オーナーと不動産会社

画像=PIXTA

先日、自分が借りていた賃貸物件を退去した。退去立ち会いでは、オーナーさん自身も管理会社と共に立ち会って頂き、雑談を交わしながら敷金の精算額を確定させた。とても良いかたで、プライベートの話などでも盛り上がり、とても気持ち良く退去ができた。

不動産業界に長くいることもあり、こうした良好な借主・貸主の関係というのは、非常に稀な気がする。そもそもオーナー自身が退去立ち会いに同席することが、ほとんどないだろうし、仮にあったとしてもここまで友好的に完結するケースはないだろう。改めてオーナーさんと管理会社には感謝したい。

管理会社の幹部と会話していると、「オーナーとその物件管理をしている自社」との関係性について悩んでいる不動産会社が多いことに気づく。オーナーにとって管理会社は、信頼できる相手であるし、管理会社にとっては、オーナーは何よりも重要な顧客である。しかし、なかにはオーナーとの関係性に悩んでいる管理会社も多いようだ。

また個人オーナーと情報交換をすると、「貸主と借主の関係性」について悩んでいるかたが、かなり多い印象を受ける。オーナーにとって、借主(入居者)は、家賃を払ってくれる有り難い顧客であることは、間違いない。いっぽうで滞納リスクやトラブルリスクなどが孕んでいるため、若干「怖い存在」という印象を入居者に対して持つオーナーも相当数いるようだ。

このように賃貸管理の現場では、「オーナーと管理会社」、「オーナーと入居者」の間で独特な距離感があり、業界の特異性を生み出しているように感じる。

先日、とある管理会社の幹部の方が、こうお話ししていた。管理戸数が、1万室近くある管理会社だ。

「殆どのオーナーさんとは友好的にお付き合いできるのですが、なかにはとんでもなく失礼なオーナーさんもいるんです。あたかも家来のように指図をしたり、怒鳴り散らしたりされて、まるでモノのように扱われることもごくたまにあります」

その管理会社の管理内容はレベルが高く、同業者からも評判が良い。

「そうしたオーナーさんに対して、残念ながら弊社では管理業務を外さざるをえない判断をします。基本的にはオーナーさんの要望に応えていたいのですが、どうしても業務といえども限界点があり。とはいえ、実際に管理解約をこちらから切り出すとビックリされるオーナーさんが殆どです。まさか管理解約まではされないだろうと油断されていたのかもしれませんが」

私自身も現場にいる時に、かなり感情的なオーナーを対応していたことがある。とにかく高圧的に指示し、ときおり仲介店舗まで来て怒鳴り散らす。当時の会社でもこうしたオーナーさんは、ある一定のラインを超えると、毅然とした態度でお断りをしていた。結局のところ、断らざるを得ないのだ。

では、オーナーからすると管理会社、そして入居者はどのような印象だろうか。ほとんどのオーナーからすると、管理を任せている不動産会社は、「相談ができ、頼れる存在」であるが、なかにはそうではないケースもある。

とあるオーナーは、こんな話をしていた。

「とにかく管理会社からの連絡がほとんどない。定期巡回をしているそうだが、久しぶりに自分の物件を実際見に行くと、とても驚いた。共有部にはゴミが散乱し、廊下も枯葉などが溜まっていた。空室が多くて、リーシングをなんとかして欲しいが、ずっと連絡がなく、たまにあったとしても値下げの話ばかり」

ちなみに実際にポータルサイトなどを見ても、その物件の空室は他社も含めて広告掲載すらされていなかった。こうした不信感が溜まってしまうのも仕方ない。

また入居者に対して、不信感を募らせるオーナーもいる。とあるワンルームのオーナーは、管理会社から単身者の申し込みがあり、それを承諾した。しかし、実際は2人入居。そして、ペットを飼育しており、騒音クレームなどが近隣住民から発生していた。こうなると、その他の入居者に対しても疑念の目を向けてしまうのは、致し方ないかもしれない。

繰り返すが、オーナーと管理会社、そして入居者との関係性は独特である。多くの不動産会社ではこのあたりの関係性に非常に気を遣っているだろうが、一度その関係性を軽視したために、関係が崩れてしまうと、事業として機能することができなくなってしまうこともある。

では、関係性を良好に保っている不動産会社は、どのような取り組みをしているのだろうか?

共通して言えることは、とにかくオーナーと管理会社のコミュニケーション量が多いことだ。管理会社は相談や報告をマメに行い、賃貸経営のパートナーとしてしっかりオーナーをサポートする。現実的に電話や訪問が難しい場合は、かなり詳細な管理レポートでコミュニケーションを担保している。

さらに言えば、こうした不動産会社はかなり高い確率で売上、利益とも成長している。やはりオーナーからの売却相談などを定期的に受けているのだろう。
オーナーからすると入居者というのは、「目に見えない存在」である。不安に覚えることも多いだろう。しかししっかりとした管理会社は、彼らの「目」となり、彼らの賃貸経営をサポートする。

良好な関係性は、お互いにとっても有益でしかないのだ。

改めて自社とオーナーとの関係性、そしてコミュニケーション方法を見直してみても良いかもしれない。

 
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