① 不動産投資とM&Aの背景
近年、不動産保有会社のM&Aが増えて来ています。その背景には、経営者の高齢化が進み、
後継者が不在のため事業承継にメドが立たないケース、建物の老朽化による競争力が低下し、管
理コストが増えているケースなどがあります。その解決方法として、不動産M&A(株式譲渡)
が注目を集めています。
② 不動産M&Aとは
不動産M&Aと不動産売却の違いについて解説していきます。
不動産M&Aとは、会社の所有者である株主が株式を買主に譲渡する取引形態で、株主は買主か
ら直接売却代金を受け取ります。
(図A)
不動産売却とは、不動産売却代金を会社が受け取り、会社からは配当か役員退職金でキャッシュ
を受け取ることになります。
(図B)
③ 不動産M&Aのメリットとデメリット
不動産売却の場合は、移転過程での税の負担が重くなるのに対して、不動産M&Aは株式譲渡益
課税だけで済むので、株主の手取り額は多くなります。
他の不動産M&Aのメリットは、不動産取得税と登録免許税がかからないことが挙げられます。
不動産取得税は、固定資産税評価額に、土地が3%、建物(住宅)が3%、建物(非住宅)が4%
を掛けた金額を納付しますし、登録免許税は、固定資産税評価額に、土地が1.5%、建物が2%
を掛けた金額を納付します。これがかからなことは、売買双方にメリットがあります。
逆に不動産M&Aのデメリットは、不動産売買と比較して、売却までに時間がかかる。買主による
デューデリジェンスが実施されるため、売主の事務負担は増えます。不動産売買と比較して、売却
先の選択肢は多くはないことが挙げられます。
④ 総合的な判断
不動産M&Aの流れは、「1、個別相談⇒2、アドバイザリー契約⇒3、企業評価、提案書の作成⇒
4、売買の候補先の選定⇒5、トップ面談⇒6、基本合意書の締結⇒7、デューデリジェンス⇒8、
株式譲渡売買契約書の締結・決済」という流れで進んでいきます。
不動産M&Aはアドバイザリーをしてくれるところがしっかりしている会社であれば、売主や買主の
負担はかなり軽減されるのも実情です。
不動産M&Aは、不動産売却と比較すると、メリットとデメリットがいろいろありますが、最近の表
面利回りでは、なかなか、インカムゲインが確保できないのが現状だと思います。
市場が活発にならなければ、景気観は良くならないと思いますので、不動産M&Aは不動産市場をよ
り活発にするためには、いい方法だと思います。