親が亡くなったことにより相続が開始され土地を兄弟で共有することがあります。その後、年月が経過し兄弟も高齢化したり、あるいは更に相続が発生して兄弟の子孫(土地を元々所有していた親からすると孫やひ孫)に受け継がれていることもあります。

しかし、そのような場合、既に共有している子孫どうしお互いの存在は知っていても交流が途絶えていたり、あるいは存在すら知らないケースもあります。

そもそも、共有している人がその不動産を売却しようとした場合、共有不動産の売却には全員の同意が必要になるのですが、前記のような状態になっている場合、共有している人が誰であるかを確認し、その連絡先を調べることから始める必要があります。

しかし、不動産の登記事項証明書(いわゆる不動産謄本)で共有している人の氏名を確認しようとしても、相続登記がされていなければ、現在共有している人の氏名が記載されておらず、相続が発生する前の所有者(既に死亡している)の氏名が記載されたままであるため、そこから更に誰が相続したのかを調べなければなりません。

具体的には遡って、あるいは新しい戸籍を一つ一つ確認していきますが、この作業には時間と労力を費やします。

ようやく共有している人全員の氏名や連絡先が確認できたとしても、売却の手続きに非協力的であったり、そもそも自身が共有している事を知らず、連絡が来て初めてその事実を知る人もいます。もちろん、持ち続けても有効な利用手段が見いだせないことから賛成する人もいますし、故人となった親の残した形見的な意味合いで手放すことに反対する人もいます。

このような状況下で売却の話を進めていくことは容易ではありません。売却することに反対する人がいなかったとしても、評価額の持ち分相当額以上の金額を要求する人がいたり、書類を送っても返送してこなかったりして中断してしまうことも珍しくなく、地道に根気よく促しながら同意を得ていく作業が重要となります。また、持ち分相当額以上の金額を要求する人に対しては適切な不動産鑑定評価額を提示するなどして説得していくことになりますし、話がもめる等してしまった場合は、弁護士に交渉を依頼したり、調停の申立をするなどして裁判所を通じての話し合いも検討していかなければなりません。

このように不動産を共有すると、状況次第では売却するにも莫大な時間と労力を要することがあるという一事例でした。

 

 
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