評価は賛否両論となったプレミアム・フライデー

DREAMS COME TRUEのヒット曲に「決戦は金曜日」という楽曲がありますが、今年2月からは「商戦は金曜日」といえる働きかけが本格スタートしました。

その名は「プレミアム・フライデー」―― 低迷する個人消費を喚起し、同時に安倍政権が掲げる「働き方改革」にもプラスの影響が及ぶよう、毎月末の金曜日には午後3時に退社するよう促し、“アフター3”で飲食や買い物、趣味や旅行に興じてもらおうという取り組みです。

そして、2月24日(金)に初めてのプレミアム・フライデーが実施されました。各種報道を見ていると評価は賛否両論で、きちんと計画を立てて有効利用する人がいる一方、知らなかったという人も少なからずいました。企業の対応も様々で、この取り組みに賛同し、ロゴマークを申請した企業・団体数は2月末現在、4855となっています。

仕事柄、不動産業に関わる者として、プレミアム・フライデーが日本の住宅市場にどのようなインパクトを与えるか、その影響度が気になっています。ただ残念ながら、その効果は限定的と個人的には分析しています。極めて軽微と考えられます。一体なぜ、そう思えるのか?―― 以下、私なりの考えをご説明します。

来場客が増える週末の準備に追われ、午後3時退社は困難を極める

今回、マスコミで大きく取り上げられていたのが大和ハウス工業の対応です。同社では当日、平時より1時間早い午前8時始業とし、午後は「午後休」(半日有給)として正午(午後0時)に終業としました。午前中の4時間だけ仕事をし、午後は完全な休みとしたのです。

もちろん、住宅展示場に勤務する社員も同様です。他の住宅メーカーが午後もモデルハウスをオープンするなか、大和ハウスだけが「午後休」でした。かなり勇気のいる決断だったと思います。

私自身、独立する前は不動産会社で営業マンをしていましたので、来場者が増える週末の重要性は強く認識しています。その前日となる金曜日は顧客へ来場を促す電話をかけたり、チラシをポスティングするなどの集客業務に追われます。身内に不幸でもない限り、金曜日は残業するのが当たり前でした。

大和ハウス工業がマスコミに取り上げられたのも、その対応が業界の想定外だったからに違いありません。大手の不動産会社で午後3時に全社員が退社したというニュースはまったく目にしませんでした。週末が繁忙期となる不動産業界では、プレミアム・フライデーには賛同しにくいのです。

余裕時間は趣味や遊びに使いたい マイホーム探しは二の次

さらに、金曜日の午後を利用してモデルルームや住宅展示場に足を運ぼうという人(マイホーム検討者)が増えるかといえば、それも期待しにくいのが現実です。

博報堂行動デザイン研究所が行ったインターネット調査(2016年10月時点)によると、増えた可処分時間の活用方法(期待される効果)は以下のようになりました。

・第1位:早く家に帰れる
・第2位:ストレスが発散できる
・第3位:優雅な気持ちになれる
・第4位:買い物に時間をかけられるようになる
・第5位:今までしたことがないことに挑戦する機会ができる
・第6位:食事や調理に時間をかけられるようになる
・第7位:行ったことがない土地に出かけられるようになる

この結果から類推する限り、「ちょっとモデルハウスに立ち寄ってみようか」という気持ちになる人は皆無に等しい印象です。気分が開放されれば趣味や遊びに思考は向かうわけで、マイホーム探しには結びつきそうにありません。

3月以降、プレミアム・フライデーが浸透していけば、様子は変わるかもしれません。しかし現状、住宅市場の活性化にはつながらないというのが私の個人的な見解です。

 
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