変化してきた単身者の物件へのこだわりとは?

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)

 

 

画像=写真AC

あけましておめでとうございます。

今年もひたすらマニアックな仲介現場の小噺をしていければと思います。宜しくお願いします。

さて、年の瀬に、部屋の片付けを実施した。一年で溜まりに溜まった「残すもの」、「捨てるもの」を分別し、普段取れない部屋の細かい汚れを落とした。毎年のことだが、こうしたことを行うと、年末年始の実感が湧いてくる。

ちなみに、私の「捨てるもの」は、年々減っている。まず書籍などは、殆ど電子書籍で購入し、ほぼリアルな本は買っていない。ましてや、CDやDVDなどはこの数年、全く買っていないのではないだろうか。また、仕事で使用する紙の量も随分減った。数年前までは、それなりに資料が溜まり、年末はそれを処分することが大変だったのだが、今やそういうことは無くなった。それほど紙の使用量が減り、モノを買わなくなったのだ。

話は変わるが、都心のワンルームのリーシング市況は、徐々に活況に戻りつつあるようだ。秋口頃までは、賃貸仲介の動きも各社によってバラつきがあり、なかなか市況感を見定めることが難しかったが、最近は、単身者の動きが活発になってきたようである。流石の繁忙期である。

また、この一年、賃貸仲介の現場のかたから、ワンルームを希望するユーザーの変化に関して、非常に興味深い話を聞くことも増えてきた。それは、「これまでにはないユーザーの部屋のこだわり」である。今回は、これに関して少し紹介してみたい。

ちなみに我々がイメージするワンルームや1Kの家具配置のイメージは、どのようなイメージだろうか?

居室部には、ベッドがあり、中央にテーブルがあり、テレビ台にテレビがある。(余裕があれば、作業用のデスクと椅子、ソファなどもある)これが数年前の単身者用の部屋のイメージだろう。よくこうしたパンフレットも見かけていたと思う。

しかし、現在、ワンルームを希望するユーザーは、ミニマム的な嗜好を持つユーザーと、徹底的に趣味にこだわるユーザーとの極端の二極化が進んでいるようだ。

ミニマム的な嗜好のユーザーといえば、単純にまず「物を持っていない」ことである。まずテレビが必要ない。本やCDなども持ち歩かない。服もファストファッションで統一している。極めてシンプルだ。

こうしたユーザーは、まず部屋の広さに対してそこまで強いこだわりはない。とにかく最低限の活動領域さえあれば良いのだ。ただ、作業机とベッドにはそれなりのこだわりがあるユーザーが多く、このあたりがキチンと部屋に収まるかどうかを重視する。

また、これはよく複数の仲介会社の方々から、よく聞くことだが、ミニマム嗜好のユーザーは「水回り」に関しては、こだわりを持ってその設備を重視しているかたが多いようだ。風呂、トイレは別タイプ。さらに独立洗面台も必須希望のユーザーが多いようだ。

つまり、居室部はシンプルで、水回りは充実していることが好みの傾向としてあげられる。

またこうしたシンプルな部屋を希望するユーザーはナチュラルテイストのトーンで家具などを選んだり、観葉植物を置いたりするユーザーが多いようだ。あくまで「シンプルライク」な生活にこだわりがあるだろう。

 

とにかく趣味に囲まれたい人の心理

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いっぽうで、趣味にこだわっているユーザーの特徴はどうだろう?

少し前に野生爆弾のくっきーさんのYouTube動画を見た。そのなかで、彼のこだわりまくった部屋が紹介された回があった。本棚にびっしりと並べられたパンクバンドのCD、好みの漫画、そしてコレクションで集められたブーツなど。まさに男の子が憧れる「秘密基地」のような部屋だった。

ここまで凝りに凝るユーザーの数は少ないが、それでも自室で自分の趣味や好みのコレクションに囲まれたいユーザーは一定数存在する。こうしたユーザーは、とにかく居室の広さと収納を重視するようだ。水回りなどは、さておき、とにかく部屋の広さである。とにかく好きなモノに囲まれていたいのである。

さて、現在、こうしたユーザーのニーズに、通常の単身者用の部屋は応えられているだろうか?

先に述べたように昔のユーザーのイメージで作られた単身者用ワンルーム、1Kがほとんどである。しかし、リーシングを強化している管理会社では、徐々にこうしたニーズを汲み上げたリフォーム、リノベを実行し始めている。

「趣味寄り」のユーザーをターゲットにした、壁一面の棚などの設置。また、いっぽうで、「ミニマム寄り」のユーザーをターゲットにした「無垢材のリノベーションと水回りのリフォーム」などだ。それぞれのターゲットを明確にしたリフォーム、リノベーションを実施する不動産会社が少し増え始めた。

また投資用のワンルームのプランニングにも、こうした現在のニーズに合わせた間取りにしていくことを心がけてみるのも良いだろう。宣材の使用イメージなども、これまでのステレオタイプな単身者のイメージから逸脱したほうがよい。最近はなかなか仕入れの問題で、余裕のあるプランニングが難しいとも聞く。しかしこうしたニーズを組み込んだ企画力勝負の物件で、プランニングをして、他社と差をつけていってもよいかもしれない。

コロナ禍と、デジタル化によって我々の生活スタイルは変化を始めた。そして確実にそれは、単身者の部屋の使い方やニーズに変化をもたらすだろう。

それは今は、目に見えないかもしれないが、ゆくゆくは、この数十年、いっこうに変わらなかったワンルーム標準仕様にも変化を起こす可能性があるかもしれない。これまでになかった新しい単身者用マンションが生まれることを密かに期待している。
 

 
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