「相続税がかからようにする最善の方法はなにか」。2015年に相続税法が改正されると、メディアやインターネットの記事でも各所で聞かれるようになりました。資産を有している将来の被相続人が元気なうちに、資産を子世代に移していくのが「贈与」です。そのなかで代表的なものが、「暦年贈与」と呼ばれる方法です。


1、暦年贈与とは?


暦年贈与とは、毎年上限110万円の贈与税基礎控除を活用する方法です。贈与税は税率10%-55%と資産額に応じて税率が高くなっていくのですが、毎年110万円までは「基礎控除」として非課税にすることができます。暦年課税とは、この贈与税の非課税制度を上手に活用し、コツコツと「毎年最大110万円ずつ」贈与をする方法です。贈与を繰り返すことで将来の相続税を減らそう、とする節税対策を指します。




2、あからさまな暦年贈与は課税の対象になることも


暦年贈与は、今年110万円をフルに贈与したとしても、翌年には改めて110万円が「あらたな非課税枠」として付与されます。非課税枠だけを活用するとしても、5年で550万円、10年だと1,100万円。ただし、基礎控除は110万円以下を非課税にする制度であって、分割することを勧める制度ではありません。暦年贈与を毎年繰り返し、本来は贈与税のかかる多額の資産だったにも関わらず、110万円ごとに区切って贈与していた、と見なされると、追加で贈与税を納めなくてはならない、「連年贈与」に該当する可能性があります。


つまり、「本来1000万で贈与税課税に該当する資産だったにも関わらず、110万円に分割することで贈与税を回避した」と判断され、真面目に贈与税を支払っている人と公平性が保てないということです。連年贈与に指摘されないためには、いくつかの方法があります。


   贈与するごとに「贈与契約書」を作成すること(毎年〇〇万円を贈与、という形式にしない)。贈与契約書には双方の署名捺印を忘れない(同意であることを示す)。

   毎年110万円ではなく、100万円や105万円など、「金額の異なる贈与」とする。

   贈与を受けたものが、その財産を管理して、自由に処分できるようにする

連年贈与として見なされると、相続・贈与の対策としてとても有効な非課税枠が意味をなさなくなり、根本的な相続対策の見直しが発生してしまいます。注意するようにしましょう。

ただ、このような公開情報は当然、税務署も目にしています。節税が「脱税」にならないよう。税金を納めることは国民の義務です。悪意をもった税金逃れの分割をしないよう気をつけたいところですね。

 
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