遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

 

今回は、IoT機器に高い知見を持ち、管理システムの開発を手がけるAlianza(アリアンサ=東京・渋谷)・西野充浩社長に聞く。(リビンマガジンBiz編集部)

 

 

Alianza・西野充浩社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

―提供しているサービスについて教えてください。

 

当社が2020年6月にリリースした「管Ciel住(カンシェルジュ)」は、マンション管理業務を効率的にリモート化するシステムです。

 

マンションの管理室前やエントランスに専用端末を設置し、住人からの問い合わせを受けたり、端末を掲示板としてリモートで掲示内容を更新したりすることができます。

 

昨今の台風被害や今回のコロナで、どのマンションでも掲示物が増えています。これまで、マンション管理会社の社員がわざわざマンションを回り、貼り剥がしていましたが、オフィスからリモートで掲示することができます。

 

また、入居者にとっても「駐輪場が空いていますか」「廊下の電気が切れていますよ」「騒音の問題がありますよ」といった日常的な問い合わせを端末から24時間いつでも送ることができるため、わざわざ管理人に伝えたり、電話で連絡したりする必要がなくなります。

 

 

「管Ciel住」 画像提供=Alianza

 

 

サービス開発を進めるなかで、管理会社へのヒアリングをしましたが、住民からの問い合わせを紙や言葉の伝達で管理しているケースが少なくなかった。紙を紛失したり伝え忘れたりすれば、どういった問い合わせがあったのかも分からなくなる可能性があります。「管Ciel住」では、管理画面で問い合わせを管理ができ、対応内容をステータスをとして履歴に残せます。

 

 

―マンション管理業務を効率化しています。

 

マンション管理業務における、点検や清掃といった現場での実作業は、人間と同じように動くロボットが登場することがない限りは、効率化は難しいでしょう。しかし、業務管理やその他の業務はデジタル化によって様々な無駄を無くすことができます。

 

アナログな作業を無くせないマンション管理業界でも、デジタル化によって事業効率化できると考え、「管Ciel住」をリリースしました。

 

 

―Alianza社の親会社にFORMULA(フォーミュラ)社がありますね。この2社の違いはなんですか。

 

私は元々、プリント基板のキョウデンから始まり、EMS(電気製品受託製造)の大手フレクストロニクス、製造ソリューション企業のPCHインターナショナルに在籍していました。そこで、ソニーなどのメーカーから、自社で行わない設計・開発・製造を請け負うビジネスをやっていました。そのため、ハードウェアに関わる試作・開発・製造・意匠デザインに関わる部分、安全規格や認証など、ハードウェアに関わる全般に携わっていました。

 

そういった知見を、日本のハードウェアベンチャーに役立てたいと思い、2013年にFORMULAを立ち上げました。

 

FORMULAでは、ハードウェアビジネスの黒子として、様々なプロジェクトに関わり、ハードウェアの量産化を成功してきました。

 

黒子で得た経験を元に、新しいサービスを行うため、2019年にAlianzaを立ち上げました。こちらは、住居や不動産に対してIoTなどを導入し、デジタル化を推進する企業を目指しています。

 

 

Alianza・西野充浩社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部


―Alianzaは、不動産業界に特化してサービスを提供するのですね。不動産業界に市場を絞った理由はあるのでしょうか。

 

FORMULAとして様々な業種に関わるハードウェアのプロデュースを行っていたなかで、2015年頃インベスターズクラウド(現:TATERU)から、新しいハードウェアを開発したいという相談がありました。

 

当時、彼らは様々な新しい住宅の構想を持っていました。それを実現させるハードウェアの知見がなかったため、一緒にプロジェクトを進めていくことになり、ジョイントベンチャー(合弁企業)でiApartment(現:Robot Home、東京・渋谷区)という会社を作りました。

 

そこから3年間、TATERUがああいった事態になってしまうまで、Robot HomeでIoTアパートに向けて様々なハードウェアの開発を行いました。開発・量産・導入が進むにつれて、住宅関連のデジタル化にはもっと可能性があると思いました。

 

一方で、不動産や住宅のIoT導入数は、まだまだスタートラインにも立てていないと痛感しました。もっとスマート化できる可能性も感じていたのですが…。TATERUでは、IoT機器を新築アパートに標準搭載して提供していますが、新築以外の物件への搭載も視野に入れないといけないと感じましたし、もっと違うかたちでIoTや住まいのデジタル化を進めることはできないかと考えたことがAlianza設立の理由です。

 

 

―スマートホームや住宅のIoTにそれほどまでに可能性を感じたのですか。

 

TATERUとIoT事業を進めていたとき、「不動産会社がIoT?」と不動産業界は冷ややかな反応でした。しかし、サービスをリリースし、“IoTアパート”という言葉が浸透した瞬間、業界にIoTの風が吹きはじめ、他の事業者たちもその流れに乗り遅れない様に取り組みを開始し、大手もIoT住宅に本腰を入れ始めました。

 

私は、Robot Homeとして3年間、TATERUの古木社長と取り組んだ活動が本当に楽しかったですし、住宅業界にIoTの新しい風を起こせたと思っています。

 

