相続対策として賃貸住宅を建てたものの、所得税に悩む方がたくさんおられます。何の収益も生み出さなかった更地ですが、賃貸住宅を建てたことによって、毎月家賃収入が入ってくることになります。家賃収入には当然所得税が課税されます。節税のはずが、かえって税金の支払いに頭を悩ませることになってしまっては本末転倒です。そこで、「不動産管理会社を設立しませんか。」という話しが建設会社や税理士から提案されることになります。なぜ、不動産管理会社が節税につながるのでしょうか。
 例えば、Aさんがアパートを1棟所有しているとしましょう。家賃収入は年間3000万円。ここから固定資産税や減価償却費などの経費を差し引いた1000万円に対し、所得税や住民税を毎年300万円支払っています。そこで、Aさんは不動産管理法人を設立し、その法人にアパートを売却することにしました。
 
 アパートは法人の所有となったことで、Aさんに入ってきた家賃収入3000万円は法人が受け取ることになります。固定資産税や減価償却費などは法人設立前と変わりませんが、法人はAさんやその家族に役員報酬を支払うことになります。例えば、役員報酬が500万円なら法人の所得は500万円になります。法人に対しては法人税が課税され、Aさんや家族に対しては所得税が課税されることになりますが、それでも収益物件を法人で所有することで、Aさん一人に課されていた所得税を分散することで、節税につながります。
 単純に節税だけが法人設立のメリットではありません。
・将来予想される相続の納税資金を役員報酬として相続人に移転できる
・建物を未収債権として、毎年分割して贈与できる
・相続の際、退職金の非課税制度を利用できるようになる
こうしたメリットを享受することができます。
 しかし、デメリットもあります。
法人設立には登録免許税が20万円必要となるほか、登記を司法書士に依頼すれば手数料も必要になります。法人に建物を売却する際には建物の固定資産税評価額の3〜4%が不動産所得税(減免措置が受けられる場合あり)として、2%が登録免許税として課税されます。固定資産税評価額が1億円なら、500万円〜600万円が必要になりますから、決して小さな額ではありません。また、法人税の申告は個人の申告よりも複雑になることから、税理士に申告を依頼することが一般的です。こうした費用も頭に入れておかねばなりません。
 法人を設立すれば単純に節税できるというわけではありません。メリットとデメリットを比較する必要があります。一般的には年間の家賃収入が1500万円あたりが損益分岐点と言われています。

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