遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。


今回は、データセンターによるスペース活用のZofuku(東京・文京)の新倉康明社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

 

 

Zofuku・新倉康明社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

 

―提供しているサービスについて教えてください。

 

空き家や空きスペースを分散型データセンターに誘致するサービスを開発しています。「Space Income(スペースインカム)」という名称で、2020年3月中にβ版のリリースを予定しています。

 

データセンター事業者がスペースに機器を設置することで、空き家や空きスペースのオーナーは、賃料収入を得ることができます。

 

一般的なスペースシェアサービスは、始めるにあたってリフォームや広告費などが発生します。また、ユーザーが利用し続けなければ安定的な利益が発生しません。

 

一方、「Space Income」は、オーナーが物件を登録することで、データセンター事業者から機器設置のオファーが届き、実際に設置することが決まれば、当社がオーナーと賃貸借契約を結び、データセンター事業者に転貸します。オーナーによる設備投資はいりません。また、時間単位ではなく、通常の賃貸借契約を年単位で締結するため安定した収入を得ることが可能です。

「Space Income」

 

 

―データセンターとはどういったものなのか、分かりやすく教えてください。

 

一般的にデータセンターとは、サーバーやネットワーク機器を安全に管理・運用する施設や建物です。膨大な情報を処理するIT企業などは、データセンターを利用しています。

 

「Space Income」は、空き家や空きスペースに「ノードデバイス」  と呼ばれるブロックチェーン技術を活用したハードウェアを設置し、分散型データセンターを構築します。通常のデータセンターを運用するよりも安価にデータセンター運用を始めることができ、スペースオーナーには家賃収入が生まれます。

 

「Space Income」では、ニューカインド社(東京・文京区)が提供しているノードデバイスを設置し、ゲームやアプリ、ショッピングサイト、IoT、仮想通貨を扱う予定の事業者向けに向けてデータセンターを提供しています。

 

 

ニューカインド社のノードデバイス 撮影=リビンマガジンBiz

 

 

―これまで大きなコストが発生していたデータセンターを、ブロックチェーンによって分散して、遊休スペースで活用するのですね。

 

構想段階ですが、分散型データセンターは通信インフラにも活用できます。

 

現在、様々なサービスやアプリケーションが「クラウドコンピューティング」という方法で提供されています。クラウドサービスと呼ばれるものですね。

 

クラウドサービスは、様々なデータや情報を中央のサーバーに集約して処理しています。セントラルキッチンのようなイメージです。

 

今後5G環境が整備され、ネットに繋がるIoTデバイスがどんどん増えていけば、通信するデータ量が膨大になり、クラウドでは大きなコストとデータの遅延(レイテンシー)が発生します。

 

「Space Income」でノードを配置すれば、サーバー費用がかからずコスト削減が可能です。(「エッジコンピューティング」と呼ばれる方法で、)エッジデータセンターとして機能させ、データ通信の遅延もなくなるため医療現場や自動運転、工場などにも活用することができるでしょう。

 

 

―スペース活用が情報インフラにも繋がっている。

 

また、ノードデバイスは、仮想通貨のステーキング(※)として投資家にも購入いただいて

います。

 

※注=仮想通貨を一定量・一定期間保有することで、ネットワークのサポートや管理に貢献し、対価として手数料などの報酬を得ること。

 

一般的なステーキングは工場や倉庫に「マイニングファーム」と呼ばれる設備が整った環境を構築して行われています 。一般的な家庭や住居にデバイスを置いて運用するケースは、今まで誰もやっていないことです。

 

我々は分散型のモデルを目指しています。一般の家庭にもデバイスを置いて、投資家とオーナーに収益を分配します。

Zofuku・新倉康明社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

―「Space Income」にはいろいろな可能性があるようです。
 
海外を中心にアグリテック、いわゆる農業のテクノロジー化が進んでいます。
ドイツの「Infarm(インファーム)」というサービスは、野菜や果物の栽培キットを販売しています。ポイントは、そのキットをスーパーやレストランに分散化して置くということです。
キットのオーナーは、遠隔で野菜や果物を栽培します。するとレストランの料理に使用されたり、スーパーで販売されたりします。キットから得た利益をオーナーとスペースを貸している事業者で分配するというモデルです。
こういったものを「Space Income」でもイメージしています。
省コストで、簡易的に手軽にデータを使える場所を置いて、マイニングして収益を分配するというモノです。
 
