不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

 

今回は、マイクロモビリティのシェアリング「Luup」を提供するLuup(ループ:東京・港区)・岡井大輝社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

 

Luup・岡井大輝社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

―Luup社の事業と展開するサービスについて、教えてください。

 

私たちは、短距離移動のモビリティ(交通)インフラを創設することを使命に事業に取り組んでいます。電動小型モビリティのシェアリングサービス「Luup」を2020年5月から展開しています。現在、小型電動アシスト自転車を用いていますが、将来的には電動キックボードなどの新しいモビリティも導入予定です。

 

「Luup」は、ただ便利なシェアサイクルや利益の出るシェアサイクルを目指しているわけではありません。駅から離れた不動産の地価・価格が変わるほどのインパクトを作ることが目標です。

 

新しい物件の分譲を始めるとき、バスがどれぐらい通っているか、駅からの距離はどれくらいかといったモビリティに関する説明は必要不可欠です。しかし、東京のように交通網が発達した街であっても、駅やバスの停留所から家までのラストワンマイルの距離を埋める手段はありませんでした。

 

「Luup」は電車やバスから降りてから家までの短い距離を繋ぐモビリティサービスです。都内の物件の場合、駅やバス停から電動モビリティを使えば、ほぼ全エリアが10分圏内になります。駅から離れていても、不動産価値を「駅徒歩10分」と同等にすることができると考えています。

 

レインズで、シェアサイクル導入の有無、シェアサイクルの稼働率やオペレーションの状況などが新たな指標として重視されるくらい、不動産価値の一旦を担える世界を目指しています。

 

 

―どんなビジネスモデルを設計しているのですか。

 

シェアモビリティのユーザー利用料ではなく、シェアモビリティによって利便性が上がり、不動産や街全体の価値を上げていく方向を目指しているので、当社のサービスが起点で生まれる経済効果の一部を利益に還元するビジネスモデルを目指しています。

 

鉄道会社と同様のモデルですね。鉄道会社の決算報告資料を見ると、切符販売で大きく儲けているわけではありません。乗客の切符代は限りなく安く提供して、沿線上の不動産価値や経済効果を上げることで利潤を生み出して、自社利益に還元しています。

 

我々も、現在ユーザーから150円~200円ぐらいの利用料をいただいています。これを300円に上げる努力をするのではなく、どんどん安くすることで利用者を増やし経済活動を起こすことで何かしら周辺の利幅を得られると考えています。例えば、駅から離れた隠れ家的なホテルに電動モビリティで宿泊客が到着したら、ホテルから100円が自社に入るというような仕組みをイメージしています。

 

 

―他のシェアサイクル事業者との違いは何でしょうか。

 

現在、当社では、渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、品川区、新宿区の6エリアの一部で、200ヵ所以上のポート(シェアサイクルの設置場所)を設置しています。半径300~400メートル圏内に1ヵ所の設置を目安に、非常に高密度でのポート設置を進めています。

 

 

「Luup」のポート 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

 

一般的には、ユーザーの多いオフィスビルなどにポート設置を絞って、収益効率を上げるのがセオリーで、設置場所を増やすと利益率が落ちてしまいます。ですが、私たちが目指す不動産や街の価値向上のためには、街全体にポートを点在させる必要がある。

 

また、1ヵ所あたりの設置台数は、他社では15台ほどがメインですが、当社は5~6台と少なめです。小規模のポートが多数あることで、当社独自のアルゴリズムをもとに、新規設置や撤退、入れ替えなどのアップデートを素早くできるのがメリットになっています。

 

 

―提供している電動アシスト自転車は、かなり小型ですよね。ここも差別化になっているのではないでしょうか。

 

はい。日本最小クラスの電動アシスト自転車を自社で開発しました。キックボードの長さとほぼ同じサイズです。将来的には、電動キックボードや高齢者向けの4輪の小型モビリティにも広げて、それぞれの街の特徴や、ユーザーに適したサービスを提供していく予定です。

 

 

―「Luup」を利用しているユーザー属性について教えてください。

 

ユーザーは、年齢層だと20-30代が最も多いですね。あとは、これは予想外だったのですが、女性ユーザーが他社と比較して非常に多いです。小型タイプである「Luup」のデザイン性や、軽い乗り心地、安全を守れる速度などの機能面が、女性に支持されているのではないかと推測しています。

 

使い方としては、1回で1~2㎞の移動が多く、片道だけシェアサイクルを使うケースも結構あります。例えば、保育園に迎えに行くときはLuupで、帰りは子どもを連れてタクシーで帰宅、飲み会に行くときは、Luupでお店に向かい、帰りは電車で帰るなど、シーンに合わせて柔軟に利用いただいています。

 

 

「Luup」はアプリによって利用が可能 リビンマガジンBiz

 

 

―「不動産価値の向上」には、不動産事業との連携も重要ですよね。

 

そうですね。ポートの設置は、マンション、オフィスビル、飲食店・小売などの店舗、駐車場の4領域が同じくらいの割合なのですが、そのなかでもマンションは1番多く、私たちが力を入れていきたい領域でもあります。

 

「Luup」を導入しているオーナーさんのマンションを見に行った別のオーナーさんから「うちでも導入したい」と連絡をいただいたこともありました。ただ、全体的に、不動産オーナーにとって、当社のサービスはまだまだ認知されておらず、最初のアプローチの部分が最も難しいと感じています。

 

直接お話する機会をいただいて、シェアサイクルの放置や事故対応などの設置側の懸念点がクリアになれば、メリットが大きいと理解していただけることが多いです。設置費用や維持コストもかからないので。

 

ポート提供側には、当社から一定の報酬をお支払いしていますが、その収益目的よりも、入居者の満足度を上げることに価値を感じていただいていますね。

 

大東建託社の管理物件でのポート導入は、その一例です。今後は、入居者の満足度を定量的に測定して、「どれくらい利便性が上がったか」など可視化していきたいと思っています。

 

 

 

Luup・岡井大輝社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

 

―不動産事業者にとって、「Luup」導入の付加価値とは何だと思いますか。

 

先ほどのテナントリテンションが1つですね。入居者が利便性を感じれば、同じ物件に住み続けてもらえる理由になります。

 

そして、今後の国内の人口動態の変化を鑑みれば、都市部への人口流入は、まだ止まる気配がありません。そんななかでは、駅近物件は満室が続いていくでしょう。

 

一方、駅から離れていて苦戦している物件もあります。ですが、電動モビリティサービスとの連携があれば、駅からの距離は関係なく、自分に合った良い物件に住みたいと考える層は増えていくと思っています。

 

そこに、私たちの存在意義がありますし、大きな付加価値を生み出せるのではないかと考えています。

 

 

―今後の展望について教えてください。

 

不動産領域でさらにサービスを広げていきたいです。賃貸マンションはもちろんのこと、新築分譲マンションでも導入を進めていきたいですね。そのためにも、サービス認知向上と信用獲得に注力していく必要があるでしょう。

 

私たちのサービスは、ポート導入側のオーナーに寄り添って設計しています。例えば、ユーザーが電動サイクルを使うときに、アプリで目的地を指定する必要があるのですが、ユーザーからすれば面倒な作業だと思います。

 

それでも、サービスの安全性を確保し、オーナーからの信用を獲得するためには不可欠なことです。オーナーがサービスを信頼してくれるならば、エントランス近くに設置してくれるなど、ユーザーにとっても利便性向上につながるからです。

 

今後も、街や不動産の価値を上げるために、モビリティインフラの発展に尽力していきたいと思います。

 
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