2024年2月、ショウタイム24(東京都港区)がビジネスモデル特許を取得したことを発表した。同社が手がける無人での内見サービスに関わる特許で、今後のサービス拡充における重要なポイントとなるようだ。同社・市川達也社長に詳しく聞いた。
今回特許を取得した「不動産物件内見システム」(特許7428408)は、同社が提供する「無人内見システム」の根幹となる、システムによる内見予約から、IoT機器を使った無人での物件内見覧、そして遠隔での契約手続きまでをシームレスに繋ぐというもの。
様々なメーカーから発売されているスマートロックや電子錠とシステムをAPIによって連携させる点や、物件内に設置した識別コード(QRコードなど)を読み取ることで、物件の詳細説明を可能にすること、内見後の物件申込み、重要事項説明、契約、決済までを非対面・オンラインで行える点などに特許が認められた。
「無人内見システム」の前身サービスとなる「LEASE24(リース24)」は、2019年4月リリース。当初は、賃貸業界の変革を目的に、賃貸物件を中心に展開していたが、徐々に新築注文住宅・分譲戸建ての領域にもシフトしてきた。
「2019年12月頃から、分譲戸建て向けにサービス内容を磨き上げ始めたんです。2020年4月、鉄道系の不動産会社の新築分譲物件に導入いただいたのを皮切りに、徐々にハウスメーカーでの採用が増えていった」と語るのは、ショウタイム24・市川達也社長だ。
2022年の夏以降からは、建築業界の人手不足が深刻化したことも拍車をかけ、導入のペースが一気に加速。現在では150社以上に及ぶ。
「分譲戸建ての完成在庫を抱えたくない、でも営業のマンパワーが足りない。そこで無人内見という選択肢に魅力を感じる企業が増えてきました」(市川社長)
とはいえ、すんなりとは浸透しなかった。当初は「セキュリティ面が心配」「本当に契約に繋がるのか」といった声が聞かれたという。
「無人内見は、鍵の受け渡しも何もないので、不動産会社からするとリスキーに感じるんでしょう。でも、実際にやってみると、人の目がある時よりもむしろトラブルは少ないんです。内見申込みの際には免許証での本人確認が必要ですし、物件はWebカメラで常に記録してますからね」(市川社長)
現在、同社のシステムを利用した内見予約社数は述べ7,000人を突破。その大半は分譲戸建てでの利用だ。
「ユーザーにとっても休日や夜間など、いつでも好きな時間に見学できるのが魅力のようです。年末年始の不動産会社の休みの間にユーザーが内見を済ませ、年明けに成約したといった事例もありました。このように成約増につながるケースも増えています」(市川社長)
ただ、課題がないわけではない。無人内見の後、いかに顧客との関係を作っていくか。多くの不動産会社・ハウスメーカーが直面している問題だ。
「内見が終わったタイミングですぐ電話して、『いかがでしたか?』と声をかけている会社では大きく成果が出ています。内見後の提案に繫がる確率が格段に上がります」(市川社長)
加えて、細やかな接客ができる営業担当者の育成も欠かせない。単に物件を売るだけでなく、お客様の潜在ニーズを掘り起こせるスキルが求められるという。
「無人内見では、営業担当者の役割はより専門性の高いものになっていきます。顧客に合ったプランを提案できる。顧客の悩みを聞いて的確なアドバイスができる。そんな付加価値を生み出せる人材が生き残っていくでしょう」(市川社長)
今月からは新たに中古マンションの売買に対しても「無人内見システム」を導入していく。
「リノベーション済みのいい物件があっても、『今から行くのは面倒』となりがち。でも無人内見なら、好きな時に気軽に見に行ける。中古マンションの流通を活性化させるツールになると信じています」(市川社長)
新築分譲の領域で存在感を高めつつあるが、市川社長の視座は既に次のステージに向かっている。
「まずは新築戸建てや中古マンションの無人内見を、向こう2年ぐらいをかけて広く浸透させたい。その上で、いよいよ当初の目的だった賃貸領域の無人化にも本腰を入れていきたいと思っています。賃貸業界はシステムを活用することでもっと便利になると信じています」(市川社長)