不動産エージェントの活躍が、顧客ファーストの不動産業界を作る

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、不動産エージェントサービスを提供する、TERASS(テラス:東京・港)・江口亮介社長に話を聞いた。2020年4月に取材を行った同社、その後サービスや業界の変化はあったのだろうか。(リビンマガジンBiz編集部)

 

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中古流通が増えればエージェントの腕が試される

 

 

TERASS・江口亮介社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

―現在、展開している2つのサービス「Agently」と「Terass Agent」について教えてください。

 

「Agently」は、住宅購入希望者と不動産仲介事業者(エージェント)を結びつけるマッチングサービスです。家探しをしているエンドユーザーが希望条件を登録すると、複数のエージェントから条件に合った物件提案が届く仕組みで、気になるエージェントとやり取りできます。クローズドな場のため、未公開物件情報を紹介してもらえるケースもあります。

 

エージェント視点でいうと、購入希望度の高い見込み客と出会えるのがメリットです。また、不動産事業者個人での登録となるため、提案力やコンサルティングなど個々のスキルでお客様をサポートしたい方に適しています。現在、200名を超える不動産事業者に登録いただいています。

 

一方、「Terass Agent」は、当社と業務委託契約を結んだ専属の不動産エージェントが不動産取引をサポートするサービスです。エージェントに関しては、かなり厳しい基準で選考しており、平均選考通過率は約5%です。現在、約60名が在籍しています。

 

「Agently」 画像提供=TERASS

 

―5%とは、かなり狭き門ですね。どのような基準で選考しているのですか。

 

売買仲介歴3年以上、45歳未満の方を対象に「お客様にどんな価値を提供できるか」を非常に重視しています。顧客からのリピート経験の有無や、仲介業に対する考え方、フリーランスとして働くうえでの自律性など、総合的に見てTERASSがお願いしたいと判断した方と契約しています。

 

「Terass Agent」のコミッションフィーは75%と業界の中でも高めに設定しているので、ここに魅力を感じて、応募いただくケースが多いですね。

 

「Terass Agent」 画像提供=TERASS

 

 

―在籍する不動産エージェントは、もともと独立希望の方が多いのでしょうか。

 

「個人で活動したい」「自分の裁量で自律的に働きたい」という方が多いですね。経験豊富で優秀な人ほどそういった傾向が強いです。ただ、独立して裸一貫でやるより、TERASSの仕組みを活用しながらフリーランスのエージェントとして活動する方がベターだと考えていただいているケースが多いです。TERASSのエージェントにはノルマがありませんし、集客だけでなく、オフィス利用やローン付け、広告作成、契約決済などのあらゆる面でエージェントをサポートしていますから。

 

 

―2021年2月には、住宅の買い替えをサポートする「Home Trader」の提供も開始しましたね。

 

「Terass Agent」になったエージェントだけが使うことのできるサービスです。

 

「Home Trader」は、自宅の売却前に新居を購入し、自宅のリフォームから高値で売却するまでの住み替えをワンストップでサポートするサービスです。いわゆる買い先行の新しい取引形態ですね。ARUHI(東京・港)と提携したローンを活用していて、売却前に購入してもダブルローンや残債のリスクがなくなるのが特徴です。

 

 

―新しい買い先行型の住み替えとは、どのような仕組みなのでしょうか。

 

具体例でお話すると、5,000万円の自宅を所有し、残債が3,000万円の場合、5,000万円の与信額なら80%の4,000万円を担保として融資します。残債の3000万円を差し引いて残った1,000万円を現金でお渡しし、自宅のリフォーム費用や新居の購入費用に充当するというものです。

 

住み替え後、もとの自宅は空室ですので、従来より早く売れやすくなります。リフォームをすればさらに高値で売れやすくなりますよね。そして売却時、5000万円で売れたら、4000万円の担保を除いた差額の1000万円分が追加で入ってくるという仕組みです。もし半年以内に売れなかったら、ARUHIが担保分を買取する保証も付けています。

