遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。


不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。今回はAmufi(アミュファイ:東京・江戸川区)で共同代表を務める江渕大輝氏と前田嘉哉氏に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

Amufi 前田嘉哉共同代表(左)・江渕大輝共同代表(右)撮影=リビンマガジンBiz編集部

―提供しているサービスについて教えてください。

前田 「RoomPa」(ルムパ)は、自分が住んでいる物件を入居検討者に紹介できる、不動産賃貸におけるCtoC取引のプラットフォームサービスです。

物件の掲載から検索に加え、契約までを一貫して手続きすることが可能です。

大きな特徴は、CtoCプラットフォームであることです。現入居者が物件情報を掲載し、入居検討者とサービス上でやりとりをしていただきます。現入居者とチャットでやりとりすることで、好きな時に24時間いつでも物件探しが可能です。

また、実際に住んでいる人から聞くことで、入居していたからこそ分かる情報を知ることができます。例えば近隣スーパーの営業時間やセール情報、大学までの時間は表記通りなのかといった、ネガティブ情報・ポジティブ情報の両方が分かるようになっています。

そして、現入居者は掲載物件が成約した際に、家賃の25%を情報提供料として受け取ることができます。

入居を検討している人にとっては、仲介事業者とのやりとりが必要ないため、気軽に住むことができます。

2つ目の特徴は、オンライン上で物件選びを完結できるというところです。従来のポータルサイトと比較した際、仲介会社の店舗へ来店する手間がなくなり、オンラインで契約まで完結することができます。

また、「RoomPa」にしか掲載されていない物件があることも強みです。通常のポータルサイトは、入居者が退去を連絡した後になって情報が公開されます、「RoomPa」は退去前に掲載することができるので、まだどこにも公開されてない物件情報があります。

11月リリースしたのはβ版で、現入居者が物件を登録するためのサイトです。物件の閲覧・契約ができる正式版は、12月末にはリリースしたいと考えています。

「RoomPa」のサービススキーム 画像提供=Amufi

―現入居者と入居検討者がオンラインでマッチングする。実際の仲介や契約手続きはどのように行われるのでしょうか。

前田 「RoomPa」と提携している仲介会社に、オンライン重説などを活用して対応してもらう予定です。

―管理会社やオーナーとのやりとりはどうなっているのでしょうか。

江渕 提携している仲介会社から管理会社やオーナーに連絡してもらいます。

管理会社やオーナーからすると、これまでと全く同じ流れで物件の空室が早く決まる。入居者がいる段階で次の入居も決まっている状態ができるというだけで、フロー自体はなにも変わりません。

―「RoomPa」と提携している仲介会社が、現入居者から管理会社の情報を聞いて、そこに連絡するということですね。

江渕 仲介会社には管理会社やオーナーへ「この物件を紹介しても良いか」と許可をもらうところから確認連絡をしてもらいます。オーナーのなかには嫌だという方や、民泊への転用といった事業転換や賃料を変更するといった可能性がありますから。住みたいという人が現れた段階で連絡して確認するようになっています。

江渕 その物件に住みたいという人が見つかった段階で、管理会社に仲介して良いか確認します。

あくまでも「RoomPa」はマンション名や物件を特定する情報を出すわけではなく、部屋の中身を見せて住みたいと思うかどうかを判断するサービスです。インスタに写真を載せるような感覚で、その部屋に興味のあるユーザーをマッチングさせるようなイメージです。


江渕大輝共同代表 撮影=リビンマガジンBiz編集部


―「RoomPa」と提携している仲介会社が管理会社やオーナーと連絡を取る。管理会社やオーナーも「RoomPa」のサービススキームを理解してもらわなければいけませんね。

前田 「RoomPa」上で住みたいという人が出てきた時点で、現入居者には退去連絡をしてもらいます。退去連絡をしたかどうかをステータスで管理しており、退去連絡をしたら我々が仲介会社に連絡してくださいとお伝えします。

―そして、その時点で仲介会社が次の入居者の与信や審査をするということですね。タイミングを調整するのはとても難しいのではないでしょうか。

江渕 退去連絡をしても審査や与信が通らずマッチングしなかった、ということも十分に起こりえると思っています。二番手・三番手の検討者も予約できるようになっていて、一番手の審査が落ちた瞬間にもう一回募集が再開され、物件に「いいね」を付けてくれたユーザーに一斉に通知が行くようになっています。

最悪、次の入居者が見つからなかった場合でも、管理会社からすれば早期に退去連絡がきたことで、次の対応や対策を打ちやすい。物件を掲載するユーザーにも必ずマッチングするわけではないことは了承してもらっています。


