私は大学時代に木造アパートに住んでいました。一棟全体が同じオーナーさんの持ち物で、資産を所有するというのはこういうものなのかなと感じていました。

不動産以外に賃貸住宅の原状回復の仕事をしていた頃、ちょうどマンションの区分ごとの所有が流行し始めました。マンションの管理会社から仕事を受けていたのですが、オーナーさんごとに原状回復に関して要望を聞く必要があり、結構煩雑な仕事だったと覚えています。

マンションの1室のオーナーになりその賃貸で収入を得る「プチ大家」は、不労所得の画期的な手法として広がりました。資産を持った富裕層からサラリーマンまで銀行の融資が取れれば購入できるということで、投資の1つとして捉えられています。また、区分マンションの所有は、家賃収入と費用の差額から出るキャッシュフローよりも購入時よりも高く売れるキャピタルゲインを求めて購入される方が多いと聞いています。

しかし、今となっては、単身用マンションの区分所有で賃貸していらっしゃるオーナーさんより、「なかなか売れないけどどうしようか?」という相談を受けることがあります。今回は、区分マンションの売却がうまくいかないのはなぜかについてお話しします。

その原因1つとして、とにかくライバルが多いということです。マンションは1棟で数十の区分が出来ています。街の中心部や駅の近くであれば、同じような建物が複数存在しています。そして毎年近隣で新築されることがあれば、ライバルはどんどん増えていくことになります。ここで言うライバルとは、入居募集時のライバルであり、売却時のライバルということです。

賃貸マンションは木造のアパートより家賃は高めですが、設備が充実しセキュリティ対策もしている物件が多く、入居がつきやすいです。ただ、ここ数年は、東京の都心は別ですが物件の供給過剰になっている地域が多く、空室が目立ち家賃相場も落ち始めています。同じような物件を抱える管理会社も入居してもらいやすい物件からしか紹介しないため、オーナーさんが工夫しないと入居がつかない状態になっている話も聞こえています。入居募集でのライバルに打ち勝たないと収入が入りません。

従って、「入居がつかなければ、お金が入らない。収入が得られないと赤字になり所有は負担になる。だから売却する」という理由が多くなっているのも事実です。またネットで売却物件を検索すると、同じマンションから複数の売却物件が出てきています。物件の立地が良いから購入しても、同じように入居がつかないなどの理由で、同じ建物から売却でもライバルが発生しています。

オーナーさんの売りたい理由が買いたい人にもメリットになる場合には、物件は売却できるでしょう。しかし、「利益が出ないから売る」では買い手は現れません。そのうえ、同じように売却したいという物件が多い状況では、ライバルに先んじて買い手を見つけるのは困難です。

このご時世、区分マンションの売却はしっかり戦略を練ることが大事ですし、ある程度の譲歩できる条件を備えておくべきでしょう。

 
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