不動産業界でも、ある程度のパイを取ることができれば、周りの事業者もオセロのようにパタパタとひっくり返るんでしょうね。少しのきっかけで、マーケットを変えられることを肌で感じました。

 

 

―そういった経緯で立ち上がったAlianzaですが、「管Ciel住」はハードウェアのサービスではありませんね。

 

Alianzaを設立して1年ほど、どうやったらIoT機器が住居に浸透していくのかと色々考えていました。

 

方法を模索していくなかで、なかなかIoTやITが浸透していかない業界の現状を知りました。事業者のリテラシーの低さだけでは無く、長い商習慣で変えにくい部分にも原因がありました。

 

それならばと、不動産関連業界で一番デジタル化されていないところにデジタル化の風を吹かせたいと考え、アナログ作業を必ず伴う必要があるマンションの管理業務に注目しました。

 

マンション管理業界は、人材不足と高齢化の問題がかなり深刻化しています。最初は、何か私が得意なハードウェアで解決できないかと考えましたが、課題解決のためには、一旦ハードウェアから離れることとし、デモシステム作成4カ月、仕様修正2カ月、最終作り込み4カ月の計10カ月を要し、「管Ciel住」というSaaSのサービス開始となりました。

 

 

―実際にリリースして、マンション管理会社の反応はどうでしょうか。

 

すでに、第1号物件での稼働は1カ月を超えていますし、これまで半年ほどマンション管理業の数社には提案しています。

 

反応は様々で、「自社でもっと高機能なサービスを作る予定」「うちは決まった手順を変えられないからそういったサービスの導入は難しい」など、大手であるほど前向きな言葉は少なかったです。

 

いきなり大手に入り込むことができないのであれば、業界大多数の中堅のマンショ管理会社に広めていき、業界の当たり前のサービスにしたいと思っています。


Alianza・西野充浩社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部
 


―マンション管理は、不動産業界のなかでも少し特殊な業界ですね。大手以外の管理会社というと本当に少ない棟数だけを管理している会社もあります。あまりスケールメリットもないような…。

 

地域に根付いた数十棟の分譲マンションを管理している会社がたくさんありますね。そういった会社は他社に業務を1棟でも取られたら、事業ダメージは大きいです。少ない予算のなかで、管理会社として住人に価値をしっかり提供できるかが重要となります。

 

私の調べでは、マンションの住人の半数以上は現在の管理会社に満足していないようです。「問い合わせても全然やってくれない」といった基礎的な不満も多いようです。

 

加えて、最近は、理事会が主導して、コストが少し安いという理由などで、規模の大きく営業がしっかりしている管理会社に変えてしまうこともあるようです。そして、変わった後に、問題が出る事も少なくない。

 

管理会社の切り替えは、中堅の管理会社にとっては切実な問題です。そういったことも、「管Ciel住」によって住人に向けた価値を提供できれば無くすことができると考えています。

 

 

―マンション管理会社は常にリプレイスリスクに対応する必要がある。

 

些細なことで、管理会社への不信が生まれてしまいます。

 

例えば、中規模以上のマンションでは、来客専用の駐車場がありますね。通常その予約は、管理人室の横の紙に書き込むといった方法が未だに主流です。やはり、ダブルブッキングもあるようで、住人同士のトラブルに発展し、管理会社不信にも繋がっています。

 

そういったことも「管Ciel住」の導入で防ぐことができます。住人同士のトラブルが発生したら管理会社は現場に行かなければなりません。そのコストを考えてもデジタル化の効果は大きいと考えます。

 

 

―ハードウェアへの造詣が深い西野社長に聞きたい。不動産や住宅に向けたIoTサービスを提供する会社は増えています。しかし、どの会社も抜きん出ることが難しいようです。その理由は何でしょうか。

 

一般の人にとってハードルが高いからだと思います。しかし、いずれは普及すると考えます。

 

スマートフォンは、普及率が2割を超えた段階から一気にユーザー増えました。つまり、ある程度の割合まで住宅のIoT化が普及すれば、一気に広がると思います。

 

住宅関連のみならず、オフィスなどでもデジタル化は徐々に進み、どこかのタイミングであたりまえの時代になると考えます。

 

 

―将来の展望について教えてください。

 

3年以内に、「管Ciel住」の導入1,000棟を目指しています。

 

日本全国にはマンションが約10万棟あり、マンション管理会社は4~500社あるとされています。

 

マンション全体の1%、つまり1,000棟に導入することができれば5%、10%と増やすことができるでしょう。ただし、この1%までがとても大変です。

 

そのために、今後も機能拡充を継続します。

 

例えば、オートコール機能です。管理費や賃料などの支払いがなかった住人に対して、管理画面の設定から自動音声で督促の電話がかけられます。その他、契約更新や様々な電話案内が可能です。管理会社の業務には電話の業務が非常に多いことが分かりました。「管Ciel住」のオートコール機能の導入で、電話業務を大幅に減らす事が出来ます。

 

この他にも様々な機能追加を計画しています。現場の声を聞きながら、業務に最適なSaaSが提供できるよう真摯に取り組むつもりです。

 

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