不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、マイソクの図面も簡単に作図できる「EdrawMax(エドラマックス)」を提供するワンダーシェアー(東京・千代田)の黄理華(コウ リカ)COOに話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)


ワンダーシェアー・黄理華COO(取材は2021年3月に通信環境で行った)

―ワンダーシェアー社について教えてください。

ワンダーシェアーは、2003年中国の深圳(シンセン)で誕生したソフトウェアの開発・販売会社で、世界150ヶ国で製品が利用されているグローバル企業です。現在、深圳の本社以外に、東京とカナダ・バンクーバーに支社があり、合わせて1,300人以上の従業員が働いています。日本の支社であるワンダーシェアーソフトウェアは、日本と韓国の市場開拓を担う会社として、2011年に設立されました。

当社の事業は、「クリエイティブ」「オフィス効率化」「ユーティリティ」の3つの領域で展開しています。クリエイティブ領域では、動画編集ソフトやドローソフトなどを開発・販売。ワンダーシェアーで最も売上が大きい領域でもあります。

オフィス効率化では、PDF編集ソフトや作図ソフトを、ユーティリティ領域では、スマホやPCのデータ復元・管理するツールを扱っています。

―不動産業界向けに展開しているサービスについて教えてください。

当社が提供する作図ソフト「EdrawMax(エドラマックス) 」の機能として、不動産物件チラシ(以下、マイソク)をスピード作成できるサービスをスタートしました。テンプレートに沿って、出来合いの素材をドラッグ&ドロップすれば、間取り図とマイソクが簡単に作ることができます。

「EdrawMax」 画像提供=ワンダーシェアー

2021年3月には、この「EdrawMax」のマイソク作成と、PDF編集ソフト「PDFelement」を使った重要事項説明書作成をセットにしたサービスをリリースしたところです。

もともと「EdrawMax」は、フローチャートやマインドマップ、組織図、ネットワーク構成図、間取り図、機械設計図などの作図・製図がスピーディにできるソフトウェアで、英語圏に向け2013年にリリースしました。マインドマップ創作などの目的で、学校など教育現場を中心に広がり、世界では1,000万件以上のアカウントを販売してきました。

―不動産業界向けサービスに着手したきっかけは、何だったのでしょうか?

「EdrawMax」の日本版は2020年にリリースしました。Microsoft Visioの代わりに利用することの多い「製造業」や「教育機関」をメインに利用されています。そんな中、間取り図やマイソクの作成に課題を抱えている不動産会社からのお問い合わせを予想以上に多くいただいてきました。

当社には、不動産業界出身のデザイナーが在籍しているので、彼を中心に不動産会社が作りやすい間取り図とマイソク作成の機能を追加することにしたのが始まりです。現在、中小規模の不動産会社約100社に導入いただいています。

ワンダーシェアー・黄理華COO 画像提供=ワンダーシェアー

―すでに100社導入はすごいですね。どういう点が支持されているのでしょうか。

最も喜んでいただいているのは、1度の購入でずっと使える永久ライセンスのソフトウェアであることです。最近は、月額課金モデルの製品も多く、利用期間が長くなるほど費用もかさむことから導入に積極的になれないケースもよく聞きます。その点、エドラマックスは、買い切りのうえ、価格は1アカウント2万円ほどのリーズナブルな価格に設定しているので、コストパフォーマンスの点で支持されることが多いですね。

―マイソク作成の機能面での特徴は何でしょうか。

ITリテラシーが高くなくても、誰でも手軽に作れるのが特徴です。

不動産会社へのヒアリングを重ねてリサーチを徹底し、サービス設計に活かしました。

リサーチの結果、マイソク作成はスピード勝負なので、「時間をかけたくない」、高機能でなくていいので「低コストで早く作れれば良い」というニーズが強いことが分かりました。

そこで、マイソクのテンプレートに加え、間取り図用の設備アイコンを150種類そろえました。キッチン、バス、トイレ、ドアなどの素材をドラッグ&ドロップして組み合わせれば、簡単に作成できる仕組みです。

通常、ExcelやWord、PowerPointを使って独自にマイソクを作る会社が多いのですが、テンプレートや素材をゼロから作るには素早くやっても1~2時間かかってしまいます。その分の時間が短縮できるので、作業効率が各段に上がるのがメリットですね。

また、低スペックのパソコンでも機動するので、既存PCでは使えないといった課題にも対応できます。不動産業界は必ずしもPCに明るい方が多いわけではないので、そういった方々に貢献できていると感じています。

―「EdrawMax」はマイソクに限らず、作図ソフトとして他の機能も使えるんですね。

「EdrawMax」は5万以上の素材、2000以上のテンプレートが含まれています。作図や製図だけでなく、パンフレットやチラシ、ポスターを作るドローソフトとしても使えます。

ベクターデータを採用しているので、印刷用データを作れるのも特徴ですね。マイソクだけでなく、様々な機能が一括で備わっているのが差別化ポイントになっています。

―今後の展望について教えてください。

ワンダーシェアーは、日本市場を非常に重視してマーケティングに取り組んでいます。引き続き、当社の製品が広く利用されるように尽力していきたいですね。

特に、2021年は「EdrawMax」の拡販に力を注ぐ年だと位置づけています。不動産業界に向けては、大手企業の導入を目指し、中小企業では300社の導入を目標に据えています。サービス面でも簡単に作れて生産性が向上する制作・編集ソフトとして、さらに進化させていき、多くの企業の業務効率化を支援してきたいと思います。

 
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