遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。


不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。


今回は、事故物件専門のポータルサイト「成仏不動産」を運営するNIKKEI MARKS(神奈川県横浜市)花原浩二社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

NIKKEI MARKS・花原浩二社長 撮影=リビンマガジンBiz

―提供しているサービスについて教えてください。


当社が2019年4月から運営している「成仏不動産」は、事故物件専門のポータルサイトです。不動産会社が管理したり、売却委任を受けたりしている事故物件を掲載し、事故物件の流通を促進させることを目的としています。

事故物件を7つの区分 画像提供=NIKKEI MARKS

「成仏不動産」では、事故物件を7つの区分に分けて星の数で表しています。「お墓や火葬場、葬儀場が見える物件(星1)」「共用部分や他の部屋などで事故があった物件(星2)」「発見まで72時間以内の孤独死、病死物件(星3)」「発見まで72時間以上の孤独死物件(星4)」「火事や事故で人が亡くなった物件(星5)」「自殺物件(星6)」「殺人物件(星7)」といった具合です。

星が最も多い「殺人物件」は、選ぶ人がかなり少ないですが、その分価格が安くなっています。投資に向いているし、全く気にしない方にはかなりお得な物件になります。

―事故物件のポータルサイトを運営しているのですね。

事故物件のポータルサイトに加えて、自社で特殊清掃を行う「成仏SOS」事業も展開しています。

2013年に300社ほどしかいなかった特殊清掃の会社が、現在6,000社ほどに増えていると言われています。なかには技術を持ちあわせていなかったり、モラルに問題があったりしてトラブルも生まれています。これを無くしていきたい。

特殊清掃の現場はトラブルが多く、当社にも二次施工の相談や、やり直し施工の案件がたくさん来ます。事故物件をしっかり流通させたいという大前提のなかで、まずはきちんとした特殊清掃を行うことにこだわっています。

また、特殊清掃が終わったあとに、リフォームや原状回復を行い、当社が監督のもとでお祓いまで行います。お祓い後、光触媒の抗菌コーティングまで終わったものに、「成仏認定書」を発行します。この認定書によって、きちんと対策ができた事故物件だということ、精神的に苦手な方にはお祓い、技術的な不安にはしっかりとした特殊清掃で対応できていることを表しています。

「成仏不動産」 画像提供=NIKKEI MARKS

-「成仏不動産」での物件数や提携している不動産会社の数はどれくらいですか。


物件を掲載いただいている不動産会社が約100社、物件登録は約300件ですね。6割が賃貸、4割が売買といった割合です。

大体、月50件ほどが新規登録され、50件がなくなっています。サービス経由で決まっているケースや、様々自由で販売取りやめになっているものなど、さまざまですが、流通スピードとしてはこれぐらいです。



―事故物件を7つに区分しています。どれが一番多いのですか。


特に多いのは孤独死です。星4の「72時間以上の孤独死」と星6の「自殺物件」が多いですね。



―コロナの影響で、外出を控えていたために孤独死に至ってしまうケースなども増えているのでしょうか。


孤独死が発生する一番の要因は、社会との隔離です。

ステイホームによって孤独死が増加している可能性は高い。また、熱中症で亡くなる方も多いですね。

発見するのが早ければ熱中症で亡くなったことになりますが、数日経てば孤独死になってしまいます。



―7つの分類にあわせて、不動産価値の毀損にも段階があると思うのですが、どういった目安があるのでしょうか。


正式な目安はありませんが、殺人系なら半額近いというのはデータとして出ています。

ただし物件によります。1億円の物件が半額にはなりません。高額な物件は利用価値も高いので、引く手はあるからです。

事件の起こる現場は高額帯の物件は少なくて、大体2~3,000万円が多い。そういった物件は貸し出す時の賃料も含めて半額ぐらいになっていますね。

また、孤独死ではあまり安くなっておらず、むしろ売り出している価格では標準と変わらないケースもたくさんあります。

こういったケースでは、売主が希望した価格では売れず、次第に下がっていくケースや、最後にネゴ交渉が入って安くなっているようです。そういった意味では「発見まで72時間以上の孤独死物件(星4)」くらいから安くなる印象です。


NIKKEI MARKS・花原浩二社長 撮影=リビンマガジンBiz



―管理会社が集客や募集する時に「成仏不動産」に物件掲載するためには、オーナーを説得しなければいけませんね。


載せたくない、オープンにしたくないというオーナーはたくさんいらっしゃいますね。ネットに公開するのではなく、希望者がいたら個別に説明して欲しいといった要望があるようです。

