あるセミナーにて聞いたが、日本の不動産関連市場額は約39兆円といわれています。そのうち、なんと新築が9割で、中古は1割程度だといいます。これは最近のみならず、数十年も前から「語り継がれている」ことです。この日本の住宅市場における「新築寄り」の傾向はなぜなのだろうと考えてみました。
1、住宅は「更地」に建てるもの
その理由のひとつは戦後日本において「ベッドタウン」が形成された背景にあると思います。戦後、都市部の拡大において「鉄道網の伸長」は欠かせないものでした。東京でいえば西武鉄道や東急など、いくつかの資本力のある会社が舵取りをして、それまで田園だった地域に急激な「宅地化」をもたらしていきました。
非市街地だったところに住宅や周辺施設を建築するのは、まさに「新築」になります。急激な宅地拡大によって住宅供給はとどまるところを知らず、受け手となる購入者も「せっかく新築に十分な供給力があるのなら、別に中古を買う必要はない」となるのは必然でした。
また、中古物件の技術力も新築寄りを後押しする理由となっていました。この技術力が、最近は著しく上昇してきます。それは「リノベーション」という技術の登場です。
2、「リフォーム」と「リノベーション」
不動産の世界には「リフォーム」と「リノベーション」という言葉があります。どちらも日本語訳をすると「改修」となるものの、ニュアンスとしてリフォームは故障した部分の改修であるのに対して、リノベーションは柱や梁のみをそのままにして全面的に建物を作り変える工法を指します。リノベーションの方が建築費こそかかりますが、新築と比較すると格安に抑えられるため、ここ数年リノベーションは不動産業界、建築業界の注目の的となってきました。
市街地拡大に限界が見えていることもあり、最近はこの国の新築寄り、多少より戻してリノベーションが高い評価を得ているようです。10年後には、記事の頭でお伝えした「新築9割、中古1割」という基準も変化することでしょう。
ひとつ注意すべきは、「リノベーション」と中古は別々ではないか、との指摘があることです。中古・・というと、どうしてもマイナスイメージが残ります。そのため、将来は「新築」「リノベ(リノベーション)」「中古」といった三段階に分かれるかもしれません。
今後、購買層から見た不動産市場は果たしてどうなっていくのか。興味を持ってウォッチしていきたいところです。