左:Cocolive・山本孝伸社長、右:屋代有俊本部長 撮影=リビンマガジンBiz編集部
―「KASIKA」を提供する中で、見えてきたエンド顧客の傾向はありますか。
屋代本部長
特に売主の場合は、複数の会社に問い合わせていることが多いため、不動産会社から電話かかってきても「そもそも誰?」という反応が多いようです。だから、普通は電話のときに自己紹介から始めなければならない。「KASIKA」で即時にメールを送ることで、電話しやすく、安心感の醸成にも繋がります。
不動産会社の方と話していると「まだまだ不動産会社は怖いと思われている」ということをよく聞きます。「いきなり売りつけられる」「不利益を被ったらどうしよう」と感じる一般の方もまだまだ多いようです。
山本社長
先にメールを使って情報を提供することで、「この人は役に立つ」「実績がある」「信頼できる」といった印象をもってもらい、電話ではスムーズに日程調整ができる。
当然、売主も信用できる人には話を聞いてみたいと思っている。しかし、自己紹介もせずにアポイントを取るようなやり方はぶしつけに映るでしょう。
屋代本部長
回りくどいと思うかもしれませんが、自己紹介をメールは良いアプローチ方法だと思います。顧客としては「本当に売ってくれるのか?」というマイナスなイメージがあって始まっているので、まずはニュートラルにまで戻すという意味です。
「KASIKA」から送信される、紹介の自動返信メール例 提供=Cocolive
―初動対応にも「KASIKA」を活用することができるようになった。
山本社長
これからは、RPA(ロボットによる自動化)にも力を入れてきたいと考えてきます。多くの不動産業界の方が、非生産的な業務に追われています。情報の確認やチラシ1枚作るのもかなり労力がかかっていますから。
2019年9月に、新着物件や各エリアのおすすめ物件を自動でメール配信する機能をリリースしました。
これは不動産会社のHPにある物件を読み取って、配信することができます。エリアや物件タイプ別のメールを自動でできあがり、自動配信可能です。これまで数時間かかっていたメルマガ作成の作業がボタン1つ、3分で完了します。
一定の作業プロセスを自動化することで時間を削減できれば、顧客ひとり1人に最適な提案ができたり、顧客分析をしたりする時間を増やして頂けます。
―データ分析やマーケティングをできなかった原因は、作業に追われていたからですか。
山本社長
はい、これまでは、実務でやらなければいけないことが多すぎたと思います。「KASIKA」のコンセプトは、「不動産売買実務に特化したRPA+データ分析」です。
ここが明確になることで事業も伸び始めましたね。
―改めて不動産業界に対して感じる課題感はありますか。
山本社長
ほとんどの売買仲介会社には、マーケティング担当者と呼ばれる人はいません。でも、新築販売の会社にはマーケティング担当者がいるんです。これは、仲介会社にはマーケティングに費やす時間がなかったことが理由だと考えています。
「KASIKA」は作業を自動化することで、「マーケティング担当者を生み出すサービス」です。町の不動産会社が「KASIKA」を使って、実は高度なマーケティング分析を行っているというのは嬉しいですね。これからも不動産業務を検証し、効果がありそうな業務をどんどん自動化していきたいと思っています。
―「KASIKA」を提案するなかで、不動産会社が導入のボトルネックになっている部分はどこでしょうか。
山本社長
「KASIKA」に限った話ではありませんが、不動産会社が持っている顧客情報や物件情報といったデータを登録する、データをアップロードする作業が1番負担だという話は多いですね。決まったフォーマットに転記することが非常に面倒でした。
―他のサービスにも多いネックポイントですね。便利なサービスであることは理解しているけれど、利用するまでのプロセスに労力が発生するから導入にまでいたらない。
山本社長
今は、それぞれの会社が持っている独自データをアップロードすれば、自動で取り込めるようになっています。