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北崎朋希氏(左)撮影=リビンマガジンBiz編集部

ー価格推定以外の分野についてもお話を聞かせてください。不動産テックはテクノロジーで新しい価値を生むことが期待されています。そういった意味ではスペースシェアへの期待も大きいと思います。

本間 スペースシェアもいろんな種類がありますね。オフィスもあるし、駐車場もあるし、倉庫もあるし、レストランもありますね。どこまでが不動産テックといえるかはさておき、数年でたくさんのサービスがでてきたという面では、一番、分かりやすく盛り上がりがありますね。

北崎 やはりAirbnb(エアビーアンドビー)の存在が大きかった、彼らが空けた風穴からレストランやオフィスなど、別の分野でもシェアリングサービスがたくさん出てきた。

ただ、そういった企業の中でAirbnbほどにスケールしたところはあまりありません。今はシェアリングサービスそのものではなく、シェアリングによって膨大な取引が行われ、新しいデータが生まれる点が注目されています。アメリカでも、シェアリングで集めたデータが何かと合わさった時に大きな価値を持つ、という意見が増えています。かけ算したときの魅力です。

不動産を貸すとか売却する時に、データを使うことで今まで気がつかなかった新しい価値が生まれるかもしれないということですね。例えば、家の前に人通りがあって、庭先をシェアリングサービスで貸し出すと、物販として使う人がいて、聞いてみると凄く物が売れることが分かった。そこは住宅地なんですが、もしかしたら商業ビルにした方が、価値が高まるかもしれない。そんな風に新しい評価が見えてくると、プラットフォームが意味を持ち出しますよね。その意味で、非常に面白い分野です。ただ、シェアをマッチングしているだけだと、それだけで終わってしまうんですけどね。

ー本サイトで取り上げてきたなかでは、VRなども非常に注目されました。

本間 VRと一口にまとめると難しいですけど、新築モデルルームを代替するという面では、とても大きな市場性がありますよね。モデルルームはとてもコストがかかるので、これをなくしたり、簡素にしたりできるのであればかなりニーズがあると思います。

ー 一般の不動産ビジネスに従事する人にとっては本書『不動産テック巨大産業の破壊者たち』は、ある意味ではとても怖いことが書いてあるとも読めます。「ITの連中に仕事が奪われる」と敵視する向きもあります。そういった方々にはどう読んでほしいでしょうか。

本間 タイトルに破壊者(ディスラプター)と入れたのには2つの意味があります。まずは既存のビジネスを「破壊」してしまう本来の意味です。もう1つは「創造的破壊」です、ゲームのルールを変えてしまうという意味ですね。どちらに拡がって行くのか分からない点で、今の不動産テックはとても興味深いですね。WeWorkについての項で「敵か味方か」という言い方をしていますけど、本当にまだ分かりません。

日本でもそうですが、既存の不動産ビジネスの面から見ても、WeWorkは高値でオフィスを借り上げてくれる存在ですからね。スペースシェアもそうですよね。今のところ既存ビジネスと敵対する関係ではありませんが、将来も果たしてそうか。

ー新しい儲け方に気がつくためのヒントを探す読み方もよいかもしれませんね。

本間 それに不動産テックが指すものはスタートアップ企業だけに限るとは思いません。既存の不動産会社の内部から改革を起こす人も現れるかもしれません。ブロックチェーンを使った不動産管理システムに挑んでいる積水ハウスなどはとても良い例です。

北崎 不動産テックという言葉が定着して、社内にいる改革志向を持った人が発言しやすくなるなら、とても素晴らしいですね。不動産ビジネス自体はとても古いものですし、ある程度の資産を持てば固定的にお金が入ってくる。外部からの圧力には滅多に晒されない。そういった恵まれている状況で、新しい活力が生まれないところに、いろいろな気づきを与えるという意味で読んでもらえれば、非常に良いと思いますね。

本間 この本を読んで、既存の不動産ビジネスの中にいた人、旧態依然としたものに不満を持っている人が、社内で新ビジネスを提案したり起業したりするきっかけになってくれると、とてもうれしいですね。

北崎 若い人は感度が高いので、斬新なアイデアを持っています。ただベテランになればなるほど、思考が固まってしまう。そういう人ほど、読んでみると新しい刺激があるかもしれません。

本間 これまでネットでやっていた連載が、今回書籍になったことで、いろんな人に届いて欲しいですね。そこは、やっぱり紙なんですよね(笑)

(了)

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