不動産の相続を考えるにあたり、「遺言書を書いたらいいよ」という人と、「エンディングノートを書いたらいいよ」という人がいます。どちらも生前に、自分が亡くなった後に遺された家族に何を遺すのか、どのように配分するのかがポイントになりますが、両者には大きなん違いがあります。それは、「法的拘束力があるかどうか」です。


1、遺言書とエンディングノートの大きな違い


遺言書には「法的拘束力」があります。一方でエンディングノートには「法的拘束力」がありません。ここが両者の唯一かつ大きな違いです。


たとえば被相続人となる親が、長男に対して「実家を相続させる」と決めたとします。遺言書に「〇〇は実家(住所・東京都世田谷区~~・・・)を△△に相続させる」と書くことにしました。遺言は自筆で記す自筆証書遺言(現状パソコンによる作成は不可だが、今後の相続税法改正で対象となる見込み)と、公証役場に赴いて証人のもとで作成する公正証書遺言の二通りです。


遺言書のなかにも財産権に言及する部分と、「私が死んでも兄弟みんな仲良くするんだよ」といったメッセージ(遺言の世界では、これを付帯事項といいます)の部分があります。このうち財産権にあたる部分は、相続において家庭裁判所の検認のうえで遺言として認められ、財産分配の基準となります。エンディングノートはこのうち付帯事項を中心として、財産権以外の部分に焦点を当てたものです。


すなわち、エンディングノートには法的拘束力はありません。エンディングノートに実家を相続と書いても、実際の相続によって意思決定が決まることはありません。遺言がない相続として、法定相続人の話し合いか、法律にもとづく分割協議となります。




2、なぜ「エンディングノート」が生まれたのか


それではなぜ「エンディングノート」が生まれたのでしょうか。遺言はとても大切なものですが、一般の人たちに浸透しているか、と問われると否定的な部分がありました。「必要なものだとはわかってはいるけど敷居が高い」という感想も多く聞かれました。そこで、遺言書ほど敷居が高くはないけれど、遺言書に繋げる方法のひとつとして提唱されたものがエンディングノートです。


繰り返しになりますがエンディングノートには法的拘束力がありません。ただ、遺言書の前段階で資産共有をすることによって、遺言がなくても相続がトラブルを起こすことによる「争族」を避ける意味合いがあります。


2015年に相続税法が改正されて基礎控除と法定相続人ひとりあたりの控除額が改訂になりました。これを受け、相続をめぐる環境が大きく変わっています。今後も、遺言書とエンディングノート、そして「それらの前段階のサービス」が注目を浴びて、相続と「争族」となることを解決する様々な視点が誕生することに期待です。

 
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