スマイスターの便利ツール「不動産譲渡税シミュレーター」の使いこなしをすすめていきましょう。
〇所得税の譲渡所得の原則を押さえるだけで税額は約半分になる!
前回の復習です。土地や建物などの不動産を譲渡(売却)して、譲渡益が出た場合には所得税が課せられます。不動産を譲渡した時の所得税は、申告分離課税となるため単独で税額を計算します。
譲渡する不動産の所有期間が、譲渡した年の1月1日時点において5年を超えているかどうかで、税率が約半分になります。
<不動産の譲渡所得の各種税率>
所得税 | 住民税 | |
短期譲渡 | 30% | 9% |
長期譲渡 | 15% | 5% |
※復興特別所得税は除く
あと少しの期間を待つことで、「長期」になるのであれば、税額のことを考えると検討に値します。
さらに、居住用財産の場合は特例があり、更に税額が少なくなります。
〇居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
スマイスターの「不動産譲渡税シミュレーター」の6つの質問のうち5番目に控除の判断というのがあり、居住用かそうでないかを聞いてきます。つまり、居住している自宅かどうかがポイントになるのです。
居住用財産を譲渡した場合において、一定の要件を満たしたときは、その譲渡益から3,000万円を控除することができます。
自宅の場合、儲けが3,000万円以下であれば、所得税・住民税はかからないということです。この特例は強力です。
仮に3,000万円以上の儲けがあった場合には、超えた部分の儲けに対して課税されます。所有期間が短期であれば短期譲渡所得の税率が、長期であれば長期譲渡所得の税率が課せられます。
ただし、3,000万円の特別控除は、所有期間に関わらず適用されます。
バブルが崩壊してからというもの、不動産価格は下落してきました。
自宅を譲渡して、3,000万円も儲かることがあるのか、と考えなかったでしょうか。
しかし、その可能性は十分あるのです。例えば、自宅をいくらで購入したのか、取得価額が分からない場合です。
その場合、概算取得費といって、譲渡価額の5%で取得したものとみなされてしまいます。例えば、5,000万円で売却できた場合、概算取得費は、その5%にあたる250万円となります。つまり、4,750万円の儲けとみなされ課税されるのです。
そんな時にも助けになるのが3,000万円の特別控除といえるでしょう。
〇居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(以下、軽減税率の特例)
特例はまだあります。それが軽減税率の特例です。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の境目は、譲渡した年の1月1日時点において5年を超えているかどうかでしたが、こちらは、10年を超えているかどうかが判断材料となります。もちろん、譲渡した年の1月1日においてというのは共通です。
スマイスターの「不動産譲渡税シミュレーター」の最初の質問で、所有期間10年超というのがありますが、それがこの軽減税率の特例が適用されるかどうかを判断しているのです。後ほど説明しますが、所有期間を満たしていても適用されないこともあるので注意が必要です。
そして、この軽減税率の特例が適用されると、下記のように、所得税10%、住民税4%となります。
<不動産の譲渡所得の各種税率>
所得税 | 住民税 | |
短期譲渡(譲渡年の1月1日時点で5年以下) | 30% | 9% |
長期譲渡(譲渡年の1月1日時点で5年超) | 15% | 5% |
軽減税率の特例(譲渡年の1月1日時点で10年超) | 10% | 4% |
※復興特別所得税は除く
短期譲渡所得の税率と比較すると、3分の1弱にまで軽減されるのです。
そして、なんとこの軽減税率の特例は、先ほどの3,000万円の特別控除と併用できるのです。ただし、譲渡益が6,000万円以下の部分において適用され、それを超える部分については、前述の長期譲渡所得の税率が課税されます。
〇特例が適用されるには、様々な要件を満たす必要あり!
いずれの特例も、以下の要件を満たすことが要件となっています。
・居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12 月31 日までの譲渡であること
・配偶者や直系血族、生計を一にする親族等への譲渡でないこと
・譲渡の年、前年、前々年に居住用財産の譲渡の特例の適用を受けていないこと
などがあります。これでも要件の一部です。
譲渡する不動産が、特例の提供となるかどうかは、細かな要件を把握する必要があります。