司法書士の佐伯です。

師走になりましたね。

今年も一年あっという間でした。

年末はどの業界も忙しいかと思いますが、

皆様ご自愛くださいませ。

さて、今回は「なんで不動産の名義変更ってしなきゃダメなの?」というテーマで書かせていただきます。


不動産売買の時に買主はお金を払います。

売主は不動産を引き渡します。

これは、当たり前のはなしです。

お金を払うからモノがもらえる。

モノを渡すからお金がもらえる。

当たり前です。

不動産売買の時に売主から買主に不動産の名義を変更します。

これも、当たり前のはなしです。

では、なんで名義変更するのでしょうか?

きちんと説明できますか。

買主としては、買ったのだから不動産名義を自分にしなくては、

と思いますよね。

その通りなのですが、不動産売買の場合は不動産引渡しと同時(正確には同日)に買主へ不動産名義を変更します。

これは必ずです。

なんでこんなに急ぐのでしょう。

もう買ったのだから翌日に名義変更してもいいんじゃないでしょうか。

なんとなく忘れてしまいそうだから引渡し後すぐに名義を入れるのでしょうか。

これにはきちんとした理由があります。

まずは根拠を提示します。

民法第177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

私もそうだったのですが、

条文の意味ってまったく頭に入ってきません。

噛み砕いて「にゃんにゃん」して説明します。

まず条文のキモの部分をピックアップします。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

↓↓↓

不動産に関する物権の得喪は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

見えてきたでしょうか。

この条文の意味するところは、

「不動産をゲットしても、登記せーへんと他の人にこれワシの不動産やで~と主張することが出来まへん」ということです。

まだちょっと分かりにくいですよね。

具体例でいきます。

AさんがBさんに不動産を売りました。

Bさんはお金を払いました。

Aさんから不動産の引渡しも受けて引越しも完了済みです。

でも、登記はしていないのでまだ名義はAさんのままです。

そこでAさんは悪巧みをします。

「これ、まだ俺の名義やから下手したらもう一回売れるんとちゃう?」

そう思ったAさんはすでに売った不動産を名義が自分だからということで、

Cさんに売ってしまいます。

「二重売買」というやつです。

CさんはすぐにAさんから自分名義に登記を入れました。

さて、この不動産の所有者はいったい誰になるのでしょうか。

2択です。

所有者はBさんである。

Bさんの主張はこうです。

先に買っているので、その時にAさんからBさんに所有権は移動しています。

後にAさんがCさんに売ったときにはAさんにはその時所有権はなかったのですから、

無いものを売ることは出来ません。

それに、すでにBさんは不動産に住んでいたのだし、

それを確認せずに買ったCさんに落ち度がある、

というものです。

所有者はCさんである。

Cさんの主張はこうです。

Bさんがぼやぼやして登記名義を入れていなかったから、

まだA名義であった登記を信じて自分が不動産を買ってしまった。

Bさんに落ち度がある、

というものです。

いずれにせよAさんが悪いことには変わりはないのですが、

今回は被害者2人の争いです。

所有者はいったいどちらなのか。

答えはもうお分かりだと思いますが、

前述した条文のとおりです。

「登記したCさんの勝ち」になります。

確かに上記の例だと、

Cさんにも落ち度はあるし、

Bさんの主張はスジが通っています。

でも、こういったどちらもそれぞれに主張があることに白黒つけるのが法律なのです。

Aさんが悪いのは誰でも分かることです。

BさんもCさんも被害者なのですが、

一つの不動産に他人の2人が住むことは出来ませんのでどちらかに泣いてもらう必要があります。

だから、登記名義を先に取得した方が勝ちという明確なルールで白黒決着をつけることになっているのです。

にゃんにゃんしまくったので長くなってしまいましたが、

最初の話にもどりますと、

なぜ登記を急ぐのかというと、

こういう二重売買のようなことを防ぐためにしなければならないからです。

世の中には悪いやつがいるのです。

ですので、司法書士は不動産の引渡しと売買代金の支払いを見届けたら、

Bダッシュで法務局に向かって登記申請をします(最近ではオンライン申請という方法もあります)。

司法書士が立会人となって、

売主はきっちりお金をもらう、

買主はきっちり不動産をもらう、

という当たり前のことを守ってあげなければならないのです。

最後の不動産引渡しの決済の時にひょこっと現れる単なるおじさん(たまにお姉さん)ではないのです。

でも、逆を言えば、

この条文は司法書士の「メシの種」でもあるわけですね。

登記関係なしに早い者勝ちというルールであれば、

不動産売買の決済時に司法書士の立会いも要りませんから。

ありがたやありがたや。

 
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