遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

 

これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

 

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

 

―クラウドファンディング―

不特定多数の人がインターネットを介して出資する、資金調達方法のひとつだ。

日本国内では未成熟な市場だが、世界規模では巨大なマーケットになっている。

 

今回は、不動産業界に特化したクラウドファンディングサービス『OwnersBook』を提供するロードスターキャピタル(東京・中央区)・岩野達志社長に、日本の不動産とクラウドファンディングの未来について聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

 

 

偶然に始まった事業、『OwnersBook』

 

ロードスターキャピタル・岩野達志社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

 

 

―不動産クラウドファンディングの『OwnersBook(オーナーズブック)』を運営していますね。どういった経緯で始めた事業ですか。

 

ロードスターキャピタルは、2012年に私と森田泰弘(副社長)と中川由紀子(取締役)の3名で創業しました。

 

私どもはゴールドマン・サックス・グループの不動産アセットマネジメントの会社であるゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンの同僚でした。

 

ロードスターキャピタルは不動産会社として創業し、当初は仲介やコンサル、一部自己投資なども手がけつつ、小さな規模で1年半~2年ぐらい事業を行っていました。

 

その後、中国の会社でニューヨーク証券取引所に上場しているレンレン社(人人網)と知り合い、彼らから出資を提案され、それを機に方向性が大きく変わってきました。

 

我々としては当時4人ぐらいの会社で、外部の資本を入れるという計画はまったくありませんでした。しかしながら彼らから熱心に「出資したい」と申し出て頂き、受けることになったのが2014年の3月です。

 

想定していないことでしたが、出資者はITの会社なので、せっかくだから「何か不動産とITの融合はできないだろうか」と話が進んで行きました。

 

我々は不動産金融が専門の人員ばかりで、ITに強いわけでもない。いきなり「ITで何かをやろう」というのは難しいのではないかという雰囲気でしたね。それでも、「せっかくだから何かにチャレンジしてみたい」という気持ちもありました。クラウドファンディングはアメリカで流行し始めているし、一方で日本ではまだどこも不動産特化型で取り組んでいない。じゃあ、やってみようと、本当にそれくらいの始まり方でしたね。

 

そこから『OwnersBook』を2014年9月にリリースしています。

 

クラウドファンディング事業を行っていくには、内部管理体制の構築やITシステムを内製化していくなどのテーマがありましたので、そういった人材を増やしていきました。

 

今は全てのシステムを自社で管理・運営しており、かなりメンバーも増えました。

 

レンレンの出資がきっかけで、不動産テック企業として認識されるまでになったといえますね。

 

 

2014年9月から運営が開始された『OwnersBook』(画像提供=ロードスターキャピタル)

 

 

―偶然に始まった事業といえるわけですね。

 

はい、本当に意図したものではありませんでした。一方で、機関投資家の資金が一斉に引き上げられてしまってマーケットが崩れる、ということもリーマンショック時に経験していたので、「借入が難しい局面でも、もしネット上で個人から何億円という資金を集めることができるようになったらそれはすごいことだよね」という着想から始まりました。

 

 

急速な成長は望まない

 

―スタートして4年が経過しています。安定して稼働している状態ですか。

 

当然、会員数は毎年増加してはいますし、ノウハウも蓄積されています。ただ、売上ベースで見ればクラウドファンディングは当社売上の数%ほどで、主に不動産会社としての売上が収益を支えています。クラウドファンディングでの売上は、今期でもまだ1億~2億円とかいうレベルの話です。

 

クラウドファンディングだけで収益化していくのは、かなり厳しい道のりです。マーケットを作る上でも、あせらずに堅実に取り組んでいく必要があると思っています。

 

 

―今はまだ無理をして規模を追いかけないということですね。

 

そうですね。規模を追いかけて無理をすると、やはり、リスクの高いことをやらないといけなくなる。

 

会社の売上を立てるためにリスクをとると、最終的には個人投資家にリスクをまわして案件を作っていかないといけなくなります。それでは本末転倒です。

 

『OwnersBook』では、自分たちが出口まで見据えてリスク管理できる範囲で案件を提供していきます。

 

そういう姿勢なので、貸付型において借入希望を受けても案件化することは簡単ではありません。他方で、今のマーケットでは投資家の需要は高く、案件をもっと出して欲しいという声も非常に多くあります。

 

ただ、投資家の要望にあわせて案件を組成したけど、問題が発覚してお金が返せませんでした、では意味がありません。我々が大丈夫だと自信を持って言えるものだけを選別して提供しています。

 

 

>>次のページ:相次いだ不祥事。不動産クラウドファンディングの課題(2ページ目)

 

 
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