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国税不服審判所の判断

国税不服審判所は、本件調査担当職員らは「請求人に対して、平成27年5月15日から平成28年5月30日までの約1年間にわたり、継続的に、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨説明するとともに、帳簿等の提示を求めたが、請求人は、本件調査担当職員らの求めに違法な点はなく、これに応じ難いとする合理的理由も格別なかったにもかかわらず、原処分に至るまでそれらの提示を拒み続けたことが認められる。」とした上で「請求人が、所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たって適時に帳簿等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を保存しない場合に当たるというべきであり、帳簿等の保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があることをうかがわせる事実も見当たらないことからすれば、同項ただし書に該当する事情は認められないから、消費税法第30条第1項の規定は適用されず、仕入税額控除の適用は認められない。」としました。

平たく言えば「帳簿等を提示しないあんたが悪いんだよ」ということかもしれませんね。国税不服審判所はさらに続けます。

請求人の「再調査の請求に係る調査において本件領収書等を提示したのであるから、それらに基づき算出された消費税額については、仕入税額控除の適用が認められるべきである」という主張については「請求人は、本件調査担当職員らから原処分調査において適法に帳簿等の提示を求められ、これに応じ難いとする合理的理由も格別なかったにもかかわらず、それらの提示を拒み続けたことが認められる。

そうすると、請求人が、原処分調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても、税務職員による検査に当たって適時に帳簿等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を保存しない場合に当たり、請求人に同項ただし書に該当する事情も認められないから、消費税法第30条第1項の規定は適用されず、仕入税額控除の適用は認められない。」とし税務署の主張を全面的に認めました。

もう手遅れというわけですね。

まとめ

このように税務調査に協力しなかったことで、本来の何倍もの消費税等を納めることを強いられるのは少し「意地悪」なやり方のような気もします。しかし、一方では調査担当職員は約1年間に渡り繰り返し説明をしていますし、何より消費税法上は全く問題がないのです。

実は、税務調査に非協力的な者への合法的な「意地悪」の方法は、他にも複数存在しています。だから、まずは求められた資料をきちんと提示し、聞かれた質問に対しても正面から答える、その上で、法的に正しいと確信することは堂々と主張する、何事にも、フェアであることが最も重要なことなのです。

その他の「意地悪」については、また別の機会にご紹介しましょう。

 
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