不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。
今回は、オンラインでのチームビルディングサービス「バヅクリ」を提供するプレイライフ(東京・港区)・佐藤太一社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)


プレイライフ・佐藤太一社長 撮影=リビンマガジンBiz

―展開している事業について教えてください。

現在、法人向けにオンラインイベントを提供する事業を主力にしており、2020年7月に「バヅクリ」というサービス名でスタートしました。

コロナ禍のテレワークで、社内のコミュニケーションが減ったり、エンゲージメントが低下したりしている課題に対して、独自の体験型プログラムを通して、参加者の一体感を生み出すチームビルディングを目的にしています。

―利用企業には、どのような業種が多いのですか?

現在、トライアル契約を含めて100社に利用いただいていますが、ほとんどが大手企業ですね。業種としては、金融やメーカーが多いです。テレワーク導入中の企業や、組織の規模が大きく社内イベントを内製化するのが難しい企業などのニーズに応えています。

価格は、1回あたりで換算すると79,600円からで、複数回分のチケット制で販売しています。企業向けイベント・研修サービスとしては、おそらく最安値といえる価格帯です。

「バヅクリ」では、100種類以上のオンラインイベントを揃えていて、クライアントの希望に合わせて、最適なものを提供しています。イベントをやるたびにゼロベースでワークショップを設計するには手間がかかります。当社ではその手間が必要ないため、この価格が実現できています。

―企業向けのイベントや研修は数多くありますが、「バヅクリ」のプログラムの特徴は何でしょうか?

イベントと研修の間のような位置づけで、楽しみながら相互理解やチームワーク、気づき、学びが得られるワークショップ形式なのが特徴です。一方的なレクチャーではなく、手を動かしたり、体を動かしたり、実際に体験することを大事にしています。

「バヅクリ」でのワークショップの様子 画像提供=プレイライフ

1番人気なのが、劇団俳優による寸劇ワークショップですね。普段はなかなかできない喜怒哀楽の感情表現を思い切り行い、演じる役柄に応じてディベートをする内容になっています。 

他には、価値観を共有する図工、チームワークを醸成するフィットネス、アナウンサーによるプレゼン講座、お坊さんが教えるマインドフルネス、寿司職人による寿司握りワークショップなど、多種多様なプログラムを揃えています。

― 一般的なビジネススキルを教える研修とは一線を画しています。

企画のベースが「遊び」にあることが、独自性につながっているのだと思います。当社は、「遊び」を事業化しようと、「PLAYLIFE」という遊び体験を共有するメディア事業からスタートしました。

そこから、個人向けの遊びコミュニティ「遊部(あそぶ)」を立ち上げ、オフラインでのイベント企画・運営の実績を積んでいきました。

企業向けのイベントサービスは、コロナ前から構想して動いていたのですが、コロナ禍でテレワークになったことで、Zoomを活用したオンラインサービスへと一気に舵を切りました。

―「バヅクリ」を利用したクライアントからは、どんな反応がありましたか?

参加者満足度が97%と非常に高い評価をいただいています。テレワークでタスクのやり取りだけになってしまったチームメイトの知らない一面を知れた、今まで関わったことのなかった人の内面をよく知ることができた、新卒・中途で入社してきたメンバーのことがよくわかったなどの感想をよく聞きますね。

テレワークが常態化するにつれ、失いつつある仲間意識や人となりや価値観を共有する相互理解、非日常を体験できるワークショップで、それらを自然に深められるところに価値を感じていただいています。

プレイライフ・佐藤太一社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

―不動産事業者との協業も進めていますね。具体的にはどのような取り組みでしょうか?

直近では、東急不動産(東京・渋谷区)と協働して、同社のテナント向けに「バヅクリ」を割引利用できるプランを提供し始めました。

社内イベントとしても活用できますし、同じビルに入居する別々の企業が参加するイベントも想定しています。

働き方が大きく変化するなか、オフィスビルのあり方も問われるようになりました。これまで、オフィスビルの価値といえば、「立地・ハード・賃料」でしたが、テレワークが浸透した今、それだけでは価値創出ができなくなってきています。

そこで、「バヅクリ」が同じビルに入居する企業と企業、個人と個人を結び付けるなど、ソフト面でオフィス価値を高め、退去を減らすことに寄与できればと考えています。ここはまだ誰も手を付けていない領域なので、力を入れていきたいですね。

―東急不動産との取り組みは、何がきっかけで始まったのですか?

実は、両社のどちらかが営業をかけたわけではないんですよ。先ほどお話した、「遊部」のメンバーに、東急不動産の社員の方がいたんです。この方を起点に、お付き合いが始まりました。

―不動産領域での他の取り組みについても教えて下さい。

ベンチャー・スタートアップ向けにオフィス仲介・物件プロデュースをしているIPPO(イッポ:東京・渋谷区)と共同で、オフィスビルを運営する不動産会社向けに、不動産価値を創出するサービスを提供しています。

IPPOは、不動産会社のヒアリングやコンサルティング、市場調査などを担当し、我々は、オフィスビル内のオンラインイベントやテナント間のコミュニケーション促進するコンテンツなどの企画・実施を担当しています。

この取り組みも、ソフト面から他のビルとの差別化やテナント企業間のつながりや満足度を高めることが目的です。

―どのようなイベントを構想しているんですか?

ビル内でのビジネス交流会や、ワークシェアリング、不用品を持参したフリマイベント、オンラインファミリーイベントなど様々な企画を構想しています。

プレイライフ・佐藤太一社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部


―「遊び」が起業の原点と仰いましたが、なぜ「遊び」だったのでしょうか?

死にかけたときに走馬灯のように過去の思い出を見ると言いますが、私はすべてが「遊びに夢中だったときの記憶」だったのです。当時、私は外資系コンサルファームで月520時間労働という激務をこなしていて、意識が朦朧とするなか電車に飛び込もうとしました。

その一瞬の間に、子どもの頃、廃材を集めて秘密基地を作って遊んだこと、いかだを作って川を渡ろうとしたこと、大学時代バンドでライブ出演した思い出など、心底楽しんでいた遊びの記憶が次々と流れてきました。

それで「まだ死ねない」ととっさに感じてホームに倒れました。病院で目が覚めたときに「世の中の人々の遊びの思い出を共有するサービスを作りたい」と思って、紙とペンを看護師から借りて、事業計画書をひたすら書いていました。

退院後、コンサルファームに所属しながら、個人でもコンサルを2年ほどやって起業資金を貯め、2013年に創業したのがプレイライフです。

―起業の原体験が、自殺未遂というのは衝撃的ですね。

生まれて数カ月の赤ちゃんは、誰が教えたわけでもないのに、自然に遊んでいますよね。子どもの頃は、鬼ごっこやかくれんぼなど、遊びを通して相手を知り、仲良くなっていった経験を持つ人は多いと思います。

社会人になったからといって、そうした遊びを通じた関係構築がなくなるのは、むしろ不自然なんじゃないかと思います。人とつながれる場は、飲み会だけじゃないんですよね。企業にも、「遊び」という人間の根源的な活動の魅力をもっと広めていければと思っています。

―今後の展望について聞かせてください。

オンライン社内イベントのリーディングカンパニーを目指しています。具体的な目標は、「バヅクリ」の利用企業1,000社の達成です。「社内イベント」といえば、「バヅクリ」が1番に想起されるようなブランドに育てていきたいと思います。

そして、「バヅクリ」を軸に、テレワーク・コミュニケーションでのインフラを提供するHRサービス事業を、さらに発展させていきたいですね。

 
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