―今の入居者が退去したらリフォーム・リノベーションの予定があるといった場合も多いと思います。

江渕 それはキャンセルですね。

あくまで管理会社・オーナーファーストで考えていて、我々は次の入居検討者を連れてきますが、判断するのは管理会社・オーナーです。

―マネタイズはどうなっているのでしょうか。

前田 仲介会社にユーザーを紹介して、成約すれば紹介手数料を頂戴します。

―「RoomPa」に物件を載せている入居者が、本当にその物件に住んでいるかどうかはどうやって判別するのでしょうか。一般入居者と偽って、不動産会社が送客のために利用するケースといったことも出てきそうです。

江渕 当然リスクがあり、プラットフォームを運営するなかでは、イタチごっこになると思います。基本的には規約で、目的に沿わない場合は削除対応にするといったかたちをとります。

―サービスをリリースしてまだ日が経っていませんが、登録状況はどうですか。

江渕 まだプレスリリースしか売っていない状況ですが、物件を掲載したいという方は200名ほど登録いただいています(2020年11月時点)。

前田 関東が中心ですが、北陸や東北など、一部地方の方も登録いただいていますね。まずは、関東一都三県を中心に物件を増やしていきたいと考えています。

―CtoCでの情報のやりとりやコミュニケーションはどういったかたちで行われるのでしょうか。

江渕 皆が見られるオープンチャットを考えています。

室内の写真を撮影したり、広さや長さを測ってほしいというリクエストに対して実際に測ったりといったやりとりを、誰もが見られるようにします。

―間取り図などはどうするのですか。

前田 間取り図の掲載は必須ではありません。

求められた場合は、あくまでも参考程度に絵に描いてもらう。

ユーザーに話を聞くと、それで十分という意見が多かった。写真が色々な角度で撮られているので間取り図はいらない。むしろ、住んでいる写真なので家具も移っており想像しやすい、といった意見が、当社がコアターゲットにしているユーザーの回答です。

「RoomPa」のターゲットは、ワンルーム・1Kがメインで、地方の大学4年生が東京に上京してくるというときに、部屋選びに時間をかけられないというユーザーです。オンライン内見をしようとしても、管理会社の営業時間内に調整が必要です。「RoomPa」なら気軽に問い合わせることができます。

―オープンチャットであるということがCtoCプラットフォームのモラルを保つことに一役買っていそうですね。

江渕 サービスの目的外で利用されることを避けるためのリスクヘッジにもなりますね。また、掲載した現入居者も同じことを何度も聞かれるのは面倒ですから、過去にどういったQ&Aがあったのかを見られるようになっています。

前田嘉哉共同代表 撮影=リビンマガジンBiz編集部

―「RoomPa」はサービスを発表してすぐにSNSで話題になっています。

江渕 ああいった盛り上がり方をしてしまったため、面白半分のいたずら登録なども多々ありました。

しかし、本来「RoomPa」はオーナーにメリットが大きいサービスだと思っています。オーナーには客付けできる媒体が増えたと思っていただきたいですね。最近では内見に時間をかけたくないという人も増えていて、コロナ禍においてはさらに拍車がかかっています。

魅力的な物件を持っているオーナーに対して等しく価値提供ができる、というエコシステムを作りたい。先ほども言ったように、マンション名を出しているわけではないので、物件が特定されることもありません。成約が生まれたときに初めて開示される。

その他にもSNSで指摘されている法律的な部分は、かなりのコストをかけて確認し、クリアしています。

―成約した物件の情報などは溜めていくのでしょうか。

前田 そこをどうするか考えています。

当社としても、次の入居者が退去するときにボタンを押せば再び公開されるようにできれば便利なのではないかと考えています。

また、退去情報を上手に管理会社に伝えることができれば、管理会社にとっても有益な情報になるでしょう。

―「RoomPa」のようなCtoCプラットフォームを確立したいという意見は多くあります。賃貸仲介は邪魔な存在として淘汰されるべきという声もSNSなどで頻繁に目にするようになりました。

江渕 仲介メインの会社も、最近では管理戸数を増やす方向にシフトしているところが多いですね。

ただし、どれだけネット上でのマッチングや取引が進んでも、仲介業がなくなることはないと思っています。高級賃貸などは、「RoomPa」では全くターゲットにしていませんし、むしろ人による提案や案内が重要だと考えています。

―「RoomPa」を通して業界をどのような影響を与えたいと考えていますか。

江渕 一般消費者に対しては、物件選びをする際に、より多くの情報から選べる環境を提供したい。あわせて物件選びにかかる工数を減らしたい。

前田 オーナーに対しては、物件が早く埋まることを重視しています。良い物件であれば埋まり続けるという環境作りにコミットしたいですね。空室期間を減らすエコシステムを作りたいと思っています。

 
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