東京都心部を中心に、分譲マンション価格は独歩高の様相 

「失われた15年」と揶揄(やゆ)されるほど、今もってデフレ経済から完全脱却できない日本経済。日本銀行による大胆な金融緩和により、株価の上昇や円安による企業業績の改善は見られるものの、いまだ消費者物価はゼロ%近傍を推移しており、政府からの「デフレ脱却宣言」は、当面、期待できそうにありません。日銀は2016年度の物価見通しをマイナス0.2%と予想しています。

にもかかわらず、東京都心部を中心に分譲マンションの販売価格は上昇傾向にあります。伸び悩む物価や実質賃金を尻目に、マンション価格だけは独歩高の様相です。アベノミクスにより誘発されたインフレ期待に後押しされ、近年、市場の需給バランスを反映しない“ゆがんだ”マーケットが形成されています。

その結果、「無理してでも購入する人」「様子見に転じる人」「完全に購入を断念する人」と、マンション検討者の行く末は三者三様です。マンション価格に過敏になり、完全に振り回されている格好です。

分譲価格には「敏感」でも、管理費の金額には「鈍感」という現実

しかし一方、いったん分譲マンションを購入してしまうと、“鈍感”になる傾向が見受けられます。あれだけマンション価格には神経質だったにもかかわらず、毎月支払う管理費や修繕積立金には鈍感な人が少なくありません。

マンションを購入すれば管理費を支払うのが当然であり、誰も疑う人はいません。ただ、その金額が適正かどうか疑問を抱く人も皆無に等しく、管理会社に言われるままに支払っているのが現実です。

考えられる理由は大きく2つあり、(1)管理に対する無関心と、(2)管理費相場に関する情報不足 ―― が挙げられます。

多くは事業主の系列会社が管理会社となってマンション管理を受託するため、本来は管理組合が決めなければならない業務委託内容があらかじめセッティング(お膳立て)されており、結果的に管理費も管理会社の提案通りに承認されてしまいます。

また、単にマンション管理といっても、その業務範囲は幅広く、マンションの規模によっても必要経費(=管理会社への業務委託内容)は異なるため、単純に管理費が「高い」のか「安い」のか比較は困難です。管理費相場は、あるようでないのが現実なのです。

競争原理を活用しつつ、管理会社との業務委託内容を見直そう

では、管理会社に言われるままに支払い続けなければならないのか?―― いえ、決してそのようなことはありません。管理費の削減は可能です。

1つは管理会社への業務委託内容を見直すことで、支出を抑えられます。たとえば常駐管理する管理員を週5日の通勤管理に変更し、その分、防犯カメラの導入によって機械管理を併用します。やはり人件費はコストが高いので、管理形態を見直すことで高い効果が期待できます。この方法であれば管理の「質」を落とさずに、コストダウンが可能となります。

さらに2番目として“競争原理”を取り入れる方法も有効です。たとえば、エレベーターの保守点検業者や共用部分の清掃員など、すべて管理会社に一任(=丸投げ)している業務の委託先を、新たに管理組合が自分たちで探し出し、安く引き受けてくれる業者に変更するのです。

しかも、1社ではなく複数社から相見積もりを取ることで競争原理が働き、さらなるコストダウンが期待できます。管理組合と各業者が、直接、業務委託契約を締結するのです。わざわざ管理会社の顔色をうかがう必要はありません。理事会が先導役となり、主体性をもって取り組めば管理費は削減可能です。

「ノウハウ」と「実行力」がモノを言うわけです。ぜひとも実践してみてください。

 
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