遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

これまでの商慣習や仕組みごとかわり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、内覧時における無駄な作業を効率化する「スマサポ内覧システム」を提供しているスマサポ(東京都)・川口明信常務に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

スマサポ・川口明信常務(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―スマサポは、賃貸管理・仲介の宅都ホールディングスのグループ会社です。

もともと宅都の社内にあった課題や問題を解決するため、2015年に立ち上げました。「ITテクノロジーやサービスを不動産業界の中でどう活用できるか」ということを目的に様々なサービスを作り上げています。

今、主に取り組んでいるのは『スマサポ内覧サービス』です。

管理会社と仲介会社で発生する内覧業務の効率化を目的としたシステムで、誰がいつどの物件に内覧したのかを管理することができます。

また、サービスに付帯した端末として鍵を保管する『スマサポキーボックス』を提供しています。

勘違いされることが多いのですが、我々は『スマサポキーボックス』を売りたいと考えているわけではありません。これまで無駄が多かった内覧業務に、効率的なサービスを提供することが目的です。

―あくまでも内覧システムのツールとして『スマサポキーボックス』があるんですね。

『スマサポキーボックス』の特徴は、既存の鍵をそのまま使える点です。

我々も将来的には、スマートロックが普及していくことは間違いないと考えています。しかし、あえて既存の鍵、物理キーを使えるようにしているのがキモだと思ってください。

例えば、今全ての物件の鍵をスマートロックに取り替えるとなると、オーナー様の負担が大きくなりすぎます。いずれは、スマートロックに移行していくと考えていますが、完全に移行するのは、かなり時間がかかると思っています。

それに、現状で客付けに苦労していないオーナー様は導入する必要性を感じていません。設備投資して家賃をあげようとは考えない方もいます。皆がそれぞれの考え方をもっているなかでは、完全なスマートロック化に移行するまでには、一定の期間が必要です。

また、鍵を管理している側からすれば、リアルな鍵とスマートロック両方を運用しなければいけなくなります。スマートロックが使える物件と使えない物件があるわけですから。また、同じマンションのなかでも混在しているケースが出てきます。入居者がいる物件では一棟まるごとスマートロックに変えることも難しい。

そういったことを考えると、完全に入れ替わるまでの期間に導線として『スマート内覧システム』で効率化を行いつつ、『スマサポキーボックス』によって内覧時の鍵の受け渡しを簡略化することができることが必要なのです。スマートロックに移行していく中で、リアルな鍵とテクノロジーを組み合わせながら、内覧が楽に行えるというサービスにニーズがあります。

―『スマサポ内覧システム』はオートロックにも対応しているのですね。

一棟を管理するためのデバイスを玄関の集合機基盤に取り付けます。通常は、この基盤に鍵を差し込むことで電気信号が送られ、ドアを開ける仕組みになっています。

 

スマサポキーボックスと、オートロックを解錠するデバイス(中央)
(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

このデバイスは例えば区分マンションの場合、管理組合に承認を得られなければ、玄関基盤につけることができません。他社が開発しているオートロック解錠用の多くのデバイスも同様です。

そこで今、開発しているシステムは各部屋に機器を設置して解錠することができます。これで、区分所有マンションでも管理組合の承認なしに設置することが可能です。

また、解錠の情報は『スマサポ内覧システム』でログ(記録)が取れるようになっています。利用者である仲介会社にIDを発行しているので、鍵をいつ誰が開けたかが分かります。そのため、電話などの事前確認ではなくアプリによる申請で、仲介会社もある意味フリーで物件案内をすることが可能になります。

―『スマサポキーボックス』は工事なしで設置できるのですね。

マグネット式で、ドアに貼り付けるだけで設置できます。開けるときは、スマホアプリで物件を選択し、物件とアプリをBluetoothで紐付けしてボックスを開けます。取り付けも含めて使いやすくすることにこだわりました。

>>次のページ:『スマサポキーボックス』、不動産業界の反応は?(2ページ目)

 
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