よく「借地権を売りたい」という相談を受けます。

借地権にもいろいろ種類があって、一概には言えないのですが、ここでは、一般的な旧借地権(平成4年8月1日より前に成立した旧借地法上の借地権)について考えてみたいと思います。

まず、借地権の価格で思いつくのが路線価の借地権割合です。

これは、国税庁が財産評価基準(相続税路線価)で定める更地の価格に対する借地権価格の割合です。

相続税路線価で借地権割合を調べる方法は、こちらの記事 を参考にしていただけると幸いです。

仮に更地の価格が5千万円、借地権割合を70%だったとします。

すると、借地権価格は

5000万円 × 70%=3500万円

と計算されます。

では、3500万円で売れるかというと、なかなかそうはうまくいきません。

広告などで「借地買います」という宣伝文句を目にしますが、このような業者が借地を買い取る場合、買い取った借地や建物をそのまま使うのではなく、売りやすい形に作り変えて転売するのが一般的です。

よくあるのは、借地上に古い木造住宅が建っているケースで、この場合、古い建物のままでは買う人がいませんので、買取業者は建物を取り壊して、新らに地域の実情にあった建物に建替えて、これを「借地権付建物」として一般に売却して利益を得ます。

借地上の建物を第三者に売却する場合、地主から借地権の譲渡建物の改築契約条件の変更の承諾を得る必要がありますが、これらの承諾を得るためには、承諾料を支払うのが一般的です。

借地権の譲渡は借地権価格の10%程度、建物の改築(建替え)は更地価格の3〜5%程度で、契約条件の変更(木造などの非堅固建物から、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造の堅固建物に変更)が必要な場合は、さらに更地価格の5%程度(建替承諾手数料と合わせて10%程度)を地主に支払う必要があります。(注1)

(注1)一般的な相場。地域の取引慣行、個々の契約の内容等により金額は変わるものとお考えください。

簡単に計算してみましょう。

売却する借地が非堅固建物を目的とする契約で、借地買取業者は新たに鉄筋コンクリート造の建物を建設して売り出す計画とします。

非堅固建物から、堅固建物へと借地契約の条件が変更されますので、建替承諾料を更地価格の5%、条件変更承諾料も同じく更地価格の5%を支払うことで地主と合意したと仮定します。

① 譲渡承諾料:3500万円 × 10%=350万円(注2)

② 建替承諾料:5000万円 × 5%=250万円

③ 条件変更承諾料:5000万円 × 5%=250万円

(注2)厳密には「借地権者→買取業者」、「買取業者→賃貸マンションの買主」と、二度「譲渡承諾料」が発生しますが、1回の支払いで済むように地主と交渉するのが一般的のようです。

①+②+③=850万円

地主に支払う承諾料だけで、これだけの金額になります。

この他に、業者は自分たちの利益も確保しなくてはなりませんので、実際には最初に計算した借地権割合による価格の半額以下でしか売れないことも珍しくありません。

もちろん、買取業者に買い取ってもらうだけではなく、地主に買い取ってもらったり、地主と共同で更地にして売却するなど、もっと高く売れる可能性もあります。よくわからない場合は、不動産の専門家に相談してみるのもいいでしょう。

 
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