税理士の澤田 美智です。
今回のテーマは「賃貸アパートの空室が東京でも増えている!」です。
新築の賃貸アパートの建築が増加しています。
この増加の要因として、相続税改正による相続税増税が挙げられます。
賃貸アパートを建築すると、相続税の節税になるからです。
例えば、
土地 1億円
を所有されていたとします。そのままでは、1億円の評価額となり、相続税が
課税されてしまいます。
この土地の上に賃貸アパートを建築したら、どうなるのでしょうか。
建物 2億円で建築したとします。
建物の評価額は固定資産税評価額が相続税評価額となります。
2億円で建築した建物の固定資産税の評価額は、ほぼ60%程度です。
2億円 × 60% = 1億2,000万円
更に貸家となりますので、70%の評価となります。
1億2,000万円 × 70% = 8,400万円
これが建物の評価額となります。
土地 貸家建付地となりますので、地域によって評価額に差はありますが、
ほぼ80%程度の評価額になります。
1億円 × 80% = 8,000万円
借入金 全額借入で建築したとします。
2億円
アパート建築後の相続税評価額は
8,400万円 + 8,000万円 - 20,000円 = ▲3,600万円
なんと、マイナス評価となるんです。
1億円の評価額で相続税率が30%だとすると、3,000万円の相続税額となります。
それが、0円となり、更に▲3,600万円は他の財産との相殺となるため、
3,600万円の30%の税金 1,080万円が安くなります。
合計で
3,000万円 + 1,080万円 = 4,080万円
の節税になる、という訳です。
これだけ聞けば、「やらなきゃ損!」ということで、賃貸アパートの建築が増加
しています。(もちろん増加の原因にはほかの要素もありますが)
でも、本当にお得なんでしょうか?
落とし穴はないのでしょうか?
実は、賃貸アパートについては、新築に限っても空室率が上がっているのです。
これは、地方だけではなく、首都圏のアパートについても同じなのです。
つまり、実際の賃貸需要以上に賃貸住宅が供給されている、ということです。
考えてみれば当然ですよね。
相続税が下がる、という節税目的でアパートを建築する人が急増していますが、
人口がそれだけ増えている訳ではありませんから。
もちろん、すべての賃貸アパートの空室率が上がっているわけではありません。
立地や建物の条件によってはずっと満室の物件もあります。成功している方も
たくさんいらっしゃいます。
ただ、相続税が安くなるから、と安易に賃貸アパートを建築することは、将来
その賃貸アパートを相続により取得される方に大きな借金を負わせることになり、
空室ばかりであれば、借金を返せませんし、最悪破産に追いやることにもなりか
ねません。
賃貸アパートの建築は「投資」です。
リスクのない投資はあり得ません。
しかし、不動産投資は、最小限のリスクに抑えることのできる「投資」である、
と私は考えております。
安易な投資判断は危険ですが、慎重な投資判断のもとになされれば、こんなに
素晴らしい投資はない、と思っています。
慎重な投資判断を!