画像=PIXTA

3月のこの時期、賃貸仲介の現場は、繁忙期真っ只中である。一部、3月中旬になると反響も落ち着いたりもするが、全体的には、法人異動のニーズや最後の学生の部屋探しニーズなどがあり、まだもうひと山、忙しい時期が訪れる。現場では、この時期で一年間の結果が確定するため、最後の上乗せをするために、店舗一丸となって必死に営業活動を行う。

しかし、いっぽうで会社の経営陣、幹部が検討していることは、4月以降の人員体制の問題である。

大手に限らず多くの不動産会社が、4月頃に人事異動を行う。

異動には、いくつかのパターンがあり、単純に店舗から店舗の異動もあれば、仲介業務から賃貸管理業務、開発業務への部署異動もある。この3月中旬の時期は、繁忙期でありながら、こうした人事異動の件を内示する時期でもある。

私にも経験があるが、異動の内示を伝えるのは、なかなか気が重い仕事である。「嫌な顔をされたら」、「いきなり退職の意向を伝えられたら」などとマイナスのイメージがつき纏ってしまう(勿論、このようなネガティヴ思考ではないマネージャも多くいらっしゃる)。ただ、伝えられるほうも、伝えるほうもそれなりに考えさせられる事案であることは、間違いないだろう。

とはいえ、重要なことは、実際に異動した後で、成果が出るかどうかだ。異動後、想像以上に成果を発揮するメンバーもいれば、期待を込めて異動させたが、良い結果をだすことができないメンバーもいる。今回は実際に店舗異動、部署異動をした際に、気をつけなければいけないこと、そして成果を出すために必要なことをそれぞれまとめてみたい。

1.店舗間の異動の際に気をつけること

・店舗の独自のルールを理解する

まず、店舗の異動で気をつけないことのひとつとして、「店舗のルールをいち早く理解する」ことである。今では多くの仲介会社が、業務を標準化するために、複数店舗でも対応できる均一のルールを策定している。しかし、それでも多くの「店舗独自のルール」というものがある。出社後のルールや、報告ルールなど細かい独自ルールがある仲介店舗はとても多い。

正直、異動後すぐに「以前の店舗では、こうだった」と言われるのは、既存メンバーからすると、とても印象が悪い。郷に入れば郷に従え、が基本である。異動先のルールを理解し、そして業務をこなし、周りのメンバーと打ち解けた後で、初めてルールの改変の提案などを行うことが得策だろう。

・とにかくエリアを頭に叩き込む

距離が近い店舗への異動であれば、そこまで問題はないかもしれないが、自分が知らない土地やエリアに異動した際は、とにかく「異動したエリアの知識」を頭に叩き込む必要がある。
興味深いところだが、全くの無知のエリアに異動したメンバーで、すぐに好成績をおさめていたメンバー全てが、この「エリアの知識を頭に入れる」ということを異動後、優先していた。また彼ら・彼女らは、業務時間以外でも、異動後しばらくは、商圏エリアを歩き回ったり、車で周辺を調査したりしていた。これも共通点のひとつである。不動産会社の社員にとってエリアや相場の知識は、必須の知識である。異動したあと、この知識取得をおざなりにしてしまうメンバーが、実際にかなり多いのも事実だ。

・顧客の特徴を把握し分析をする

仲介会社では、それぞれの店舗によって顧客の特徴が異なる。顧客の特徴が異なると、営業方法も若干の修正が必要になる。異動したメンバーは、エリアの顧客の特徴をしっかりと把握し、分析をしなければいけない。顧客の優先順位や経済状況、性格的な特徴など、エリアに対する考え方などを理解するのと、しないのとでは成果は異なる。このあたりもしっかりと把握する必要があるだろう。

2.部署間の異動で気をつけること

・業務の全体像をいち早く把握する

仲介業から管理業や開発業に異動すると、その業務対応の違いに驚くことも多い。その時に課せられた業務に対応することで、手がいっぱいになる可能性が高いが、それでも全体の業務を把握することで、いち早くその部署の業務を理解することができる。もしこうした全体業務を把握するのが難しいと感じた場合は、思い切って同僚や先輩に教えてもらう時間を作ってもらっても良いだろう。

・時間軸の見直し

上記を理解したうえで、業務自体の時間軸を理解することも重要だ。たとえば、賃貸仲介業務であれば、顧客とのコミュニケーションは、反響を獲得し、引渡しまでおよそ2週間程度である。しかし、開発業になると、半年や1年程度は普通に時間を要する。まだ、管理業務になると、顧客とのコミュニケーションは、「顧客が入居している期間」、また物件オーナーとのコミュニケーションは、「物件管理をしている期間」になる。

このあたりの時間軸の感覚をいち早く掴むことで、業務に対する取り組み方も変わっていく。このあたりの感覚を掴むのが上手いメンバーは、異動後も違和感なく成果を出している傾向が高いように感じる。

異動してしばらくは、これまでの業務との違いに戸惑うことも多いかもしれない。是非、上記を参考にして頂ければ幸いだ。

 
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