賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。

今回は、不動産会社の組織に変化が起きる共通のきっかけについて紹介します。

画像=PIXTA

数カ月前、とある不動産会社の社長と数年ぶりに会いお話しを聞くと、その会社の組織の変貌ぶりに驚かされた。以前までは、離職率が高く、なかなか人材が定着しなかったその会社は、今や離職率も大幅に引き下げられ、組織全体のモチベーションも高くなっているそうだ。

別の不動産会社の店長に数年ぶりにお伺いした際にも驚くことがあった。以前は、その会社の雰囲気は、決して良い雰囲気とはいえなかった。まるで、社内間の空気の重さが、店舗内全体を支配していたような印象だった。しかし、数年ぶりにお伺いしたその店舗は、とにかく明るく、活気があった。これまでとは全く異なる空気感だった。

逆のパターンもある。以前はとてもモチベーションが高く、社内の雰囲気も活気づいていた印象だった不動産会社に訪問すると、社内がどことなく暗く、スタッフも元気がなくなっていた。

組織というものは不思議なもので、まるで生き物のようだ。これまで元気に生き生きと動いていた動物が、ある日、急に元気をなくし、生気をなくす。その状態に近い。もちろん、その逆もしかりだ。

私自身、これまで多くの不動産会社様のサポートをしていると、不動産会社各社の組織モチベーションの変化に驚くことが多々ある。

ちなみに、複数社の不動産会社のサポートをしていると、不動産会社の組織モチベーションの変化は、共通のキッカケが原因で変化することが多い。今回は、この組織モチベーションが起こりうる事例をいくつか紹介してみたい。

中途採用方針から新卒採用方針への変化

これは、良い事例のひとつだが、これまで中途採用をベースに採用活動を行っていた不動産会社が新卒採用に切り替えたタイミングで、会社の雰囲気は大きく変わる。新卒採用と育成を行うことで、既存社員の意識は向上し、組織が活性化する可能性が高くなるのだ。

不動産会社の中途採用は、やはり経験者の採用が多い。即戦力としての採用なので、会社の売上に早い段階から直結する。一方新卒は、当たり前のことだが、すぐには売上を立てることはできない。採用の手間も育成のコストも、それなりに発生することは間違いない。新卒採用に切り替えたために、一時的に売上が下がってしまう不動産会社は相当多いだろう。また、この採用・育成コストのために、なかなか新卒採用に踏み切れない不動産会社も多く存在している。しかし、それでも「組織モチベーション」という観点では、プラスに働く傾向が強い印象だ。

評価制度の変更

これまで定量的な評価(売上重視、ノルマ重視)から、定性的な評価制度(貢献度)に変更する。その逆もしかりだ。これは、組織に良い変化も悪い変化ももたらす。
定量評価から定性評価に変更することで、売上を上げ、歩合を稼いでいたスタッフのモチベーションは下がり、離職率は上がる。しかし、組織の貢献度が高いスタッフや周りと調和の取れるスタッフは、会社に残っていく。私自身も定量的な評価から定性評価に変更したことで、組織の雰囲気が大きく変化した事例をいくつも見てきた。一時的には、既存社員の離脱が増加するので、それに耐えうる組織力が必要にはなる。

その反対に、定性評価から定量評価に変更した組織も見てきた。創業フェーズから拡大フェーズに入る不動産会社に多く見られたケースだ。「なあなあ」の関係ではなく、しっかりと実績を見ていこうという組織の表れだ。これにより、強い組織になっていった不動産会社もたくさんあるが、一方で、離職率が高くなり、事業の存続が難しくなったケースも見てきた。
評価制度ひとつで、不動産会社の組織は大きく変化する。重要なことは、制度の変更の「タイミング」と、「準備」なのかもしれない。

代表の人間関係の変化

会社の代表が、プライベート・仕事で付き合う人々の変化も組織に変化をもたらすように感じる。シンプルにいえば、会社の代表の友人や付き合う人が「実直で真面目」な人々の場合、その組織はどことなく「締まっている」印象を受ける。しかし、友人や付き合う人々が「いい加減で、不真面目」な人ばかりになると、代表もその人たちに流されてしまう。そうすると、組織もどことなく怠惰な空気感になっていく。
社内の幹部陣でも、社長の人付き合いに物申せる幹部はほぼいないだろう。しかし、現実的に組織に影響を及ぼす可能性は、かなり高いことも事実だ。

中途入社の幹部社員

ある程度、組織が大きくなってきてから入社する幹部社員の存在もとても組織に影響を与える。よくある話だが、中途の幹部社員がジョインしたことで、売上・利益は上がったが、組織の雰囲気が悪くなってしまうことも多い。もちろん、継続的に売上・利益が上がれば良いが、その前に組織の雰囲気が悪くなり、組織自体が崩壊することも多々ある。また、中途幹部社員が入社した後どことなく「ヌルい空気」になってしまうこともある。
当然、幹部社員の活躍によって、組織が一気に活性化することもある。こうした結果は、なかなか予測できない。期待を込めて入社してもらっても、上手くいかないケースも多い。

以上のように、組織の転換点は多く存在している。繰り返すが、組織というのは、とても脆いものだ。しかし、組織が変革していくポイントは、意外と共通点が多いことも事実である。是非、このコラムが何らかのきっかけになって頂ければ嬉しい。

 
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