不動産業に従事している人であれば、不動産の歴史について知っておいた方がよいでしょう。不動産賃貸仲介業の始まり、そして発展したのはいつなのでしょうか。歴史を紐解いていくと、現代にも応用できる知識が身につくはずです。(リビンマガジンBiz編集部)

■不動産賃貸仲介の歴史

不動産賃貸仲介は、明治時代から始まります。明治に入ると、土地所有の自由が認められるようになり、不動産が個人資産になりました。それにより、江戸時代に地主の代わりに貸家の管理や地代の取り立てを生業としていた家守(やもり)が貸家の仲介を始めます。これが賃貸仲介の始まりと言われています。

そもそも1870年に建物の管理は地主がすることになり、家守の職が奪われてしまいます。そこで、移動の自由や職業選択の自由によって都市部へ流入してきた人々の住宅斡旋をおこなうようになりました。

同時期に、大規模な不動産企業が誕生しますが、この頃は、土地取引の最盛期で貸家の仲介に企業は参加していませんでした。


(画像=ニューヨーク公共図書館)

■借り手がいるのに、空室率が上がる

第一次世界大戦時は工業の発展により、都市部で急速に人々が増えました。そこで、住宅不足解消のため東京市が市営住宅建設をおこない、市自体が貸家の斡旋もおこなっていました。結果として、住宅不足は解消されつつありましたが、家賃は高いままだったため、借り手がいるにも関わらず、空室率が上がっていくという事態に陥りました。

■大企業と小規模事業者の隔たり

戦後、日本は持ち家を中心として住宅市場を発展させてきました。1955年に持ち家率は67%になりましたが、そこから少しずつ減少していきます。一方でこの数値は賃貸住宅が増加していることも意味しています。都市部へ流入してくる地方からの労働者に賃貸住宅の需要があったのです。急速な人口増加に対応するため、建築された賃貸住宅は設備面で劣悪なものが多く、また、十分な広さも確保できませんでした。3畳の部屋に11人が寝起きし、赤ん坊が圧死するという新聞報道もあったくらいです(1951年・読売新聞)。そんな状況でも、都市部での供給は十分ではありませんでした。こういった背景があり、それまで売買と賃貸、どちらも仲介していた不動産業のなかで、賃貸専門の仲介会社も現れます。

1970年当時の事業所統計によると、不動産業の事業所数が最も多いのが貸家業、いわゆる大家です。その次が仲介業です。仲介業の数は1972年で6886事業所あり、前回調査の1969年と比べて23%も増えています。賃貸仲介業を含む不動産仲介は元資金が少なくても開業できました。住宅不足下で大いに活躍したのが賃貸仲介業です。

その賃貸仲介業は当時、従業員が4人以下という小さなな会社がほとんどで、82%を占めていたといいます。大企業か小規模事業者という二極化が進んでいきます。


当時の新聞記事 (画像=リビンマガジンBiz編集部撮影)

■賃貸仲介のフランチャイズ

70年代に入ると、小規模事業者をつなぐフランチャイズビジネスが誕生していきます。不動産業界で最初のフランチャイズは、1981年に設立されたリクシルERAの前身である住通チェーンと言われています。その後も、1983年にセンチュリー21ジャパンが誕生し、1999年にアパマンショップホームメイトなど次々と賃貸仲介のフランチャイズチェーンがオープンしていきます。このフランチャイズ化によって、二極化していた不動産賃貸仲介の世界で大企業と小規模事業者の間に入る中規模の企業として確立していくようになります。

■まとめ

歴史を振り返ると、不動産賃貸仲介は江戸時代に大家をしていた家守が始めました。明治・大正時代は不動産開発が盛んで、賃貸仲介に関わる大きな会社は出現しませんでした。しかし、フランチャイズビジネスの出現で、大企業と小規模事業者の中間となる賃貸仲介専門の企業も現れてくるようにもなりました。

 
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