今回は、現在のところ実施されていませんが、今年5月に導入される予定のいわゆる相続証明書の話。

3月下旬に新聞等で、相続手続きを楽に進めるために法務局が被相続人(亡くなった人)と相続人全員(相続財産を引き継ぐことができる人)との関係(夫婦、親子の関係など)を示した証明書を交付するとの報道がなされました。

なぜ、このことが各新聞等で報道されているかというと、例えば、預貯金口座の名義を被相続人からある相続人へと変更する場合、通常、被相続人と相続人との関係が判る証明書{2人の関係が記載されている戸籍事項証明書(戸籍謄本や除籍謄本)(※除籍謄本とは、その戸籍に記載されている人物が全員亡くなるか結婚などにより別の戸籍に移ってしまい誰もいなくなってしまった戸籍のことをいいます)}と相続人の人数がわかる証明書(被相続人が産まれてから亡くなるまでの戸籍事項証明書)が必要になります。

そして、これらの戸籍事項証明書は、名義変更を行う際や不動産を売却したりする際にその都度必要になってきます。現状では、名義変更等の際にこれらの証明書の原本を提示してコピーを渡せば良いケースもありますが、原本を渡す必要があるケースもあります。

つまり、これらの戸籍事項証明書等を1回揃えただけでは足りず、必要に応じて何回か揃えなければならないのです。

 それを今回の新制度では、手続きに必要な戸籍事項証明書等を1回揃えたら、法務局でその証明書の写しを交付して、その写しを提示(提出)することで、その都度の名義変更等を行えるようにしようとするものです。新聞等の報道のみの情報なので、このコラムを執筆している平成29年3月段階では詳細な情報は判りません。

また、この証明書の交付により相続手続き実務のなかでどの程度実効性があるか一抹の不安を感じます。特に銀行等の金融機関では、相続に伴う名義変更などの手続きに関して独自のルールを設けており、あくまでも推測ですが、この新制度に伴う証明書を採用しないということも考えられます。

しかし、この証明書交付制度が利用されることで、これまでの書類を集める費用と時間などを節約することができることも確かです。この制度が相続手続きを進める上でメリットの高いものになることを期待しています。

 
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