東京五輪を前にした不動産の現状

東京五輪を2020年に控えている今、2016年春の時点ですでに対象エリアを中心に不動産の相場は極めて高くなっていました。当然ながら、東京五輪に合わせた需要を見込んで不動産が買われたためです。その他にも円安や金融緩和の影響を受けて、特に選手村や競技会場が設置される湾岸エリアにおけるマンションの相場は軒並み上がっています。高騰した不動産をさらに高い価格で転売することは難しいため、この動きは都内ではすでにピークを迎えており、徐々に大阪や名古屋といった他の都市圏へと高騰の波が移ってきています。

東京五輪に向けて、そしてその後の展望

「東京五輪までは高騰する」との予想は比較的容易ですが、この動きはいつまで続き、その後どうなるのかが問題です。まず現在の高騰の動きは海外投資家の動きも手伝ってあと1~2年は少なくとも続くと見込まれています。中国の投資家たちは北京五輪の際の自国の不動産価値の高騰を知っているため、同様の結果を東京にも期待して不動産を購入しているのです。次に国税庁の発表による平均給与額を見ると、98年のピーク時に比べて現在は低い水準を保ったままです。収入の不安定化や非正規雇用者が増える中で、高額の家賃やローンを払える人は減ってきています。そういった意味で、長期的な目線での不動産価格の下落は続きそうです。その動きは東京五輪後にはより顕著になるでしょう。人口と空き家についてみると、まず東京五輪をピークに都内の人口は減少すると予想されます。また東京五輪が終わるころ、団塊の世代は70代を迎え、老人ホームなどへの入居が増えることから空き家はますます増えるでしょう。そういった人口減少、空き家増加は不動産価格の下落に通じます。プラスの側面を見ると、設備の整ったインフラや都市競争力の増した東京に、地方や海外から人口の流入が期待できないわけではありませんが、全体的な流れで見ると下降曲線が描かれるであろうことは否めません。

 
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