仲介会社、または仲介業務が完全に無くなった世界は、どのような世界になるだろうか

 

画像=写真AC

 

「賃貸仲介」が無くなったらどう変わるのか

この2年程の間に、コロナの影響もあり、様々な不動産紹介サービスが誕生した。オンライン完結型の仲介サービス、物件紹介動画サービスなど、実に多岐にわたる。こうした新サービスが発表されたタイミングで、「仲介会社はなくなる」、もしくは「仲介業務はなくなる」という声が必ずといって良いほどあがる。勿論、2022年時点では、仲介会社も仲介業務もなくなっていない。

 

ちなみにこうした「仲介会社はなくなる」、「仲介業務はなくなる」という声は、およそ20年以上前からあった。こうした声が常に上がることは、もはや構造的な問題のような気がする。私は仲介会社や仲介業務が皆無になることはないだろうが、その「在り方」は大きく変わっていくと考えている。その「在り方」次第によって、業界の縮図も同時に刷新されていくかもしれない。

 

さて、そんななかで、今回は仲介が必要か否かという議論ではなく、「実際に仲介会社や仲介業務が無くなった世界はどのような世界になる」のかを考えてみたい。私的な意見を除き、冷静な視点で物事を俯瞰すると見えてくることがあるかもしれない。

 

まず、ユーザーのメリットを考えてみよう。仲介会社がなくなれば、物件の問い合わせ先が100%元付業者になる。それにより、「おとり物件」は激減するだろう。また物件情報の責任の所在も明確化される。また、物件の案内時も、物件に詳しい管理会社のスタッフが内見の対応をすることになる。これにより、内見時にユーザーが疑問に思うことも、ほぼその場で解消できるようになるだろう。

 

さらに申し込みに関しても、管理会社からオーナーへの報告は曖昧ではなくなり、その人となりをしっかりと報告することができるようになる。

 

また仲介手数料なども当然、なくなっていくだろう。手数料が無くなることで、ユーザーは初期費用を抑えることができるので、経済的にもメリットがある。もっと言えば、広告料も無くなるかもしれない。少なくとも仲介会社に支払う「広告料」という概念から、リスティング広告料金などの純然たる広告運用にかかわる費用に変わっていくかもしれない。

 

いろいろと考えてみると、管理会社が直接仲介をすることは、問題はないように思える。繰り返すが自社商品の説明力や物件の理解度は、客付の仲介会社とは比べものにならないほど高い。これによりユーザーの商品の納得感も上がるだろう。このように仲介会社や仲介業務がない世界は、一見するとメリットしかないように感じる。

しかし、ではなぜ20年間も仲介会社や仲介業務は無くならないのだろうか。次は、仲介会社、仲介業務独自の特徴を少しまとめてみた。

 

 ・同時に複数の元付物件を紹介できる

管理会社が自社管理物件のみを紹介するようになると、ユーザーは、それぞれの元付会社に独自に問い合わせを行う。当然、問い合わせのあった不動産会社自身で、案内を行わなければならない。こうした状況になると、ユーザーは、同じ日に何社も不動産会社を回らなければならないだろう。

これは、なかなか非効率だ。そう考えると、同じ日に一社で様々な元付会社を紹介してくれる仲介会社はとてもありがたく感じるだろう。

 

・顧客側に立ったアドバイスができる

当然のことだが、元付は、売主や物件所有者とやり取りをしていく。どちら側に立つか、ということはないが、不動産事業として、オーナーに対して手厚くケアしていくことは、当然のことである。問い合わせのあったユーザーを無下にするわけではないが、心理的にやはりオーナーの顔が浮かんでしまうことは、多々あるだろう。その点、客付仲介会社は、完全にユーザーの立場になることができる。これは、ユーザーも非常に心強いところだろう。

 

 ・各元付会社の特徴や長所、短所を伝えることができる。

実際に仲介会社で様々な物件の仲介業務を行なっていると、元付会社のそれぞれの癖などがわかるようになる。たとえば契約の特約条項の記載内容や、元付独自のサービス(抗菌)などの契約時のところから始まり、入居時の管理体制などに至るまで、仲介会社は、それぞれの管理会社に付随する多くの知識を持っている。そしてこうした知識を基に、彼らは、入居者にとって最適な元付会社が管理している物件を紹介することができる。ただ、物件の知識の提供だけではなく、各不動産会社のサービス優位性を説明できるのも、仲介会社の強みなのかもしれない。

 

こうして纏めてみると、仲介会社、仲介業務の全てを無くすことは、現時点で、かなり非現実的ではないだろうか。そもそも管理会社の問い合わせ対応などは、仲介会社に比べて決して高いわけではない。紹介のサービスレベルなどを考えても、現時点で仲介会社や仲介業務が皆無になることは、難しいだろう。

 

とはいえ、今回紹介したような仲介の役割を代替するサービスが生まれると、状況は変わっていくかもしれない。

 

たとえば、同時に元付物件を紹介し、ユーザーにメリットデメリットを伝え、管理会社のレビューができる、ウェブサービスや企業などが誕生すると面白いだろう。逆に、こうしたサービスが生まれ、一般化しない限りは、「仲介」はなかなか無くならないのではないだろうか。

 

「仲介会社」、「仲介業務」のない世界を作っても、ユーザーの満足度が低ければ、なんの意味もないかもしれない。

 
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