毎週金曜日配信、「人生の上がり3ホール、賢いシニアのお金の話」
お金・資産運用のプロ 中村伸一さんが「ヤングシニア」向けの資産運用や、老後資金に関してのノウハウを、ゴルフ要素を交えながら伝授します。

今回は、ヤングシニアの資産運用に関しての話です。(リビンマガジンBiz編集部)。


ゴルフコース(画像=Pixabay)

第0打:コースマネージメント 高齢化が変える資産運用

7番ホールは、575ヤードパー5のロングホールです。Aさんは、広いフェアウェイにホッとしつつも、第1打をドライバーで攻めるか、それとも安全な3番ウッドで打つか、迷っています。

ヤングシニア世代では、60歳の時点で会社から退職金が出る方が多くいらっしゃいます会社に貢献してきた証として、退職金をもらうのは嬉しいことです。しかし、その使い道に、頭を悩ますこととなります。住宅ローンの繰り上げ返済に回すか、好きな旅行や趣味に使うか。いや、これからの老後の生活資金として、運用してみようか、と考える方も多いでしょう。そんなヤングシニア世代が考える必要があるのは、次の三つのリスクです。
①年金制度の変更
②インフレ対応
③長寿(健康寿命、不健康寿命のバランス)への対応

ではこれからこの3つについて、少し考察を加えていきましょう。


第1打:年金制度の変更

1つ目の年金制度については、5番ホールで少し詳しく書きました。しかし、もう一つの大きな変更が、「確定給付年金(DB型)」から「確定拠出年金(DC型)」への転換です。今年の1月から公務員、専業主婦、すでに企業年金に加入しているサラリーマンも個人型年金に加入できるようになりました。これが、金融機関の店頭にポスターなどが貼られている「iDeco」という商品です。

まず、DB型とは年金基金が退職後、毎月10万円を定額で給付するといったものです。一方DC型は、給付金が確定しておらず、加入者が自己責任で選択した商品で積み立て運用し、給付を受けるものです。その際、税金が原則非課税になるなど、大きなメリットがあります。

Aさんは、やはりドライバーを抜いて、ティーショットを放ちました。軽いフェードの放物線を描きながら230ヤードの飛距離が出ましたが、右側ラフにつかまりました。


第2打:インフレ対応

1990年のバブル崩壊以降、日本経済はデフレにあえいでいます。私は、今もデフレの真っただ中だと思っています。そんな状態ですので、今後インフレになることなど、想像できないかもしれません。しかし、日本の財政事情を考えると、いつインフレになるか分からない状況です。インフレ下では、今の100万円の価値が将は下がることになります。

Aさんは、少しでもグリーンに近づこうと5番ウッドを使って第2打を打ちました。しかし力んでしまい、ボールの頭を打ってしまい、ラフから脱出失敗。第3打も距離が残ってしまいました。


第3打:長寿化に対応するために

第3打は、無理せず8番アイアンを使って、フェアウェイに出す作戦を考えたAさん。少しダフりましたが、130ヤードの飛距離で、フェアウェイ左にうまく脱出成功。しかしピンまで残り175ヤードも残ってしまいました。

ヤングシニア世代には、親の介護、相続、そして自分の健康など、色々な問題が山積です。不健康寿命が長く伸びても実は喜ばしいことばかりではありません。
また、医療費の出費増大など、高齢者ならではの問題も発生します。それらに対して上手に生命保険を活用しながら、医療費を準備する必要があります。無理なく生活していくために、資産運用を考える必要が出てくるのです。

第4打:ヤングシニア世代の資産運用ニーズとは

残り175ヤードを22度のユーティリティ―を使って打ったAさん。うまく避けたつもりでしたが、左側のガードバンカーに入ってしまいました。頭を抱えるAさん。

ヤングシニア世代に大きな転換点が訪れます。それは、退職時を境に、金融商品残高が右肩下がりに減っていくことです。今までは、通常ですと収入から支出を引いた金額が預貯金として積立てきたかと思います。例えると山登りの頂上へ向かうイメージです。しかし、今後はそれを取り崩す生活になってきます。頂上から下っていくイメージになるのです。私は、FPとして数多くのご家族のライフプランを作成してきました。この図は、程度の差こそあれ、すべての方々に当てはまります。ヤングシニア層の資産形成は、現役時代のやり方とは異なるのです。


(画像=Pixabay)

第5打:ヤングシニア世代がとるべき投資姿勢

昔に比べ、退職後の人生は確実に長くなっています。

現役時代に比べて、当然リスク許容度は低くするべきです。リーマンショックやイギリスのEU離脱のような、ビッグサプライズがあると、なかなか取返すことはできません。

またインフレに関しても、収入のある現役時代は、収入そのものがインフレに対応していました。しかし退職以降、保有資産は放っておけばインフレに連動しないので、資産価値が目減りします。公的年金の場合、マクロ経済スライドという制度があります。しかし少子高齢下の日本では、むしろ給付額を減らす方向になっています。

バンカーからピンまで8ヤードの距離。サンドウェッジで打ったAさんのボー

 
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