 

この仕組みは、アメリカだと「トレードイン」と呼ばれていて、かなり流行している住み替え方法なんです。家をスワッピングするという表現があって。気軽に住み替えができるとあって、購入の競争率がすごく高いそうです。

 

 

―「Terass Agent」だけが使えるサービスなのですね。

 

リースバックのような仲介サービスとして捉えています。買い替えニーズのあるお客様には「Home Trader」を選択肢として提案してくれていますよ。エージェントの武器として活用してもらえればと思っています。

 

 

―他にも、エージェントが活躍できるような仕組みを考えていますか。

 

金融系の新規サービス開発を進めているところです。私たちプラットフォーム側が一歩進んだものを提供して、付加価値を付けていきたいと考えています。

 

また、売却版の「Agently」も開発中です。エージェントから「今は物件の在庫が少ないから、売り物件を獲得したい」という声がよく聞かれます。既存の購入版で培ったノウハウを活かして、ニーズに対応していく予定です。

 

また、エージェントの選考を厳しくしているものの、同時に間口を広げていきたいとも思い、「ジュニアエージェント」というアクセラレーションプログラムを設計しているところです。不動産仲介の経験がなくても、保険や証券営業の経験者など不動産販売のポテンシャルを持っている方に向けて教育プログラムを提供して、エージェントのもとで一定期間実務経験を積んだうえで活動してもらう仕組みです。

 

 

TERASS・江口亮介社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

 

―様々な構想がありますね。TERASSのサービスが普及するうえで、ボトルネックになるものはあったりしますか。

 

すばり、売主側の仲介の囲い込みですね。両手以外認めないという企業が結構多いです。TERASSのエージェントたちが囲い込みによって苦戦を強いられることがたびたび起こっています。お客様をご案内したいのに、物件を見に行けなかったらどうしようもありません。レインズに載せているのに、他社からの案件をぞんざいに扱っている様子を聞くと、本当に驚きますね。業界の活性化の妨げになっているとしか思えません。

 

 

―「Terass Agent」は、業界の新しい人材創出のようなことをしている側面もあるのではないですか。

 

それはあると思います。柔軟に働き続けられるからこそ、今までだったら不動産仲介から去ってしまうような優秀な人材が居続けてくれる。不動産業界は、ディベロッパーや仕入側に行きたいとか、給料が安くて仲介なんてやってられないなどの理由で良い人材から抜けていってしまう構造なんです。それはもったいないですよね。

 

当社のエージェントで、大手不動産会社から移ってきた方なども、TERASSなら自分らしい営業ができて快適に仕事ができると言っています。私たちもエージェントが活動しやすい環境やサービスを提供しているからこそ、仲介業の人材の層がどんどん厚くなっていると思います。

 

 

―最後に今後の展望を聞かせてください。

 

TERASSのサービスは現在、首都圏限定で展開しているのですが、2021年中に名古屋に進出する予定です。名古屋は、賃貸だけでなく新築分譲マンションも数年前から建ってきています。良いタワーマンションや中古物件が増えて、エージェントが活躍する素地ができているんですよね。さらに、もともと注文住宅を建てる文化があるので、地主さんとのつながりが強い営業担当者に活躍してもらえればと考えています。

 

また、近い将来、売買取引のIT重説が実現すれば場所に縛られる必要がなくなるので、東京と名古屋を拠点にリモートでエージェントをサポートする体制の準備を進めています。アメリカには6万人のエージェントを抱えながら、オフィスを1つも持たずバーチャルオフィスを活用して急成長している仲介会社があります。TERASSにも「エージェントクラウド」という社内システムがあるので、スマートフォン1つで仲介業務ができるよう、開発を進めているところです。

 

今後も優秀な不動産エージェントが活躍できる環境を作って、顧客ファーストな不動産業界になるよう寄与していきたいですね。

 
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