「隠して、売りたい」と、オーナーからはっきりと言われたこともあります。



―ユーザーの属性や特徴はありますか。


最初の頃は、高齢者や若い方がターゲットになると考えていましたが、実際の属性はバラバラでした。

ワンルームの物件の掲載が多いので、独身や単身世帯の方からの問い合わせは多いです。しかし、一軒家やファミリータイプの物件が出れば、普通の家族連れが買っていかれるので、傾向といえるような特徴はありません。あとは、海外の方からの問い合わせも増えています。

事故物件を入り口として家を探していて、通常の物件で決まることもあります。

精神的なハードルはあるとは思いますが、価格が安いのだし、ある程度の心理的なものは許容する方が増えているように感じます。



-事故物件は通常の物件に比べて、どれほど流通が鈍化するのでしょうか。何年も売れずに困っている物件も多いという印象があります。


実はそんなに変わらないと感じています。

どんな物件でも、どんなひどい現場があっても、価格が安くなった瞬間にすぐに売れてしまいます。

「成仏不動産」ができたことによって、人が亡くなって価値が下がった物件を探しやすくなり、「そんなの気にしない」、「安ければ我慢できる」という人がいることが、はっきり可視化されたイメージですね。



―投資用不動産で事故が起こった場合、銀行の担保評価は変わるのでしょうか。


担保評価は下がると思います。金融機関によって対応はバラバラですね。

事故があった不動産には一切、融資をしない金融機関もいらっしゃいますが、原則として物件次第というところが多いですね。物件次第というのは、どれだけ安くなるのか、金融機関でも指標が少ないので、お試しで融資してみますといったケースが多く、過去に何件か取り組んだことがある銀行では融通が利きやすいといったこともあります。しかし、ほとんどはキャッシュで買える投資家が買い付けています。

実需で買う方は、売ることが目的ではなく住むことが目的なので、融資について影響はありません。

当社が物件を買い取って、清掃してから、リノベーションして売却することもあります。ただ、仕入れの融資についてはほとんどダメです。金融機関によっては「成仏不動産」事業をするのであれば取引を考えますと言われたところもあります。



―金融機関はどういったリスクを感じているのでしょうか。


全く関係ないのに、犯罪に加担しているような印象を持たれてしまうようです。大きな銀行ほどそういった傾向ですね。

今後は、応援してくれる金融機関をもっと見つけないと進まないと思っています。結局、事故物件が必要以上に安価になってしまうのは、融資がつきづらいことも原因の一つであると思います。融資の現場で判断できるだけの実績がないので、本当に売れるのか誰にも分からない。だから、融資が渋られるので、買う側は現金だけで買えるくらい安くないと買えないという悪循環です。

当社でも取引した事例を溜めてデータベース化し、金融機関が安心して融資の枠を広げてもらうような動きも必要だと感じています。


―あまりに昔の事故の場合は載せないといったような、掲載物件のレギュレーションはあるのでしょうか。


ありません。

当社の考えでは、「もう何年、経ったから大丈夫」と判断するのは売り手・貸し手ではなく、買い手・借り手です。

「成仏不動産」には7つの分類に加えて、何年前事故が起こったのかを記載しており、それを見て買い手・借り手が判断するのが正しい告知方法だと考えています。

言うべきかどうかを、利益を損失する側が判断するのはおかしいと思っています。



―事故物件でよく話される事故が起こってから一組住んだら、次の人には告知義務がないというものは、全く法的根拠がありません。こうした間違った常識が語られるのはなぜでしょう。


次の人が住んだら告知義務はないという話は、「成仏不動産」事業を始めてからの1年で数百回聞いています。

死亡者がいた不動産の告知義務について判断を示した裁判は聞いたことがありませんが、損害賠償についての裁判がありました。

都内のアパートで自殺をした方がいて、遺族に対して亡くなった部屋の上下や左右の部屋でも何十年も家賃を下げることになり、得られるはずだった収入を請求するという裁判です。そのときに、契約期間の2年間だけ損失を支払うという判決があり、人が入れ替わったあとは補償しなくて良いという判決が出た。遺族の責任がどこまであるかを問うた裁判例にも関わらず、貸す側の告知基準として拡大解釈されているのだと思います。

一方で、2020年2月から、国交省が告知基準に関する検討会を始めたのですが、一向に検討が進んでいない印象です。


―不動産テック企業に取材をするなかで、よく「情報の透明性」や「情報の非対称性」という課題が出てきます。透明性のなかには、その物件にどういった人が住んでいたのか、そこで何が起こったのかというデータの蓄積も重要だと感じています。


