私が不動産の仕事をしているときには、区分マンションのオーナーさんから売却依頼が入る一方で、買いたいという顧客からも依頼を受けていました。区分マンションを複数所有しているオーナーさんが更に買い増しするというよりは、不動産投資が初めてで、一棟売りでは高額すぎるのでまず区分マンションを所有したいという顧客が多かったです。不動産投資の熱い波に乗ってきた人が多くなっていたということですね。

そのような顧客は、「投資である以上利益を出したい、利益が出る以上現金を手にしたい」という考えで物件を検討する傾向が強かったです。いくら安いと言っても、中古の区分マンションでも車であれば新車が1台軽く購入できる価格です。初めてであれば、高額に感じるのは当たり前、リスクを避けたいのはなおさらですから、こういう要望も仕方がないのかもしれません。

ただ、こういう場合、私はまず顧客にすぐさま具体的な物件情報を流さず、ある程度シミュレーションを行ってから物件探索をするようにしていました。大抵の顧客は、このシミュレーションで区分マンションから一棟売りのアパートなどへ路線変更するか、所有目的を変えて購入してもらうようになりました。一部の方は、残念ながら不動産投資そのものをあきらめてしまうこともありました。

売りやすくて買いやすいといった都合の良いことばかりの世界は無いように、やはり区分マンションの売買も然りなのです。どうして売れないのか、買い手が付きにくいのか。今回は、区分マンションの売却で、思わぬ費用が足かせになっている点についてお話しします。

前回、区分マンションの売れない原因としてライバルが多いことを話しました。それ以外にも原因があるということです。その1つとして、区分マンションのオーナーは、意外と支出が大きいということが挙げられます。

一般的に、不動産賃貸物件を事業としている場合に、収入は家賃収入、支出は借入金返済、公租公課、管理委託料、原状回復費用、広告費用などがあります。そのほか、一棟アパートやマンションでは共有部分の水道光熱費がかかり、区分マンションの場合にはマンション全体の管理費や修繕積立金がかかります。前回、ライバルが多く家賃相場が落ちている現状で、この2つの費用が、区分マンションのオーナーの収支に結構負担をかけているのです。月額で家賃収入の4分の1から5分の1の負担になりますので、年間の収支を計算してもキャッシュフローが残らない場合が多いのです。

従って、キャッシュフローを残すことを要望する顧客には、一棟売りの物件よりも2倍以上高い表面利回りでないと収支が合わないと説明し、物件を探していくことになります。家賃相場が高くならないご時世では、売却価格が低いものを探すことになりますが、これがまた高く売りたいという売り手側の意思と反発するため、こういう物件に巡り合うことが少ないのです。

当然、買い手の中には、利回りや収支は置いておいて、まずは将来性を買うという方もいます。売却依頼を持っていると、そういう買い手を探す必要もあるのですが、こういう方は少ないですね。

区分マンションは、費用面からすれば利益の出にくい投資物件なのです。売却を希望する場合には、そのことを念頭に置いて検討しましょう。

 
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