賃貸仲介業界での不動産会社同士の繋がりは、意味があるのか?

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)

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賃貸仲介業界での不動産会社同士の繋がりは、意味があるのか?

不動産の仕入れでは、同業者のネットワークを構築することは、最重要項目のひとつとされている。実務を経験したかたは、充分理解されていると思うが、なかなかあまり業界に馴染みのないかたは、ピンと来ないかもしれない。レインズや業者向けのサイトなどで、充分物件情報を仕入れることができるのでは、と思うのも当然だろう。しかし、実際は、そんなに甘いものではない。好立地、好条件の物件情報を獲得するためには、なんといっても同業者間の閉じられた情報収集が必要不可欠である。中古のワンルームであれ、ファミリー物件であれ、土地であれ、同業者のネットワークを駆使して、不動産会社は、物件仕入れを強化する。この慣習は、なかなか変わらないだろう。

では、賃貸業界では、同業者の横のネットワークは、必要なのだろうか?

賃貸管理業であれば、管理業を営んでいない他の不動産会社からオーナーを紹介されることがある。実際のところ、管理物件を自力で獲得するのは、かなりハードルが高い。しかし横のネットワークがあると、このあたりのアドバンテージがたくさんあるように感じる。 

また、賃貸管理業は、生産性がとても重要視される業態である。このあたりの他社の取り組みから知見を得て、自社の管理業務に取り入れると、一気に賃貸管理のスキームが向上する。そういった意味でも、同業者の方法をキャッチアップすることは、大切なことだ。
 
では、賃貸仲介業では、どうだろう?賃貸仲介では、紹介可能な物件は、ほぼレインズや業者間サイトに掲載されている。もしこうした業者間サイトに掲載されていない物件があっても、なかなか仲介会社が簡単に手を出すことはできない。

また、賃貸管理事業のように同業他社の知識の共有をすることも、プラスにならないイメージがある。なによりも、仲介会社同士は、ライバル同士である。集客方法、営業方法の種明かしをすると、自身の会社の売上が落ちるのではないかと感じるかもしれない。

そう考えると、なかなか賃貸仲介会社は、特段、同業他社との繋がりを重視しても、あまり効果がないのかもしれない。

切磋琢磨できる競合は必要

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今から10年ほど前の話である。

とある不動産賃貸仲介会社の管理職がいた。彼の会社は、独自の集客システムを構築し、他には真似できない方法を確立していた。彼の会社の集客の仕組みが非常に独特だったので、私は、よく彼の話を聞きに行っていた。

話を聞けば、聞くほど、彼の信条は、非常にユーモラスだった。とにかく他社には、自社の集客方法を、知られないようにする。勿論、同業の仲介会社とも距離を置く。また取引する管理会社などとも、会食や情報交換を行わない。なるべく門外不出で、独自のセールススタイルを構築したい。これが、彼の会社の、そして彼自身のモットーであった。
 
勿論、こうした方法論は決して間違いではない。戦略上、とても理にかなっているように感じる。自社独自の方法、やり方を維持することは、時として、大きな企業価値向上に繋がることも、ひとつの事実なのだ。
 
しかし、残念ながら、彼の会社は、その後、大きく業績を伸ばすことはできなかった。いや、実際には、停滞していたと言っても良いかもしれない。

他の新興勢力の台頭に押され、徐々に他社との競争力を失っていった。

気がつくと、その会社は、「ひと昔前」のやり方に固執してしまった仲介会社になってしまっていた。

それから更に時が経ち、ほんの一年程前、私は彼と再会した。まだ、変わらず同じ会社、同じ役職で仕事をしていたことも驚いたが、何より彼の会社の変化に驚いた。

どちらかといえば、地味だった(もっとストレートに言うと少しダサかった)会社のイメージは、一新し、スタイリッシュなイメージに変化をしていた。

また派手な服装をしていた若い男性中心だった社員構成も、若い爽やかな女性が多く占めるようになっていた。

店舗も全店舗、改装し、オシャレになり、仲介スキームも最新のチャット対応を実施するようになった。

私は、彼に聞いた。
「大きくこの数年で会社のイメージが変わりましたね。どなたか新しい幹部の方が来られたのですか?それとも、外部にコンサルタントなどにご依頼されたとか?」
 

彼は、笑いながら首を横に振ってこう言った。

「いえ、そんなことはしてないです。唯一、変わったことは、とにかく同業他社さんの話を聞いて周りました」
 

彼は、続けた。
 

「ある時期から、会社自体が硬直化しているように感じていました。だんだん我々の方法が時代と共に通用しなくなっているのが自分でもわかるんです。
 

ある時、一念発起して、外に目を向けて、他社様の取り組みをヒアリングすることにしたんです。そうすると、目から鱗でした。

我々では決して考えつかなかった取り組みを他社は、どんどん実施しているんですね。

非常に刺激になり、我々も次々と会社の改革をしました。その間、退職者も増え、大変な時もありましたが、なんとか復活できました。

また最近では、管理会社様とも交流を深めています。我々の仲介力に期待頂き、いろいろと物件掲載などで優遇を頂くこともあります。

また弊社のスタッフも、懇意にさせて頂いている管理会社さんの物件は、特に注力して紹介するようになりました」

ある意味、「部屋探しのユーザー」という同じパイを同業者で取り合うことも、仲介業の、ひとつの真実である。しかし、そこに執着してしまうと、やはり時代から一歩遅れてしまう。自分自身の胸襟を開いて、付き合えば、相手も惜しみなく可能な限りの情報を提供するのだ。そうして、お互いに切磋琢磨するのが、正しい方法かもしれない。

少し前までこうした仲介会社同士の交流というものは、なかなかなかった。しかし、最近は、SNSや業界団体などの取り組みなどで、他社との繋がりも作りやすくなっている。また、ノウハウも以前に比べて、取得しやすくなっている。

今後は、良いものを、どんどん吸収していくことが仲介業で生き残る秘訣だろう。変化に柔軟に対応することが、何よりも進化できる条件である。

もし仮に、今後の戦略で悩んでいる場合は、思いきって、他社とのコミュニケーションを活性化し、ヒアリングしてみても良いかもしれない。私の知っている限り、それを迷惑に感じる不動産会社は、殆ど見たことがない。これも一つの真実なのだ。

 
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