そういったデータを持っている不動産会社はほとんどいませんね。

紙でしか残っていない。それこそブロックチェーンなどによって管理するべきです。

他の業界、例えば金融業界ではありえないことです。

情報を隠してインサイダー取引をしようものなら、一生そのレッテルを背負っていかなければなりません。しかし、不動産業界では平然と行われています。



―NIKKEI MARKS社が「成仏不動産」を打ち出したことによって、同業からの反発はなかったのでしょうか。


意外なことにありませんでした。

結構身構えていたのですが、怒られたこともないし、嫌がらせすらもありませんでした。実際のところ、不動産業界にも扱いに困っている人が多かったのでしょう。



NIKKEI MARKS・花原浩二社長 撮影=リビンマガジンBiz



―今後事故物件は間違いなく増えていきます。そういったなかでは、事故物件が普通のものであると、消費者に対しての文化醸成が必要だと思っています。そこに対してはどういったアプローチを行っていくのでしょうか。


当社は2種類の方法を考え、現在下準備を進めています。

1つ目は、「事故物件×アート」といった新しい感性と新しい感性を掛け合わせてプロデュースすることでイメージチェンジをすることです。事故物件って「怖い」というイメージが先行していて、大胆なリノベなどでお洒落なデザインに挑戦できることを誰も気付いていません。価格が安いだけでなく、デザインも良いとなれば「事故物件ってこんなにお洒落なんだ」という世の中にしていきたい。それが少しずつイメージを変えていくと考えています。

2つ目は、廃材を使って安い物件を、安価でハイクオリティな物件にする。事故物件を買いたい人は、結局は事故物件が良いわけではなく安いことが良い。それに磨きをかける。例えば当社で解体業をはじめて、廃材を使った廃材ブランドを立ち上げる、といったことも考えています。



-花原社長は、もともと大和ハウスでトップ営業だったとうかがっています。そして2016年に独立された。


独立した当初は、「成仏不動産」のコンセプトなどはありませんでした。やりたいことは、世の中の困りごとを解決するというのがテーマでした。ずっと不動産の業界にいたので、不動産に関連した困りごとを解決する。その1つが「成仏不動産」です。

先ほどの廃材ブランドというのも、スクラップ&ビルドを繰り返す世の風潮を変えたいというところから端を発しています。

2020年8月からは、「負動産の総合病院」事業を始めます。これは、税理士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・建築士など7つの士業が集まって、負動産の総合病院として様々な問題を解決する。その第1弾として、再建築不可救急隊という診療科を作りました。

再建築不可は、不動産会社が安く買って、建築可能にして高く売っているという事実があります。これも事故物件と非常に似ている構図です。我々は、所有者が不動産を持っている段階で建築不可を建築可にするお手伝いをするというコンセプトです。

今後も借地権や、急傾斜地などリスクのある不動産で困っている方が多いので、そういった人たちを助けるような専門のドクターチームを作っていく予定です。

「成仏不動産」はひとつの経過であり、いろんなことをやっていきたいと思っています。大手にいたからこそ、大手がやらないようなことをやっていきたい。

特に不動産業界の既得権益に呈して、そこを当たり前のことを当たり前にすることでもっと良くなると感じています。



―大和ハウスでの経験が、現在のサービスにどんな影響を与えていますか。


新築物件を売っていたときは、新築を売ることに一生懸命になっていました。

部署の責任者になれば、どうやったら新築が売れるのか、そればかりを考えます。他社ではなく絶対に当社を選んでもらう、そしてリフォームではなく新築を建ててもらうように提案していました。住まいを探している人にとって本当に良い提案なのか。そこに違和感がありました。

私は阪神大震災で被災した街で生活したことで、大和ハウスに入りました。地震に負けない家づくりをすることが世の中のためになる、古い家はすべて建て替えるべきで、それが人の命を救うことになるのだと思っていました。しかし、これだけ空き家が増えてきたら、今度は新築を建て続けることにも問題があると感じ、大手では出来ないことで小さな会社だからこそできることはないかと思い独立した経緯があります。

当社の根本の部分には空き家問題を解決したいという思いがあります。もっと世の中の役に立つことに重きをおくなら、空き家問題の解決に取り組みたい。「成仏不動産」も大きなくくりでは、空き家問題の一部に対する解決方法の提示です。



―将来の展望について教えてください。


サイトに5万物件を載せたいと思っています。

一方で、数字を絶対目標として強く押し出していません。事故物件が増えるということは尊い命が失われることを意味しているからです。

だから、数字の部分というよりかは、誰もが使えるサイトにしたいと思っています。根本には困っているオーナーを助けたいという心情があります。それを忘れずに取り組みたいと思っています。

 
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