―実際に進んでいる案件はあるのでしょうか。
 
現在、オーナー・不動産会社20社以上から問い合わせがあり、スペースを選定している段階です。
少し募集をかけただけだったのですが、反応はとても良かったですね。
なかでも、相続した空き家などで「とにかく使ってくれるなら使ってくれよ」という案件もありました。空き家活用は、これからも増えていくだろうと感じています。
 
―賃料収入は結構あるのでしょうか。
 
ノードデバイスを置く量によります。
普通の賃貸以上に稼ぐことは難しいかもしれません。
人が住めるなら、住んだ方が建物的にも良いでしょう。
我々は人が住めない、もしくは住む人がいない、需要がないようなスペースや物件を取りに行きたいと思っています。
―Zofuku社は、当初ブロックチェーン技術を使った不動産売買サービスを構想していたそうですね。
今も、最終的にはブロックチェーンで売買領域に行きたいと思っています。
我々が考えていたのは、不動産の所有権をデジタルなトークンに代替することで、ネット上で安全に早く不動産売買ができるというサービスでした。通常の不動産売買は様々な書類を用意する必要があり、時間もかかります。
不動産の権利書をブロックチェーンで証明することで、不動産の取引を簡単できると考えていたのですが、実現にはかなりの時間がかかるでしょう。
法律や登記が大きなハードルになっています。法律や国が動き、登記がブロックチェーンになると、実現がかなり早くなります。

 

 


Zofuku・新倉康明社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

 

―法整備などが必要で、上手くいかない不動産テックサービスは多いですね。その他に感じている課題はありますか。
不動産業界のリテラシーにも課題を感じました。
現在、ブロックチェーンを活用した売買サービスを紹介しても、ほとんど理解されません(笑)。
業界の課題は「デジタル化されていない」に収束しますね。
でも、ブロックチェーンといったテクノロジーを理解する以前に、まずFAXをやめて欲しいとも感じています。
最近も、不動産会社から「FAXで送ってください」と言われました。私は1992年生まれですが、FAXなんて小学生以来使ったことがありません。私がそうですから、もっと若い人たちは使い方すら分からないでしょう。どうしてメールではダメなのでしょう。
 
―そういったアナログな業界では、ますますブロックチェーンを浸透させることは難しいかもしれません。
いつかは、ブロックチェーン技術を活用した不動産サービスが必要になります。
そのためには、リアルな不動産の知識とデジタルなブロックチェーンの知識が備わっている人、2つの業界を繋ぐ翻訳家のような存在が必要になります。
そういった翻訳家を世の中に生み出していくことがZofukuの役割だと思っています。まずは「Space Income」で、徐々にブロックチェーン文化を不動産業界に醸成させていきたいですね。
 
―今後の目標や展望はありますか。
スタートアップなので、年20パーセント成長を目標にしています。
まずは「Space Income」のスペースや物件を増やしていきたいと思っています。人が住む環境に溶け込んだ、ロボットやIoTデバイスのための不動産を目指していきたいです。そのためには、不動産会社(と建築・デザイン会社)との提携や協力が必要ですね。
また、「Space Income」のスキームを使って、不動産会社と新しい商品開発もできるでしょう。データセンター付き物件やデータセンターの収益を分譲マンションの修繕費に充当する、といった方法もあります。
それ以外にも、ブロックチェーンは様々なことに活用できます。
例えば、所有する各物件にノードデバイスを設置することで自分たちだけのデータベースを構築することが可能です。そうすれば、エネルギー使用量や内見の手配、物件で取れるデータを全て管理する。
テクノロジーに興味があり、我々のサービスを面白がってくれるデザイナーや不動産会社と繋がりたいですね。
 
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