東京など大都市に出て数十年。すっかり生活の基盤を築いた頃に、親からの相続によって「実家をそうするのか」という対応に迫られる。FPにはこのような相談が舞い込みます。ただ、相続直後に実家をどうするか考えても、実は選択肢は広くはありません


「実家の売買」については、何年も前から少しずつ準備することが最大の対策になります。では、どのような準備を進めると良いのでしょうか。




1、誰が相続するか目途をつけておく


最も大切なのは、「誰が相続するか目途をつけておく」ことです。相続が迫って急に売却しようと思っても、そこから値付けでは購入者どころか、売却する体制も整いません。そこで親世代が元気なうちから、「誰が相続するか目途をつけておく」ことが相続対策において大切です。もちろん相続する実家は「資産」のため、配分されない他の兄弟には等分の現預金に合わせて目途をつけておくことが争族(あらそうぞく)回避のポイントです。


ここで気をつけたいのは、不動産の名義を複数の兄弟の「共有名義」としないことです。相続時は仲の良い兄弟でも、不動産の売却やリフォームのタイミングに際して意見が割れるケースも多くあります。増してや血の繋がった兄弟だけではなく、それぞれの配偶者を協議に加えると、船頭が多くまとまらない可能性も高くなってしまいます。


なお、対策としては生前のうちに「贈与」もお勧めです。ご主人から奥様への贈与をする場合は、結婚20年以上で実家(自宅)の評価額2,000万円まで非課税となる特例もあります。贈与時は1人110万円までの基礎控除も合わせて適用できるため、実質2,110万円までが非課税枠となります。


2、相続後の「処置」において方向性を定めておく


実家の「行先」を決めた後は、その「処置」についても方向性を決めていくことが大切。売却するのか、居住用としてリフォームとするのか。管理が可能であれば注目されている「民泊」というタイムリーな方法もあります。


この方向性に関しては、実家資産を承継する「特定の相続人」だけではなく、相続に関わる一家全員で決めることをお勧めします。1人に負担感が増すことが避けたいところであるうえ、実家は皆が育った思い出の場所。「僕は売却して欲しくなかったのに」という勘定のしこりは、子世代に思わぬしこりを生みかねません。リフォームをするにしても、民泊にも費用がかかるため、この部分を特定の相続人が負担するのも反対意見が生まれやすいでしょう。

いずれにしてもまとまった時間が必要な「実家の売買」。様々な選択肢を分析して、対策を進めたい問題です。

 
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