―若い世代が従事する環境や業界イメージを作ることも「TRG」の目的なのですね。ただ、テレアポや飛び込みといった営業手法はなくならないという声もあると思います。
不動産業界は、労働環境やハラスメントといった悲しい事件が多い。これはストレスが第一の要因だと思っています。自分の好きなことは何時間やっても苦になりません。それはストレスがないからです。
100件飛び込んで2件ニーズが合致したとしたら、本来ならば98件の飛び込みはいりません。合致した2件も飛び込みをしなくてお互い出会いたかった。98件も飛び込まずに、余った時間で地主や買主に対するサービスの質を向上させた方が良いでしょう。元々出会いたいという人がいるなかで探すのであれば、テクノロジーの力を使うべきです。
また、私が不動産の売買業に携わってきて、多くの営業担当者が「売りつける」「押し込む」といった言葉を使うのも気になっていました。売りつけなくても、本当はどこかに欲しい人がいて、スムーズに売ることができる。しかしネットワークがないため、目の前の客に売りつけてしまう。
買い側のネットワークを表現する場所が少ないことが原因だと思います。
売り物件は情報サイトがたくさんあります。しかし、買主は昨日まで買いたいと言っていたのに、今日は買いたくない、でもやっぱり明日には買いたくなるといったことがあります。これを日時で表現できる場を不動産事業者に提供したいと考えています。
―これまで1日数百件のテレアポや飛び込みを行っていた会社が、同じ営業活動を「TRG」を使って行う可能性はないのでしょうか。例えば、1日何百人にテンプレートを送りまくるといった使い方です。それでは、「TRG」が大切にしているニーズの合った担当者と繋がる、という文化が維持されなくなってしまいます。
その可能性は十分にありますね。
そこで、ユーザーは通報と拒否ができるようになっています。
どこまでいっても労働集約型の文化は残るでしょう。ある意味では営業熱心とも言える。
「TRG」は、ユーザーを拒否することでパートナーを解除することができる。そういったやみくもな営業活動の抑止力になるかもしれません。
―これから求められる不動産事業者や不動産営業担当者とはどういったものでしょうか。
市場は常に変化しています。
私の経験でも、買主や売主の質が上がったり下がったりするし、例えば10年前は海外の投資家なんて見ていませんでした。
不動産は、ほとんどの今、日本にいる人間が関わっています。
かつてのファンドバブルといった現象が、これからもどんどん起きると思っています。こういった変化に強いことが重要だと思っています。
―他者を出し抜きたいといった文化もある不動産業界では、共存という考えは馴染まないかもしれません。
過剰な競争心が、今のいろんな無駄を生み出していると思っています。
例えば、建物を作るときも今までの逆の発想で考えるべきです。
現状は建物を建築してからテナントや入居者を募集しておりますので、需給のバランスが合わず、空のオフィスビルやレジが増加したり、簡易宿泊所だけが増えたり、無駄に建築コストだけが上がり必要な場所に建物が建てられないといった現象が起きています。
そうではなく、需給のバランスを保つ為にも建築する前に周辺の出店ニーズや入居ニーズを把握して、必要な場所に必要な建物を建てることができれば、より住みやすい街づくりに貢献できるようになります。現状はマーケット調査に乏しい業界でもあるので、儲かるとなれば感覚で利益重視の建築物が乱立されている状況です。
これはマーケティングの領域になりますが、元々、不動産事業者は広義の意味で街づくりのために存在していますから、消費者動向を正確に把握し、ニーズに合った街づくりの一翼を担えると思っています。
人口減少を肌で感じるようになった時には手遅れなので、マーケットの調査とニーズの把握は不動産事業者や営業担当者に求められる課題だと考えております。
―将来の展望や目標はありますか。
私には6歳の娘がいて、もうすぐ男の子も生まれる予定です。
自分たちの子どもたちが少しでも生きやすい世界にしたいと思っています。不動産は、誰にでも関与しているものです。何か変われば良いと思っています。我々が提供するサービスを通じて、使う人たちが便利になっていけば、恐らくその業界に入ってくる人が増え、仕事の質が上がる。
現在「TRG」はマッチングがメインですが、作っているものはあくまで営業支援アプリです。マッチング機能は最初の入り口ですね。これからも物件資料の自動生成をはじめとした機能をどんどん追加していく予定です。
そして、同じような思想や働き方に賛同してもらえる方を2020年の夏までに1万人に増やしたいと思っています。