中盤」、「年収は〇〇万円」、「対象エリアは〇〇地域」、のようにだ。このスコープされたターゲットに対して、物件掲載を行い、反響獲得を図る。勿論、当初の想定顧客の設定で、売上単価なども導き出す。これを基に、事業計画も策定する。

しかしながら、多くの仲介会社様の売上の内訳を見ると、当初の計画通り、事業計画が進捗するケースは、極めて少ない。仲介業務は、いわば「ミズモノ」である。社会的な外的要因などが、売上に影響を与えることもあれば、店舗のエースであった営業メンバーが退職してしまうという内的要因により、売上が下がってしまうこともある。計画通りに、事業を推進するのは、至難の業なのである。

また、こうした計画に誤差が生まれる理由として、冒頭述べたような当初の顧客設定からの「ズレ」であることも多々ある。あまりこうしたことには、注目はされていないが、かなり根っこの深い問題のような気がする。

数年前にとある不動産会社の社長と話す機会があった。その社長の会社は、3店舗を都心で展開している仲介会社であった。

彼の悩みは、「売上が安定せず、なかなか事業計画が立てづらい」というものだった。

社内の会議室でその社長は、大きくため息をついた。

「とにかく仲介部門の売上が安定しないのです。特に3ケ月〜半年ごとに売上が大きく変わります。勿論、季節要因などは考慮していますが、なんていうか売上の単価などがてんでバラバラで、予測が立てにくいのです」
「営業のかたの離職などがあり、それが影響している可能性はありそうでしょうか?」
私は質問してみたが、彼は笑いながら首を振った。
「数年前までは、離職率が高く、確かにそれによって売上は大きく上下しました。昨年、優秀なA君とBさんが退職してしまった時は、とても売上は下がりましたね。

しかし、この一年は、誰も離職していないんです。むしろ各メンバーは、以前よりもモチベーションが高く、それぞれのスキルが上がっていると思います。しかし、それにも関わらず、売上は安定しない。全く不可解なんですよね」

私はふとこう尋ねた。

「掲載物件などに変化があったのでしょうか?」

社長は、不審そうな顔をした。

「掲載物件…。そうですね、このあたりはあまり確認していませんでしたね。もしかしたらそれが原因なのかも」

 

売上が安定しない原因は…

 

この面談から数日経った後、私は店舗統括の部長と面談をした。少しの歓談の後、単刀直入に私は彼に質問をした。
 

「売上が安定しない要因は、なんでしょう?」

部長は、少し考えてこう言った。

「とにかく成約単価が月によって大きく上下します。これが原因の一端かと思います」

「なるほど。広告掲載の方法などに変更はありましたでしょうか?」

部長は、少し考えてこう答えた。

「そういえば、この一年で掲載ルールを変えました。今までは、顧客ターゲットを決めて、ある程度エリアを絞って広告掲載をしていました。確かにその時は売上は、安定していました。
 しかし、安定はしていたのですが、そこまで大きく売上を伸ばせることができなかったんですね。そこで、とにかく反響が得られそうな物件はエリアや価格帯に関わらず、掲載するようになったんですね。それにより、売上を大きく伸ばす月も出てきました。しかしいっぽうで」

彼は言葉を切った。

「売上は安定しなくなりました。これまで得意だった顧客層の反響を多く獲得できた月は、売上が伸びるのですが、不得意な顧客層の反響が多い場合は、なかなか売上が伸びません。
また、それによって成約単価も大きく振れ幅が出てしまっています」

当然のことだが、高額な物件を掲載すると、高額の支払いが可能なユーザーが増える。低価格な物件を掲載すると、その逆になる。

ポイントは、仲介会社の場合、この掲載物件のコントロールが難しいことだ。会社で反響数などの目標などが設定された場合、当初の顧客想定を度外視して、掲載を始めざるを得なくなることも多い。

しかし、それにより顧客ターゲットの概念は無くなってしまい、「ミズモノ」的な事業にならざるを得ない。
 

売上が安定しない理由として、勿論、人員の欠員やライバル店舗の動向など外的要因もあるが、意外に多いのが、この「掲載物件による顧客ターゲットの変化」である。

これを防ぐには、「明確なターゲット層に焦点を合わせた自社サービスを開発する」か、「顧客ターゲットを再定義し続け、営業力をそれに合わせていく」しかない。

たとえば、管理物件などを相当数保有しており、仲介事業でその売上を見込めるなら、細かい顧客ターゲットの設定、掲載物件の調整は必要ないかもしれない。しかしながら、仲介業務のみで事業計画を推進しようとすると、この掲載物件の選定と顧客ターゲット設定は、避けては通れない問題である。

当然のことながら、売上を上げていくのは、とても重要である。しかし目先の売上目標や反響目標に囚われていて、自社の強みや営業戦略が崩れていくのは、避けたいところだ。

もし売上が安定しない店舗があった場合は、今一度、掲載物件のエリアや価格を見直してみてほしい。意外と自社の仲介サービスに関する重要な答えがそこに転がっているかもしれない。

 
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