不動産系のCMを改めて考えてみた

画像=Pixabay

 
  年が明けると、不動産会社(ポータルサイトも含む)のCMが一気に増えてくる。繁忙期に合わせて、各社一斉に広告宣伝費をこの時期に投下していくのだ。

 私も職業柄、不動産系のCMが放映されていると、目を留めてしまう。今年は、各社、どのようなタレントを使うのか、またどのような内容でアピールしているのかを確認する。

 今年に関しては、ポータルサイト各社は、30代のジャニーズ、20代の女優、元プロ野球選手(現監督)、20代の俳優などを起用している。

 不動産系CMの目的理由は、二つの要素があるような気がしている。ひとつは、不動産会社の少しイカついイメージを変えるため、爽やかなイメージをユーザーに与えることだ。このために、「若手」、「爽やか」の印象を与える好感度の高い役者やタレントを使うことが多い。また他の目的理由として、「インパクト」があげられる。とにかくCMにインパクトを与えて、社名、もしくはサービス名を覚えてもらう。こうした目的の場合、今、「話題」となる人物を選ぶことが多い。今年は日本ハムファイターズの監督に就任した新庄剛志などのCMは、際たるものだろう。

 ちなみに、このCMの傾向は、今年に限ったことではない。去年も一昨年も、もっと言えば10年前からあまり変わっていない。効果が高いから変わっていないのか、思考が停止しているのかは、わからない。(そのどちらも当てはまる気がする)

 ちなみに、各社の今年のCMのアピールポイントは、どのようなものだろうか?このあたりも少しまとめてみたい。

 まずリクルート社の提供するSUUMOから見ていこう。今年は、嵐の松本潤を起用し、とにかく爽やかなイメージを打ち出している。また同時に、20代の若手女優・今田美桜も起用し、「スマホから地図をなぞって部屋探しができる」というサービス機能の紹介をしている。予算があるからこそできる贅沢な宣伝方法だ。

 またなんといっても、「物件数ナンバーワン」という圧倒的なパワーワードの連呼。とにかくこのサイト、アプリさえ使えば、部屋探しが完結できるというイメージを強烈にアピールしている。まさに王者の広告戦略だ。

 次に、こちらもメジャーポータルサイトであるLIFULL HOME’S社のCMはどうだろう?こちらは、20代の女優・川口春奈を起用し、「爽やか」で「クリーン」なイメージを打ち出している。内容としては、「こだわりのある細かい希望条件」でも対応(検索)できる、ことを打ち出している。とにかく好感度が高いCMという印象だ。

 引き続きウォーリーくんが印象的なアットホーム社のCMを見てみる。こちらも人気若手俳優の坂口健太郎を起用し、爽やかなイメージを打ち出している。またチャット対応可能など、先に紹介した上記のポータルサイト2社よりも、アプリの機能面のプッシュをしている印象だ。

 次は、日本ハムファイターズの新庄監督を起用したCHINTAI。こちらは、爽やかさというよりも、なによりも「インパクト」である。とにかくサービス名を覚えてもらうインパクト重視のCMである。こちらの会社のCMは、以前からずっとこの「インパクト」を、重視している印象が強い。

 また業界随一の知名度と店舗数を誇るエイブル社は、今年はジャニーズのグループを起用している。こちらは、若年層の取り込みと、インパクトの両方を狙っているようだ。

 このように賃貸不動産系のCMは、「爽やかさ」と「若さ」、そして「インパクト」を重視している傾向が強い。ただ、よくよく考えると、この傾向は、もう何十年も続いているようだ。そろそろ趣向を変えたCMを見たい気もするが、そもそも、現実的に賃貸ユーザーは、どうしても若年層である。やはり若者に人気のタレントや若者にいかにインパクトを与えるかが重要になってくるだろう。

 いっぽうで分譲マンションや住宅系のCMは、賃貸系のCMとは大きく異なる。起用されるタレントの年齢層は上がり、30代、40代のタレントの起用が多くなっている。

 「爽やかさ」に「高級感」や、「安心感」などがプラスになっている印象だ。

 ちなみに、売買不動産店舗系のCMは、これよりも少し「親しみやすさ」をアピールしているような印象である。東急リバブルのぐっさん(山口智充)のCMなどがわかりやすい例かもしれない。

 こうして不動産系のCMを改めて見てみると、やはりそのサービスによるターゲティングを行っていて、かなり世の中の縮図を垣間見ることができる。賃貸系は、若者に人気のタレントを。売買仲介系は、親しみのある40代前後のタレントを。そして分譲マンションなどは、ハイグレードなイメージを具現化し、高級感を打ち出す。わかりやすいといえば、わかりやすい。

 また一方で、先に述べたようにCMの「変わり映えのなさ」も同時に感じる。だいたい10年以上前から似たようなCM内容だ。タレントだけを入れ替えて、「爽やかさ」や「親しみやすさ」を変わらず提供するのは、それはそれで少し寂しいような気もする。

 ただ、おそらくマーケティングコストを検証すると、必然的にこのようなCMになっていくのかもしれない。的外れかもしれないが、少しターゲットを変えてみたCMなどを見てみたいものである。

 この国で不動産業界に変革が起きた時、それはもしかしたら、不動産系のCMが変化した時かもしれない。これまでにない層をターゲットに広告宣伝を始めた時、初めてマーケットが大きく変化したことと実感できるだろう。

※文中は敬称を略しました。

 
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